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統合医療の推進にむけて

出典: 東京ぺディア

  • 作成: 鈴木寛事務所
  • 作成日:2009年6月

目次

統合医療とは

 例えば、なんとなくだるくて医者に行ったとしましょう。すると、医者は一通り検査を行います。そして、「医学的に見て異常はない」場合は、「精神的なものだよ」とか「だるいと思うからだるいんだ」などの心無い言葉をかけられてしまうことがあります。
 この世界には、私たちが医学と呼んでいる西洋医学以外にも、さまざまな伝統的な治医療が存在しています。その中には、漢方などのように体系づけられているものも多くあります。そして、これらの治医療(代替医療と呼ばれます)はそれぞれが独自の人体の見方を持っているのです。だから、「あなたにとって」体に異常があるなら、西洋医学的に異常がない場合でも代替医療の視点で見れば異常が見つかり、それを治せる可能性があるのです。
統合医療とは、それらの代替医療を西洋医学と組み合わせ、お互いに補完しあって治療を行うという発想です。重要なのは、この「統合」は常に個々の患者さんのことを考える中で行われるということ。つまり、あなたにとって一番よい医療は何なのかを、代替医療も含めた選択肢の中から模索していくということなのです。

代替医療の利用の現状

 世界各国での代替医療の利用率はどのようになっているのでしょうか。

代替医療の利用率 ( WHO Policy Perspectives on Medicines. Traditional Medicine 2002 )

エチオピア  90%
インド  70%
カナダ  70%
フランス    49%
オーストラリア  48%
米国  42%
ベルギー  31%


 このように、先進国でも代替医療に対する関心が高いことが分かります。
 一方、日本ではどうでしょうか。日本において代替医療の利用状況の大規模な調査は未だ多くない現状ですが、厚生労働省がん研究助成金による研究班の報告(調査期間: 2001-2002 年)によれば、がんの医療現場における利用頻度に関しては、がん患者の 44.6% (1382/3100名)が、1種類以上の代替医療を利用していることが明らかとなりました。

統合医療の現状での問題点

1. 医師の代替医療についての知識が乏しい

 日本では、患者さんがたとえば漢方薬を使っていても、医師の気分を害してしまう心配からそのことを相談できないことがあります。また、たとえ相談されたとしても、西洋薬との飲み合わせが大丈夫かどうか、その漢方薬がその人に合っているかなどの判断ができる医師は非常に少ないのが現状です。
 西洋医学の医師が、代替医療を自ら施術する必要はありません。西洋医学と代替医療の両方の知識を持ち、個々の患者さんに応じて両者の適応を判断してアドバイスできるコンサルタントを育成することが急務であり、将来的には国家資格化も視野に入れて議論していく必要があります。

2. 統合医療に関する法的な整備がなされていない

 現行の医療保険システムのもとでは、保険が効く医療と効かない医療を同時に使用した場合、保険が効く医療の部分も保険適用外 ( 患者の全額負担 ) になってしまいます。 (これを、混合診療といいます。)
 現在、漢方などの一部の代替医療しか保険の適用がなされておらず、それら以外の代替医療と、通常の保険適用される治療を併用すると、混合診療とみなされ保険適用がなくなってしまいます。これでは、統合医療をすればするほど患者の負担が増すのは明らかです。 混合診療を解禁・緩和することをすすめると同時に、西洋医学以外の医療に対しても、ニーズや効果の高いものから段階的に保険適用をすすめていくことが必要です。

3. 代替医療の良否を判定できる基準が少ない

 代替医療へのニーズを反映してか、巷には気功院やカイロプラクティックなどの代替医療を行う施設が溢れています。しかし、患者さんがその施設の良否を施術前に判断するのはほぼ不可能です。残念なことに素人同然の施術者が治療と称して逆に患者さんの体に悪影響を与え、高い料金を巻き上げる詐欺同然の行為が多く行われています。  この状況を是正するために、施術者の技量によって良否を判定するための基準や、一般の方々も明確に判断できる統一的な資格制度を早急に整備することが必要です。

4. 統合医療を担う人材を育成する統一的なプログラムがない

 一般的に、代替医療の施術者は、長い時間をかけて技術を磨いて初めて一人前となります。これは西洋医学の医師も同じですが、決定的な違いは教育プログラムの有無です。
 西洋医学ではコア・カリキュラムという、必ず知っておくべき内容が国によって定められ、その内容を国家試験で問うことで医師の最低限の質を担保しています。
 一方、代替医療でもカイロプラクティックなどにおいて基本的な教育システムが確立されつつありますが、代替医療の中にはその教育が師匠から弟子に一子相伝で行われる分野もあり、また同じ代替医療でも流派によって施術法のバリエーションが大きいため、人材育成の効率が悪く統一性に乏しいのが現状です。もちろん一子相伝的な教育も必要ですが、それ以前に、施術者のレベルを担保するための統一的なプログラムを整備することが重要です。

5. 統合医療の研究予算が他の先進国に比べて非常に少ない

 米国では、" National Center for Complementary and Alternative Medicine (NCCAM) "というセンターを国家プロジェクトとして作り、ここから代替医療の科学的研究とトレーニングに巨額の出資をしています。現在では日本円にして 100 億円を超える予算が代替医療の研究に使われているのです。
 この額はなんと子宮がん研究費への予算を上回っており、米国での代替医療への期待の大きさが伺えます。([1][2])

 それに対して日本では、米国の代替医療研究の予算の 1/100 さえ研究費が投じられていないとも言われています。そもそも、日本で代替医療に対する国家的な調査が行われたのは米国が NCCAM を設立してから 10 年も後であり、大きく遅れをとっています。
 今後は各国が競って代替医療の開発をしていく時代になるでしょう。今こそ、日本の叡智を結集して、日本から世界に発信できる統合医療の開発を全力で行う時期ではないでしょうか。

民主党の政権政策Manifesto2009【年金・医療】

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