人の体の中のさまざまな組織や臓器になるとされ、ヒトの受精卵から作り出される「ES細胞」の研究をアメリカ政府が支援するのは違法だとして、連邦地方裁判所は支援の差し止めを命じる仮処分を下し、オバマ政権が重要と位置づけている科学政策は厳しい局面を迎えています。
ヒトの受精卵から作り出されるES細胞の研究をめぐっては、キリスト教徒の団体が生命の破壊につながり倫理的に受け入れられないと主張するなど、反対の声も大きく、ブッシュ前政権は、連邦政府が資金を出すことを原則的に禁じていました。しかし、オバマ政権は、「難病の治療法など人類全体に貢献する新たな発見をアメリカが行うべきだ」として、ブッシュ前政権からは一転して支援に踏み切っていました。これに対し、カトリックの市民団体などが支援は違法だとして訴えを起こしていたもので、23日、ワシントンの連邦地方裁判所は、原告の主張を認めて支援を差し止める仮処分を下しました。これに対して、オバマ政権は、研究は続けられるべきだとして控訴することを明らかにしています。今回の判決について、ワシントンポストなど主要紙は「政権の科学政策にとっては打撃だ」などと伝えており、オバマ政権が重要と位置づけている科学政策は厳しい局面を迎えています。