中国や韓国への謝罪は不毛だったのか
ヤマザキ氏はミシガン州のオークランド大学の講師で、夫が日系人だが、本人は欧州系の白人である。2002年に同州のウェイン州立大学で日本現代史研究の博士号を取得し、日本での研究や留学の期間も長い。
『第二次大戦への日本の謝罪』は日本が1965年の日韓国交正常化以来、国家レベルで表明してきた各種の謝罪の内容をすべてすくい上げ、紹介している。日本の「過去の戦争、侵略、植民地支配」に関する天皇、首相、閣僚らによる謝罪をリストアップして、英訳しているのだが、総括として次のように日本の特殊性を強調していた。
「主権国家が過去の自国の間違いや悪事をこれほどに認め、対外的に謝ることは国際的にみて、きわめて珍しい」。
「現代の国際社会では国家は原則として対外的には謝罪しないことが普通であり、大多数の国家は日本とは反対に、過去の過誤を正当化し、道義上の欠陥も認めない」。
ヤマザキ氏が紹介する「国際基準」に従えば、日本の場合、明らかに国家謝罪のしすぎ、ということになる。事実、同氏の書は日本のこれほどの謝罪努力も「失敗」と断じている。日本側にとってはなんとも痛い結論である。
だが客観的にみても、日本の謝罪は、少なくとも成功ではないことはあまりに明白であろう。これほど国家謝罪を重ねてみても、なお「日本は十分に謝罪していない」という非難の矢が数多くの方面から放たれているからだ。国家謝罪が目的とする中国や韓国との関係も完全には改善されていない。日本側の謝罪の所期の目的は達成されていないのだ。
ヤマザキ氏は次の点をも指摘する。
「謝罪が成功するには謝罪の受け手がそれを受け入れる用意があることが不可欠なのに、中国や韓国の側にはそもそも日本の謝罪を受け入れる意思がなく、歴史問題で日本と和解する意図もないといえる」。
だから日本の長年にわたる国家謝罪も不毛の努力だった、ということになってしまうようだ。
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