ハレ晴れユカイ
自分の作品の後書きや原作の萌える部分についてのみ語るブログです。
第二話 僕は一人ぼっち




ネルフ本部。総司令室。僕が使徒戦役を終えて3週間が過ぎていた。
僕は冬月さんと一緒に父さんの側で仕事を手伝っている。父さんはやっぱり僕を本気で司令にするつもりなのかな?
父さんの側に居ないときは帝王学とか組織を動かすトップとしての学問を学ばさせられている。

「碇君。次は日本政府の要人との会談があるわ。支度して」
「うん、分かったよ綾波」

綾波はまるで秘書のように僕の側についていてくれている。でもこの綾波は僕の知っている『2人目』の綾波レイじゃない。
ひも状の使徒を倒そうとして、零号機は自爆してしまったんだ。弐号機に乗っているカヲル君と、初号機に乗っている僕の前で。

『私はあなたを知らない。多分3人目だから』

自爆したはずの綾波が生きていたと聞いて僕は急いで綾波の元に向かった。綾波は頭に包帯を巻いているだけで大した怪我もしていなかったけど、
嬉しそうに話しかける僕に向かってそう言ったんだ。僕はその時綾波が何でそんなことを言ったのかわからなかった。
でもあの日……リツコさんに呼び出された僕は見てしまったんだ。大きな水槽の中に浮かぶ綾波の『代わり』を。
リツコさんは丁寧に今の綾波が3人目だと言うことも教えてくれた。代替わりした綾波は以前の記憶を失ってしまっていると言うことも。

「碇君。元気が無いけど、渚君の事を考えているの?」
「……それは、綾波の方じゃないかな」

そう言われて、綾波は少しだけ表情を硬くした。僕はほんの少しの変化を感じ取ることができた。
3人目の綾波は、カヲル君に魅かれていたと思う。僕と綾波の間に会った絆とは違う、同じ使徒だったから感じていた繋がり。
カヲル君は、僕にとっては最悪な事に、最後の使徒だったんだ。零号機の自爆で、第三新東京市の大部分が巨大な湖になってしまった。
そして、住む場所を失ったトウジ、ケンスケ、委員長は第三新東京市から離れて行った。その後に僕にできた大切な友だちだったのに。

『君は好意に値するよ。好きってことさ』

カヲル君には生きていて欲しかった。僕を好きだって言ってくれた。でも父さんやミサトさん、ネルフの大人たちは倒すべき敵だといって退かなかった。
僕はカヲル君をつかむ事は出来たけど、握りつぶすことは出来なかった。だけど初号機が……勝手に動いて手に力を込めたんだ。
握りつぶす感覚だけははっきりと覚えている。カヲル君は弐号機を自由に操ることができたから、初号機も動かしたのか、
それとも初号機が自分の意思で……コアの中に眠っていた母さんが動かしたのか。今となっては僕にはわからなかった。
使徒戦が終わった後、ゼーレから9体のエヴァ量産機が攻めて来た。
本当は戦略自衛隊も駆り出して攻めてくる予定だったみたいだけど、弐号機はパイロットが居なくて起動できないから、量産機だけで勝てると思ったみたい。
僕が量産機を迎え撃つために出撃すると、目の前で信じられない事が起こっていた。量産機が同士討ちをしていたんだ。
量産機を動かしていたダミープラグはカヲル君のデータが元になっていたみたい。
自傷願望があったカヲル君のデータが引き起こしたとリツコさんは言っていたけど、僕はそうは思わなかった。
カヲル君は僕たちに未来への勝利をくれたんだと思う。カヲル君は僕たちに未来を生き続けろと言ってくれたんだ。

量産機が同士討ちによって全滅した後、僕は初号機から降ろされて、代わりに綾波が乗り込んだ。
綾波は前の僕みたいに高シンクロ状態になってエヴァの中で溶けてしまったけど、サルベージによってまた戻ってくることができたんだ。
綾波が戻って来たとき、もう体は完全な人間に再構成されていた。肌も色素が足りないアルビノじゃなくて日本人と変わらない肌色をしている。目も赤い目じゃなくなっていた。
初号機のコアからサルベージされたのは綾波一人じゃなかったんだ。母さん。小さいころ僕の側から勝手に居なくなった人。
人類が生きていた証を残すとか宇宙の神秘を解き明かすとか僕にはさっぱりわからない高尚な目的を持っていたようだけど、身勝手な人には変わりは無かった。

『僕は立派な意志を貫く科学者よりも、子供の僕の事を考えてくれる普通の母さんに居て欲しかった』

僕が母さんに向かって話した言葉はそれだけだ。母さんはあれから僕にとって付けたように優しく接しようとしたり、言い訳をしたりしていたけど、
僕が無視を続けると、そのうち自分の好きな研究にのめり込むようになった。偽りの家族愛なんて僕は要らない。
父さんはなんであんな母さんと一緒に住んでいるのかわからない。僕は母さんとの同居だけは拒否した。
そしてミサトさんとの同居を続けたんだ。普通は次期司令が元作戦部長と暮らすことはないんだけど、それだけは許してくれた。
でも、困ったことに父さんは綾波と同居することを押し付けて来た。僕はそれだけは断りきることができなかった。

