書評

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[乱中日記]

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壬辰倭乱の記録
李舜臣著
北島万次訳注
平凡社
2000

某日本史メルマガを読んでいたら、もし秀吉の朝鮮出兵が成功していたら、という一文があった。

秀吉が明に攻め入れば、今度は金のヌルハチと対決せざるを得なくなり、そうなれば、日本は破滅の危機に瀕したであろう。

この展開は、近代史にそっくり。

朝鮮に野心を持った明治日本は、宗主国の清との間の戦争を引き起こし、その結果、ロシアと衝突するに至る。

次いで、中国から南下して列強の植民地を脅かしたので、あえなく破滅したのであった。

はてさて、李舜臣といえば韓国最大の英雄であり、秀吉軍相手に赫々たる戦果を挙げた。

最大の勝利は、鳴梁海戦であり、何倍もの倭船を撃破したのであった。

もっとも実際には、海流を知らない倭軍が自滅したという、三国志に登場するような戦闘であった。

この海戦のあと、この偉大な将軍は戦死してしまう。

当時既に秀吉は死亡しており、戦争は最終局面を迎えていたので、現代韓国人が信じている、倭軍を一人で追い払った、というお話とは違うようである。

むしろ、かってのベトナム戦争終結期、パリでベトナムと米国の外交官が停戦交渉を続けている最中に、北ベトナムには爆弾の雨が降っている、みたいな状況なのだ。

朝鮮の宮廷は疎開しており、まったく前線の実情を知らないのに、李舜臣に無理な注文をつける。

戦時下で一致団結する、どころか、首脳部の派閥抗争は一向に収まらず、李舜臣でさえ一時期失脚する始末である。

将軍の中には、朝鮮人漁夫の首を多数ちょん切り、この通り倭敵をやっつけました、と報告する者さえいる。

また、抜け駆けで倭軍と停戦交渉する将軍もいる。

倭軍相手に勇敢に戦った、両班の妾腹の子や仏僧は、命を賭けても賤民の地位からは逃れられないので、戦意を喪失。

こういった不満分子は内乱を引き起こす。

賤民のある者は両班の婦女子を強姦したり、倭軍に扮装して隣村に放火したりする。

李舜臣はまさに孤軍奮闘し、軍規を乱す部下の首を切ったり、百叩きの刑に処すが、規律は高まらない。

司令官であるのに最前線で戦わざるを得ず、直属の副将でさえ、叱咤激励しないと戦闘に参加しないのである。

明の援軍はまったくやる気がなく、最高司令官がビビッて敵前逃亡。

明と倭の参謀は、共謀して明国皇帝と関白秀吉を騙し、戦争を終わらせようと企むも、失敗。

小西行長は、明軍に賄賂を贈って懐柔し、退路を確保してもらう。

さらには、小西は朝鮮側に加藤清正の動向を密告したり、逆に密告されて危うく拉致されそうになったりするのは笑える。

長引く戦争に嫌気が差した倭軍からは投降者が続出し、朝鮮軍に戦法を教えたり、日本の将軍を指示したり、軍船の漕ぎ手として使役されたり、果ては、仲間割れして讒言したりする。

まさに泥沼の様相を呈していたのであった。

訳注の北島万次先生は、「文禄・慶長の役」ではなく、「秀吉の朝鮮出兵」でもなく、「豊臣秀吉の朝鮮侵略」を歴史用語にしてくださった、有難いお方。

いわゆる「良心的日本人」学者である。

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「明史」
「自倭乱朝鮮七載、喪師数十万、餉数百万、中朝与属国無勝算、至関白 死而禍始息」
我が国とその属国(朝鮮)に勝算は無かったが、関白(豊臣秀吉)の死によって戦争は終わった

「宣祖修正実録」
「天兵(明兵)短剣騎馬にして火器なく、道険しく、泥深くして馳テイする能はず。
賊(日本軍)長刀を奮ひて左右に突闘し鋭鋒敵なし。」

「懲秘録」
賊(日本軍)は歩兵で、打ち振る刀は、三、四尺におよび、鋭利無比のものであった。
賊はその鋭い刀を左右にはげしく打ちふるい、人馬の区別なく斬り伏せた。
全くその勢いには抗すべき道がなかった。

日本人はよく刀槍を用いる。
我々には堅甲がないゆえ日本人に敵わない。
そこで厚鉄を用い全身鎧を作り
この鎧を着た兵士を敵陣深く切り込ませようと考えた。
取り敢えず、全身鎧の見本を製造して、
これを試用したが、とてもその重さに堪えられる兵士がおらず、これを廃した。

2010/1/12(火) 午後 0:03 [ affffertno ]

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