続「NHKは恥ずかしくないのか」、番組改編事件の現場責任者が全容を告発 - 柴田鉄治
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本書の中の最大の圧巻は、前日までの改変で全員「これでいいだろう」となっていた番組が放送当日にまたまた新たな改変命令が出て、放送時間が4分も短くなったまま放映されるという「最後の改変命令の怪」を、永田氏自らが後日、追跡して明らかにした部分である。
永田氏は、かつての上司の番組制作局長をレストランに呼び出して、厳しく問いただしたところ、「じゃあ言うわよ。会長よ」「えっ、海老沢会長ですか?」「そう、会長。それ以上は言えない」というやり取りがあったというのだ。
この部分を読んで、私は愕然とした。放送当日に会長が番組制作局長を呼んだという事実があったことは分かっていたので「うすうす、そうではないか」とは思っていたが、一方、NHKの公式見解は「会長と番組制作局長は、別の件で雑談しただけ」というものだったから、「まさか、うそをつく話でもあるまい」と思っていたからだ。
私が愕然としたのは、組織の責任者というものは、部下がやったことに対して、たとえ本当に知らなかったときでも、「自分の責任だ」と部下をかばうものだと思っていたのに、NHKの会長ともあろう人が部下に命じてやらせたことを「自分はまったく関係ない」とわざわざ言うなんて…NHKはそんな人物を会長に選んでいたのか、とあきれたからだ。
政治家に言われて次々と改変を命じた上層部の人たちの姿だけでも見苦しいのに、そのうえにこの会長。一方、その事実を内部告発した人たちには報復的な人事で制作現場からはずしたうえ、最終的に退社へと追い込む。そんなことをしていてNHKは本当に恥ずかしくないのか。
しかし、よく考えてみると、こうしたメディア幹部の『劣化』はNHKに限ったことではない。この事件でNHKと大喧嘩をした朝日新聞社の幹部も、記事は間違っていなかったのに、自民党や一部のメディアから激しい攻撃を受けて「取材の詰めが甘かった」と謝ってしまったのもそうだろう。
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