『頼む、シンジ。レイと一緒になってくれ。それがレイの望みなのだ』

父さんはそう言って頭を下げて来た。でも父さんは勘違いをしている。前の2人目の綾波は僕に好意を持っていた……かどうかはわからないけど、
3人目の綾波はカヲル君の事が好きなんだ。そんな綾波と一緒に暮らして……僕はどうすればいいんだ。
以前アスカの居た部屋は綾波が使っている。僕は寂しさを覚えながら今日も眠りについた。

僕は不思議な夢を見た。



「ほら、まだ汚れが落ちてない!こんないい加減な仕事で許されるとおもってるの!?」

「ご、ごめんなさい」

清掃員の服を着ているアスカがネルフの制服を着た女性職員にほおをはたかれた。

「お前なんかエヴァに乗れなければただのガキなんだよ!」

別の男性職員に口汚く罵られたアスカはついに泣きだしてしまう。

「泣けば許してもらえると思ってるのか、このただ飯喰らい!」

さらに別の男性職員がアスカのお腹を蹴り飛ばす。アスカはその衝撃で口からおう吐してしまった。

「汚いわね。余計なゴミを増やしちゃって」

吐しゃ物まみれになったアスカを取り囲む野次馬が笑い声をあげる。アスカは目をこすって泣いていた。

「誰かアタシを助けてよ……シンジィーーー!」



僕はアスカの叫び声で目を覚ました。今のは夢にしては凄く現実的に感じられた。僕は部屋から飛び出ると、眠っているミサトさんを叩き起こした。

「何よーシンちゃん、こんな夜中に……」
「アスカは、アスカはどうなったんですか!?」
「アスカはネルフのドイツ支部にいるんでしょう、多分」
「いじめにあっていたりしませんか!?」
「シンちゃん、落ち着いて。明日調べてあげるから」

僕は自分の部屋に戻った。気が晴れなかったけど、その後はいつの間にか眠り込んでいたみたいで、綾波に起こされた。
僕はいつものようにネルフに向かって、父さんの側で仕事を手伝う。いつもと変わりない一日が始まった。
ちょっと時間があったので、僕はミサトさんをこっそりと屋上へ呼び出した。何を心配したのか、リツコさんも一緒について来た。
ミサトさんとリツコさんは気まずそうに顔を見合わせると、重い口を開いた。

「アスカはドイツ支部に行ってから、ろくな仕事も与えられずに清掃員にさせられていたわ……」
「ネルフ職員のほとんどがアスカのいじめに関与していたそうよ」
「そして、ゼーレの事が公表されて、ドイツ支部が混乱に陥った時、アスカはロストしたわ」
「そんな!今はどこにいるかわからないの!?ミサトさん、アスカを探してよ!アスカを助けてよ!」
「それは無理ね……ドイツはアスカの事を闇に葬ろうとしている」
「どこかで野垂れ死んでくれた方が都合が良いと思っているのよ」



そんな……アスカが……死ぬなんて……



「アスカァァァァー!」

僕はゆっくりと後ろに倒れて行って、階段を滑り落ちていくのを感じて、意識を失った。




アスカがドイツに強制送還されてから2年が過ぎていた。
僕は高校1年生として学校に通っていた。
僕は階段から落ちてから5ヵ月ほど入院していたようだった。

僕は以前と変わらない生活を送っていた。でもすっぽりと抜け落ちている記憶があった。
アスカの事をすっかりと忘れてしまっていた。



「シンジ君、昨日もレイと一緒に夫婦同伴だって冷やかされたんだって?」

僕はミサトさんと綾波の分の食事を作ると、冷やかすように話しかけて来た。

「からかわないでくださいよ。僕と綾波は単なる同居人ですから」
「そうよ」

またその話か……どうしてミサトさんは僕と綾波をくっつけたがるんだろう。綾波が僕に異性としての好意を持っていない事はわかるのに。

「本当に、付き合う気は無いの?」
「しつこいですよ、ミサトさん」
「あはは……司令に何ていえばいいのか」
「何で父さんが関係するんですか?」
「今の聞こえた!?シンちゃん今のは聞かなかったことにして!」

そう言うとミサトさんは僕の追及を逃れるようにあわてて家をでていった。ミサトさんが出て行った後、僕と綾波はいつものように朝食をとって学校に行った。
学校につくと、僕は授業の予習を始めた。学校では友だちは出来なかった。美人で通っている綾波と話す僕が気に入らないと言う人も居たし、
僕が司令の息子だという情報もいつの間にか漏れていて、七光りという不名誉なあだ名もついていた。僕は次期司令として恥ずかしくない成績を残すために、
学校のテストなども頑張らないといけなかった。だから僕自身にも友だちを作ろうとする暇が無かった。何のためにこんなに勉強しているのか、むなしく思えた。



エヴァンゲリオンに乗って戦っていたころが懐かしいな……。

綾波と一緒に使徒と戦って、カヲル君が最後の使徒だったり。

辛いことや楽しい事も色々あった……



『アンタがサードチルドレン?ふーん、さえないわね』



『キス……した事無いんでしょ』
 


『内罰的なところに腹が立つのよ!』



『バカ……無理しちゃって』



紅茶色の長い髪をした女の子が僕に話しかけて来る。

……君は誰?



