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スマートフォンの行方

2010年08月25日12時00分 / 提供:ITmedia エンタープライズ

ITmedia エンタープライズ

 ソフトハウスの動向も注目すべきだ。iPhoneアプリの開発を手掛けているソフトハウスは数多いが、Androidに関してはどうなのか。Androidの開発における機密保持が目的なのか、どの程度技術力を持っているのかを見極められたくないのか、インタビューに応じてくれる企業は少なかった。

 こうした中、元住友金属系の独立系ソフトハウスであるエスアイインフォジェニックの石川純生社長がインタビューに応じてくれた。同社は制御系のプログラム開発から事業を始め、現在は事務系のシステムまで手を広げている。シンクライアント販売や独立行政法人のシステム開発でも最近業績を伸ばしている企業だ。

 Androidにも積極的に取り組み、「日本Androidの会」やOpen Embedded Software Foundation(OSEF)と密接な関係を築き上げ、Androidを組み込んだ特定用途のタブレット型製品の開発に取り組んでいる。具体的な製品像は聞かせてもらえなかったが、石川社長は「この分野でさらなる成長を期待している」と抱負を語った。このようにAndroidはスマートフォン以外の用途にも広がっていくだろう。

●Aodroid以外のスマートフォン企業の動き

 Android以外のスマートフォンにも動きがある。米Microsoftは「Windows Phone 7 Series」を2月に発表した。その時点での端末のパートナー企業は、Dell、Garmin-Asus、HTC、Hewlett-Packard(HP)、LG Electronics、Samsung、Sony Ericsson、東芝、Qualcommだった。

 Windows Phoneの先行きは現時点では不明だといえる。この中で、携帯電話ビジネスで高いシェアを誇るSamsung、HTC、Sony EricssonはAndroidでも製品を発表している。残るパートナー企業の携帯電話ビジネスを見ると、LG以外のDell、Garmin-Asus、HP、LG、東芝は大きなシェアを獲得できていない。

 Microsoftの長年の盟友だったHPの動向も不透明だ。先日、PDAの老舗であるPalmを買収し、小型パーソナル端末の分野で独自に動き始めた。しかし事情通によれば、HPはPalmのwebOSを改造し、新世代スマートフォンとして出荷する予定はないということだ。

 携帯電話で世界1位のシェアを誇るNokiaの動向も明確ではない。旧世代型スマートフォンはGSMと同じく非常に高いシェアを誇るが、iPhoneに対抗できるかどうかは意見が分かれるところだ。同社の場合、携帯電話のOSで大きなシェアを持つ英国のSymbianを子会社に持つだけに、Androidの採用には簡単に踏み切れない事情もある。

 ビジネス向けスマートフォンにおいて米国で高いシェアを獲得してきたカナダのResearch In Motionも、従来のシェアを守ることができるのかについては、疑問視されている。

 このようにApple以外のスマートフォンのプレイヤーを俯瞰(ふかん)すると、スマートフォンのOS市場では、近い将来AppleとGoogleの一騎打ちが起こりそうだ。ほかのOSを抱えている企業はスマートフォン市場への参入をあきらめるか、大勝負に出るしかない状態だ。

●スマートフォン市場の行方

 iPodの流行からコンテンツビジネスで実績を積み重ねてきたApple。同社が打ち出すiPhoneのビジネスモデルは盤石だ。

 ここでiPhoneに対するユーザーのニーズを細かく見ていこう。iPhoneの購入者を大きく分類すると、(1)通信機能付きiPodとして購入した人、(2)インターネットへの接続を主な目的としている人、(3)ゲームをする人――となる。誰もがTwitterをやるわけではないし、僕のように音声通話をiPhoneの主な用途とする人も少なくない。例えばインターネット接続を目的とする人なら、より画面の大きなiPadの購入を考えるだろう。

 iPhoneに代表されるスマートフォンは、高速の携帯電話網(3GやLTE)の活用が前提となっている。そのためネットワークの構築には膨大な投資が必要だ。一方、これまで「ベストエフォート」という言葉で本質が覆い隠されてきたパケット通信は、コストという観点で見ると、いびつな課金構造をしているといえる。

 仮にパケット通信の課金体系が、リアルタイム性を重視したアプリケーション(音声やメール、グループウェア)とリアルタイム性をそれほど重視しないインターネット接続の両面で、ある程度合理性を持つようになるとしよう。スマートフォンの課金額は間違いなく上がり、音声や電子メール中心の携帯電話の課金体系も変わっていく。音声課金が中心だった既存の通信事業者は、減収を避けられなくなるだろう。

 僕はスマートフォン市場について、携帯電話市場よりも大きくはならないと見ている。AppleやAndroidを擁するスマートフォンベンダーの成長は近いうちに止まると考えているのだ。おそらく、iTunes Storeのような収益基盤を持つAppleなどを除いた企業は、スマートフォンビジネスで苦戦することになるだろう。

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