僕がいつもの一日を終えて家に帰ると、ミサトさんが待っていた。

「あら、シンちゃん。今日はレイと一緒じゃないの?」
「なんかリツコさんが、綾波の体の事で検査があるって」
「じゃあ久しぶりにお姉さんと飲みに行きましょう」
「え、僕まだ未成年ですよ?」

ミサトさんは僕の返事なんて気にしないで強引に腕を引っ張って歩きだしてしまった。

ミサトさんに連れてこられたのは、第三新東京市の一角にある喫茶店だった。てっきり居酒屋やバーにでも行くと思っていた僕にとっては意外だった。

「リツコが上手くやってくれたみたいね。シンジ君、ここには盗聴器とか仕掛けていないから安心して」

この喫茶店は加持さんがスパイ活動をしていた時にも連絡場所として使っていた特別なお店のようだ。
父さんにどうしても聞かれたくない話をするために僕をここに呼んだらしい。どんな話なんだろう。
ミサトさんが取り出したのはGショックの腕時計だった。確かラバーズコレクションだったかな。その男物の時計みたいだ。ってことは女物の時計の方は?

「ごめんなさい、ミサトさんの事はお姉さんとしかみれないんです!」

僕はミサトさんに手を合わせて謝っていた。

「シンちゃん、違うのよ!これを見て」

ミサトさんは僕の前に便箋のようなものを取り出した。そこには見覚えがある下手な日本語の文字が踊っていた。




シンジ、誕生日おめでとう。

もう住む世界が違うからシンジとは会えないけど、

アンタのこと嫌いじゃなかったよ。元気でね、さようなら。

                            Asuka



アスカ……?

「ご注文はお決まりですか?」
「じゃあ、レインボーマウンテンを2つ……」

レインボー……

アスカ……

オーバー・ザ・レインボー……

惣流・アスカ・ラングレー!

「うう、頭が痛い」

僕は強烈な頭痛に襲われて、倒れこんでしまった。

「ちょっと、シンジ君、大丈夫!?

……リツコ、シンジ君が!」



紅茶色の髪ときれいな青い瞳を持った女の子。

とっても唯我独尊で暴力的に見えるけど……

でも、実はとても甘えん坊でかわいいんだ……。

僕が後ろ向きで内罰的になって暗くなっていると、明るく照らしてくれる太陽のような……。

だから僕も月のようにきれいに輝くようになったんだ、側に居たい……。



守ってあげたい、アスカ……。



僕が気がつくとそこはネルフのリツコさんの研究室のベッドだった。



僕はアスカにもう一度会いたい……。その気持ちがあふれ出しそうだ。

アスカと一緒に居たから僕はどんな困難も乗り越えてこれたんだ。

僕は次期司令の職なんて要らない。ネルフの仕事を失うなんて怖くないさ。

あの時、アスカと別れることになるなんて、僕は知らないで一人で浮かれていたんだ。

アスカはそんな僕を見て何て思っていたんだろうね。

もう一度アスカに会ったら、今度は気持ちが通じるかな。

アスカの声を聞きたいな……。



アスカ……。

僕はアスカに会いに行くよ……。



僕が目を覚ましたことにミサトさんとリツコさんが気がついたようだ。

「ミサトさん……あの……アスカのことなんですけど」
「みなまで言うな。あたしとリツコは、シンジ君の味方よ」
「早速作戦を考えないとね」

ミサトさんとリツコさんは楽しそうな笑顔を浮かべた。





テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

第一話 アタシは用済み
アタシは惣流・アスカ・ラングレー。エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット、だった。さっきまでは。



辞令

フィフスチルドレン 渚カヲルを弐号機専属パイロットに任命する。

セカンドチルドレン 惣流・アスカ・ラングレーを弐号機専属パイロットから解任する。



さっき、ネルフ本部で聞いた辞令だ。これで、アタシの存在価値が無くなった。

「アスカ、今まで御苦労さま」

リツコがそう言ってアタシの頭から赤いインターフェイス・ヘッドセットを取り外す。長い間一緒に居た古くからの相棒。
アタシはリツコがそれを回収するのを見て、本当にエヴァに乗れなくなったんだと自覚した。
アタシは先の使徒戦で、ファーストがひも状の使徒に襲われた時、出撃したんだけど全くエヴァが動かせなくなってしまっていた。
使徒はシンジが出撃する前にファーストが一人で倒したみたい。アタシの横で涼しい顔をして立っている。
悔しいという気持ちはもうすでに起こらなかった。使徒戦の時にエントリープラグで漏らした呟きと同じく何もかもどうでもよかった。

「アスカ。今日こそは家に戻りなさい」
「……わかったわ」

アタシは今までミサトの家には帰らずにヒカリの家に入り浸っていた。シンジとミサトと一緒に居るだけでイラついて来るからだ。

「アスカ。帰るなら一緒に行こうか」
「……好きにすれば」

バカシンジのやつは嬉しそうにしている。本当のバカね。アタシが何のために帰るかわかってるの!?
帰り道でもシンジはしつこく話しかけて来た。アタシは全部聞き流してやったけど、それでも話しかけて来る。うざったい。
コンフォート17の『葛城』のネームプレートがかかった一室。少し前までのアタシの居場所。でももうここには居られない。
アタシは自分の部屋のドアにかけられた『許可なく立ち入りを禁ず。勝手に入ったら殺すわよ!』と書かれたプレートを外す。
そして部屋の中で荷物の整理をはじめたら、シンジがノックをして部屋に入って来た。あのバカ、アタシがプレートを外した意味を勘違いしている。

「アスカ、ヘッドセットが無くて頭が寂しくなったんじゃないかな。だから、コレ」

シンジのやつは勝手に顔を赤くして、きれいにラッピングされた小箱を置いて部屋を出て行った。アタシはその小箱に目もくれずに荷物の整理を始めた。
でも、正直アタシはどうでもよかった。だから服も最低限の物以外全て置いて行く。ユニゾンの時の服とかレモン色のワンピとか第壱中学校の制服とか関係なく全て置いて行く。
アタシは無意識のうちにシンジのくれた小箱だけ持って行く手荷物を入れるバッグの中に放り込んでいた。

「ええっ!?アスカがドイツに帰るってどういうことですか?」
「パイロットじゃなくなったから、本部に居る理由は無いのよ。ドイツ支部から帰還命令が出てるしね」
「そんな!アスカはそれでいいの?」
「シンジ。せいぜいファーストと仲良くやりなさいよ」

アタシはそう言って夕食の席を立った。シンジはアタシのためにハンバーグを作ったみたいだけど、それをほとんど口にしないで部屋に閉じこもった。
それからシンジのやつがどうしたかは知らない。アタシは翌日、誰の見送りも無いまま日本を飛び立った。フィフスチルドレンがどんなやつなんて知りもしない。
顔を合わせる間もなくアタシは日本から叩きだされたのだから。



「よく戻って来たな、我がネルフドイツ支部に。このドイツの恥じさらしが」

ネルフドイツ支部に戻って来たアタシは出発する時とは対照的に、粗略な扱いを受けた。迎えに来た職員も下っ端の下っ端が一人だけ。
後はアタシが逃げないように見張る人間だけだ。アタシはガードがつくほど重要な人物でもなくなっているみたいだ。ただ秘密をもらさないように見張られているだけ。
ドイツ支部ではアタシは失格人間、ドイツの恥さらしなどと呼ばれるようになっていた。日本に行ったフィフス・チルドレンは高いシンクロ率を誇って使徒戦で目覚ましい活躍をしてるらしい。
アタシとは違って英雄扱いだ。数ヵ月前までアタシがその位置に居たのに。
ネルフドイツ支部でアタシを待っていた仕事は、清掃員だった。アタシにはわざと出世できるような仕事はさせないらしい。組織ぐるみでアタシに嫌がらせをしていた。

「元パイロットのおチビちゃんよ。会議室の角にほこりが溜っていたぞ、きちんと掃除してるのかい」
「トイレ掃除早く頼むわよ。ドイツの恥さらしさん」

アタシは今までした事のない掃除を一生懸命やったけど、散々文句や嫌味を言われた。時には懲罰と言って殴られることもあった。
こんな生活を送るなら日本に居た時の方がマシだった。

「誰か、アタシを守ってよ……ママ、加持さん、ミサト、……シンジ」

アタシがこんなどん底の生活を送るようになってから少しして、ゼーレが企んでいた人類補完計画の全貌が日本のネルフ本部によって明らかにされた。
シンジはサードインパクトを未然に防いだチルドレンとして、ファーストとフィフスチルドレンと一緒にネルフの主要人物になるみたい。シンジは次期司令になるんじゃないかって噂されてる。
ネルフドイツ支部はゼーレと繋がっていたことがバレて大混乱を起こしていた。だからアタシに対する監視の目も緩んでいた。
アタシは監視の目を振り切って、列車に乗って遠くに逃げようとした。手荷物のバッグだけ持って連れ戻されないように出来るだけ遠くへ。
アタシはあまりお金を持っていなかったから、列車で逃げるのも限界があった。アタシは行ける範囲でギリギリの駅で列車を降りた。
駅の名前は『ヴィルヘルムスハーフェン』。偶然にも弐号機と一緒にアタシが日本に向けて出発した港のある場所だった。
アタシは徒歩で港の波止場へたどり着いた。遠くで船の汽笛の音が聞こえる。

「海に落ちて溺れれば確実に死ねるかしら」

アタシはそう独り言をつぶやいて海に向かって歩いて行った。でも疲労と空腹で足がなかなか進まない。それでも前に進もうとすると後ろから腕をつかまれた。

「お嬢ちゃん!お前さん何をやってるんだい!」
「アタシには何も価値が無いの、死なせてよ!」
「何をバカな事いってんだい!」

アタシは腕をつかんだおばさんに平手打ちをされた。

「若い子が死ぬなんて、バチが当たるよ!」

その時アタシのお腹の虫が盛大な音を立てた。

「何だ、お前さんお腹がすいているのかい。うちに来て御飯を食べれば暗い考えなんてぶっ飛ぶよ」

アタシはそのままおばさんに手を引かれて歩き出した。付いた場所は小さなレストランだった。
海が見える景色が良い場所に立てられたそのレストランには『海猫亭』とドイツ語で書かれた看板が付けられている。

「北条さん、今日は子連れかい?」

屈強な日本人の漁師に見える男の人がおばさんに声を掛けて来た。
アタシはこのおばさんをドイツ人と思い込んでいたので、日本語で話しかけられているのを見て驚いた。

「ああ、ちょっとお腹をすかせているみたいだからね」
「ところどころにあざみたいなのがあるじゃないか……いったいどうしたんだい?」
「その……今まで働いていた場所で色々あって……」

日本語で話しかけられた懐かしさからかアタシはつい日本語で答えてしまっていた。

「これは驚いた。お嬢ちゃん、日本語が達者だね」
「あらまあ、日本に住んでいたのかい?」
「アタシ、日本人の血が混じったクォーターだから。アスカっていいます」
「私も日系ドイツ人なんだよ。夫も日本人だったから日本語がわかるのさ。私はアン・北条っていうのさ」
「俺はさすらいのツナ捕り名人、北島サブって言うんだ。よろしくな」

何か漁師さんの名前は嘘っぽく感じるけど、その巨体と豪快な態度に押されて指摘することは出来なかった。
私はサブさんと別れて、食堂に併設された住居の中に案内された。

「ほら、ここが私の家だよ」
「し、失礼します」
「私一人しか住んでないんだ、遠慮することは無いよ」

アタシの服はよれよれだったから、アンおばさんに着替えるように言われた。
おばさんの娘さんの服に着替えていると、アタシの体に出来た傷を見ておばさんが怒ったような声を出した。

「こんなに白くてきれいな肌なのにアザを作らされちゃって……まったくひどいやつがいるもんだね」

おばさんはアタシが着替えると、市場で買ってきた食材を持ってそそくさと調理場に向かっていった。そういえば、食堂を経営しているんだっけ。
調理場の方からおばさんが料理をする音が聞こえる。リズムの良い包丁の音が聞こえる所を見ると、何かまな板で切っているのだろう。

「さあ、お腹がすいているだろう。たっぷりとお食べ」

おばさんが持って来たのは和風の定食だった。純粋に日本の物じゃなくてアレンジが加えてあるけど、
アタシに日本での食事を思い出させるのは十分だった。アタシが口を付けると、懐かしい味が広がった。

アタシは自然と笑いだしていた。

アタシはシンジと楽しい家族ごっこをしていた日々を思い出した。


シンジは今ごろどうしているんだろう……。

きっとネルフの次期司令として期待されているんだろうけど……。

ファーストのやつがいるから大丈夫よね……。

アタシにはネルフに居場所は無いんだ……。

エヴァンゲリオン弐号機のパイロットを更迭させられたんだから……。



アタシはシンジの事を思い出すと涙を流していた。

ファーストのやつと楽しそうに話しているシンジを思い出すと胸がズキズキした。

「おやおや、涙を流すほどおいしかったのかい?」
「いえ、ちょっと昔の事を思い出しちゃって」
「冗談さ。……それより、もう死んでしまうなんて考えは捨てられたのかい?」
「……まだわかりません」
「んじゃ、とりあえずウチの食堂で住み込みで働くかい?」
「アタシ、料理も掃除もできない、役立たずな価値の無い人間なんです」

アタシは突然の提案に慌てて自分を卑下して答えた。

「私ゃずっと一人でこの食堂をやっているんだけど、お前さんみたいなかわいい子に看板娘になって欲しいんだ。
仕事なんて少しずつ覚えればいい。手伝ってくれないかい?」
「え、でも……」

アタシが目を伏せて黙り込んでしまうと、アンおばさんは意地悪そうな声で言いだした。

「働かざるもの、食うべからずってことわざが日本にはあるわよね」
「うぐ、わ、わかったわよ」
「そうそう、これからは家族同然なんだから遠慮も敬語も無しでいくよ」
「じゃあ失礼ついでにアタシからも一つ、いい?」
「なんだい?」
「アンおばさまのこと、ママって呼んでいい?」
「かまわないさ。私も10年ぶりに娘を抱けて嬉しいよ」

アンおばさんはアタシをしっかりと抱きしめてくれた。アタシは部屋の隅に家族の写真が飾られていたのを見つけた。
旦那さんと娘さんみたいだ。旦那さんは真面目な日本人って感じ。娘さんは瞳の色や髪の明るさは違うけど、アタシと同じ紅茶色の髪の毛だった。
二人とも10年前の海難事故で死んでしまったみたい。アンおばさんだけ事故で生き残ってしまったそうだ。

「アタシ、娘さんの代わりになれる?」
「アスカちゃんはアスカちゃんじゃないか!何言ってんだい」

アンおばさんは豪快に笑い飛ばした。

「でも、本当の娘にしたいっていうのは嘘じゃないさ。この店もアスカちゃんに後を継いでもらう気でいるし」

アタシは考えた。ネルフに戻ってもまたいじめられるだけ。全てを捨ててここで暮らそうと。そうすればアタシが好きになったボーイフレンドの事も忘れられる……。

「うん、よろしくお願い、ママ」
「アスカちゃん、ちょっと頭が寂しいね……何かアクセサリーでも付けたら似合うと思うんだけど……」

アタシはそう言われて、手荷物の中にある包装紙に包まれたままの小箱の事を思い出した。急いでバッグの中から取り出す。

『アスカ、ヘッドセットが無くて頭が寂しくなったんじゃないかな。だから、コレ』

確かシンジはそんなことを言っていた。すでに箱はボロボロになっていたけど、震える手で包装紙をむしり取り箱を開ける。
中には真っ赤なリボンが入っていた。シンジがアタシのために勇気を出して買ってきて、あの日やっと渡してくれたんだろう。

「シンジ……」

アタシは赤いリボンを握りしめて涙を流していた。もっと早くシンジに対して優しくしてあげればよかった。
シンジのまごころがアタシに届いたのは遅すぎたのだ。

「おやおや、そんなに強く握ったらリボンがしわになってしまうんじゃないか」

アンおばさんはアタシからリボンを受け取ると、頭に付けてくれた。

「ほら、アスカちゃんがますますかわいくなった」

アタシは鏡に映った自分の姿を見ながら、頭に付けた赤いリボンを優しくそっと撫でていた。




アタシはその日惣流・アスカ・ラングレーの名前を捨てて、アスカ・北条となった。

うん、アタシはこれから元気にやっていける。完全に忘れきるまでは時間がかかるけど、さようなら、シンジ。

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

更迭のガールフレンド 〜アスカを追いかけて9000キロ〜 (修正版) 目次
<あらすじ>
シンクロ率の落ちたアスカは、弐号機パイロットの地位から更迭され、ドイツへと強制送還される。
ドイツ支部でアスカを待っていたのは、組織ぐるみのいじめだった。
アスカの事が気になったシンジは、アスカを追ってネルフ本部を飛び出し、ドイツへと向かう。
※以前にオマージュ作品として真似していた部分を修正してオリジナル作品としています。

第一話 アタシは用済み

第二話 僕は一人ぼっち

第三話 シンジ、死す

第四話 アスカとハンスの出会い

第五話 シンジへの嫉妬

特別編 ゲンドウ、襲来

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

Hole No.2 アスカの誤算(さくら温泉G.C 1〜6)
長野さくら温泉カントリーゴルフクラブ。ティーの位置はバックティ。
それがアスカとレイの対戦の初舞台だった。
本来、ゴルフは三人一組のグループで回るはずなのだが、
選手の一人が直前になって欠場したため、アスカとレイの二人だけで各ホールを回ることになった。
レイは有名な高校生ゴルファーとして注目を浴びていたため、観客や取材の数も多い。
アスカは別に人に注目されること自体は物怖じしなかった。
しかし、アスカのアイドル並みの容姿はレイとは別の意味で注目を集めていた。
シャッター音が鳴らされる観客の写メールにアスカとシンジはうんざりしていた。
アスカが初めてのティーショットを打とうとした時も『お静かに』との看板を掲げられているにも関わらず、写メールは鳴りやまなかった。

「ちょっと!集中したいんだから、写メールは止めてよ!」

アスカはついにキレて、観客の群れに向かって怒鳴ってしまった。しかし観客たちは動じない。

「怒った顔も可愛いね〜」
「スイングの時、パンツ見せてくれるんだろう」
「あなたみたいな素人がレイ様に勝てるわけないわ」

不埒な観客のヤジに、アスカはますます怒りを募らせ、ゴルフクラブを振り回しだした。

「アンタたち、ぶっ飛ばしてやる!」

その剣幕に黙り込む観客がほとんどだったが、ごく一部の観客は言い返そうとした。
そんな時対戦相手のレイが口を開いた。

「試合中の写メールはマナー違反よ。……後、汚いヤジも止めてくれる?私は正々堂々と勝ちたいの」

アスカは動きを止めてレイを見て目を丸くしている。今まであいさつしても、握手しようとしてもしゃべらなかったレイである。
アスカは意外とレイっていい子なのかもと評価を改めた。

「ありがとう。アスカを助けてくれて」

シンジが笑顔でお礼を言うと、レイは赤くなったようにみえた。

「別に、いいのよ……」

アスカはそんなレイの様子を敏感に感じ取り、敵と再認定した。
いつまでも打とうとしないアスカに苛立ったのか、レイのキャディであるカヲルが髪の毛をかきあげながらアスカに声を掛けた。

「オナーの君が打たないと試合が始まらないよ。さっさと打ってくれないか」
「わかったわよっ」
「好意に値するよ」

カヲルはアスカに向かって自慢の笑顔を見せたが、アスカは何の反応も無く平然とスイングの構えに入った。
シンジはそんなアスカをみてほっと胸をなでおろす。カヲルは拳を握りしめて少し震えていた。
レイはカヲルに軽蔑のまなざしを向けていた。
アスカは1番ウッドを構えて機械のように正確にインパクトを決めてボールに当てた。試合前のイライラした気持ちは落ち着いたようだ。

「ナイス・ショット!」

シンジの掛け声の直後、観客たちから拍手と歓声が上がり、アスカの第1打のボールはピンまで残り130ヤードの好位置のフェアウェイに着地した。
次はレイの番。レイの第一打はアスカより距離は伸びなかったが、フェアウェイの真ん中。いい勝負だ。
第2打は距離が遠いレイから。第1ホールはパー4なのでここでグリーンに乗せればバーディを狙える。
レイの放った第2打はカップから93センチという近い場所で止まった。

「レイ様、素敵です〜」
「ナイス・ニアピン!」

観客から盛大な拍手と歓声が上げる。
アスカも第2打を負けじと8番アイアンをスイングさせる。完璧なインパクト、一点のズレもない。アスカは手ごたえを感じていた。
グリーンに着地したボールはカップに向かって転がっていく。

「入れ!」

シンジは声を出して祈っていた。試合を観客にまぎれて見ているゲンドウも同じ気持ちだった。
しかし、グリーンを転がるボールは勢いを失い、カップまで30センチと言うところで止まってしまった。

「おおっ!」

思わぬアスカのスーパーショットに観客は沸き上がった。だが残念ながらアスカのプレイに対してヤジを飛ばす者も居た。

「おいおい、ゴルフは紳士のスポーツなんだよ?ここは野球場やサッカー場じゃない。そんな行為は好意に値しないよ」

カヲルのくだらないシャレに凍りついたのかどうかはわからないが、レイとアスカは共にバーディで1番ホールを終えた。



次いで2番ホール。パー3の全長170ヤードのこのコースは、よく飛ぶウッドでは無くアイアンでも十分届く距離だった。
オナーのアスカがゴルフバッグからアイアンを取り出すと、シンジは慌ててアスカに1番ウッドを渡そうとした。

「アンタ、バカァ!?何を1番ウッドを渡そうとしているのよ。この距離なら6番アイアンでも届くじゃない」
「アスカ、ここは1番ウッドじゃないとダメなんだ!」

アスカはシンジを無視してティーショットの構えに入った。アスカはこのコースの事を軽く見ていた。
コーチのゲンドウが作成した資料によると、このコースは難易度10段階評価のうち、下から2番目だ。
1番ホールであっさりとバーディを取ったのがさらにアスカの慢心を強めていた。
アスカの第1打のボールは……アイアンで高い軌道を描き、前方にあった桜の木に引っ掛かり、池に落ちてしまった。

「何で、アタシのボールが木に引っ掛かるわけぇ!?憎たらしい桜の木ね!」
「だから、軌道の低い1番ウッドで木の下を潜らせるべきだったんだよ。3番ウッドでも引っ掛かった事あるし」

シンジは元ゴルファーとしてこのコースの恐ろしさを経験していたので、アスカに必死に1番ウッドを勧めていたのだ。
しかし、アスカの次にティーショットに立ったレイもアイアンを構えていた。不思議に思ったアスカが見守る中、レイが第1打を放った。
レイの放ったボールは左に大きく曲がって行き、右正面にせり出した桜の木を上手くすり抜けて、グリーンにワンオンした。

「きれいなドローボールだ。……彼女の武器だね」

シンジは感心したようにレイの事を眺めていた。アスカはそれが面白くなかったが、もっと面白くない事態がアスカを待っていた。
アスカのボールは池に落ちてしまった。よって、ウォーターハザードと言うことになり、
プラス1打のペナルティを課されて池に落ちた地点の側の岸から打ちなおさなければならない。
アスカの実質的な2打目は3打目ということになってしまう。アスカは3打目を上手くピンに寄せたが、カップに入れたのは4打目。
パーより1打多いボギー。レイは2打目をカップに沈めてパーより1打少ないバーディ。2番ホールで2打差がついてしまった。



続いて3番ホール。前のホールで一番良い成績だったレイがオナーとなる。
パー4のこのホールでは、シンジはフェアウェイの真ん中にある背の高い木が気になった。風も打つ方向から見て左寄りに流れている。
レイの1打目は華麗なドローボールで背の高い木の左をすり抜けて、フェアウェイの真ん中に着地した。

「アスカ、風に流されないようにもっと右寄りに角度をつけて狙ったほうがいいよ」
「アタシに考えがあるから、大丈夫」

アスカは不安そうなシンジを見送って、ティーショットの1打目を放った。アスカの打球は少しだけ右に曲がっている。
しかし、素人が見てもレイに比べて曲がり幅は少ない。風に流されたボールはよりによって木の真正面と衝突してしまった。

「コツーンだってさ、ガハハハハハ!」
「面白いものを見させてもらった」

観客から爆笑と大きな拍手が上がる。シンジは少し泣きそうな表情になって体を震わせるアスカの手をしっかりと握って安心させようとしながら歩き出した。
アスカの受難はまだ続いた。木が真正面にあるために、直接ピンを狙えないのである。このコースでのアスカのバーディは絶望的になった。
このホールでもレイはバーディを決めて、アスカとの点差は3打まで広がった。
続く4番ホールではお互いにパー。辛くも点差は広がらなかった。



その次は5番ホール。初めてのパー5だ。距離は長いが2打でグリーンに乗せ、3打目で入れればイーグルとなる。
オナーのレイはウッドを構えたが、1打目の飛距離は200ヤードを少し超えたところ。
アスカは2打でグリーンに乗せるため、出来るだけ飛ばそうと焦っていた。アスカの第1打は240ヤード近くまで飛んだ。
アスカはこのコースでの勝利を確信していた。レイは2打ではグリーンに乗せられないだろう。こちらは十分に狙える。
そんなアスカの様子を見てゲンドウは深いため息をついた。何のためにシンジがキャディをしているのだ。
全然アドバイスがされていないではないか。ゲンドウは二人が戻ったらたっぷり小言を言うことに決めた。
レイの2打目。打ちおろしのグリーンだったので、レイの打球はグングンと伸びていき、なんと2打でグリーンに乗ってしまった。
驚いたのはアスカだ。これでは差をつけられない。
アスカは2打目を打とうとボールのある場所に向かい、グリーンの方向を見て驚いた。
背の高い木が何本もアスカの前にそびえ立っていたのだ。

「もしかして、レイの打った地点がこのコースの正しいルートなの?」
「……残念だけど、木が邪魔で2打でオンは無理だね。手堅く回り道をしてバーディを取ろう」
「嫌よ!アタシはイーグルがいいの!」
「何を子供みたいな事を言っているんだよ!」

怒るシンジを無視して、アスカはピンを狙ってボールを打った。
当然の結果、木はボールに引っ掛かり、OBゾーンには落ちなかったものの、深いラフに落ちてしまった。
続く3打目も、深いラフからのショットをピンの側に寄せることは難しく、結局パーで終わる。
対するレイはイーグルパットは外したものの、きっちりバーディを決めてアスカとの点差は4打まで広がった。



次の6番ホール。レイは3番ウッドを構えて1打目を放ち、フェアウェイの真ん中に乗せる。
アスカは次こそは負けられないと、1番ウッドで思いっきりかっとばす。
しかし、アスカの打ったボールは軌道が低すぎて、木に引っ掛かってしまった。
さらに最悪な事に、そのせいでバンカーに落ちてしまう。ここからバーディを狙うのはかなり難しくなった。

「また木なの!木が憎たらしい!あの木めー、ちょんぎってやりたいわ!」

地団駄を踏んで悔しがるアスカに後ろからレイが冷たい声を掛ける。

「キーキーうるさいわね。赤毛猿」
「なんですってー!」

赤毛猿とはアスカにとって最大限の侮辱の言葉だった。レイに殴りかかろうとするアスカをシンジが必死に押し止める。
レイは常に冷静な選手として知られていた。レイが人の悪口を言うことなど珍しい事だった。
その原因はレイ自身もはっきりとはわからなかったが、おおよその見当はついている。それはシンジだ。
アスカに優しく微笑むシンジを見ると胸がモヤモヤする。同じキャディのカヲルには感じなかった事だ。
結局このホールもレイがバーディ、アスカはパーで点差は5打まで広がった。
コース移動の時、耐えきれなくなったアスカはシンジに寄りかかった。

「ねえシンジ。アタシはこのまま負けちゃうのかな?」
「アスカ、頑張ろうよ」
「だって、ゲンドウおじさまは世界最強の女子プロゴルファーじゃないとシンジとは結婚させないって言うし……」

その会話を聞いたレイの瞳が鋭く光ったのをカオルは見逃さなかった。

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ブログ開設1周年記念SS倉庫
こちらは、私がブログで二次創作のSSを書き始めてだいたい(適当)1周年を迎えるにあたって、今までお蔵入りになっていた作品を再公開するためのページです。

更迭のガールフレンド 〜アスカを追いかけて9000キロ〜

アスカ・バーディラッシュ!
第1話 第2話

以下作成中

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