福岡市東区の海の中道大橋で、市職員(当時)の飲酒運転により幼いきょうだい3人が犠牲となった事故から25日で4年を迎えた。無謀な事故を教訓にするどころか、今年上半期の飲酒運転事故の件数が全国最悪の福岡県。前夜から早朝にかけての取り締まりでも酒酔い運転容疑で逮捕者が出た。「もう繰り返さないで」。太陽が照り付ける事故現場で、人々が行き交う街で、祈り訴える人たちの姿があった。
●現場で献花
海の中道大橋のたもとに設けられた献花台では、訪れた人が花をささげて幼い3人を悼んだ。
3児の父親大上哲央(あきお)さんと博多山笠を通じて知り合いだったという福岡県篠栗町の男性は、2人の娘を連れて橋の上に献花。3人が亡くなった海に向かってじっと手を合わせた。
「こんな身近に犠牲者が出るとは。きょうは特別な日。毎年献花に来ています」と寂しげな表情で振り返った。
2人の姉妹は、亡くなった紘彬(ひろあき)ちゃんと倫彬(ともあき)ちゃんの同級生で、一緒に山笠に参加するなど仲が良かったという。男性は「悲惨な事故があったというのに、県内の飲酒事故が全国最悪なのが残念で仕方ない。一人一人が意識を高めて飲酒運転を撲滅しないといけない」と強く訴えた。
●啓発活動も
福岡市東区のJR千早駅では25日朝から、東区役所と福岡東署などの約80人が通勤客らにパンフレットなどを配り、飲酒事故根絶を訴えるキャンペーンを行った。
3人のきょうだいをしのび参加者全員で黙とうした後、松田純区長が「悲惨な事故を二度と起こさないよう、心をひとつに努力しなければならない」とあいさつ。福岡東署の伊豆丸勉交通管理官は「あの忌まわしい事故を忘れないでほしい。飲酒運転を絶対に許さない雰囲気をつくりたい」と訴えた。
夕方には市役所前で飲酒運転撲滅大会があり、官民で再発防止の決意を新たにする。
●11人を摘発
福岡県警は24日夜から25日早朝にかけて県内103カ所で飲酒運転の一斉取り締まりを行い、道交法違反(酒酔い運転)容疑で1人を逮捕するなど計11人を摘発した。
酒酔い運転容疑の現行犯として逮捕されたのは、田川市内で追突事故を起こした田川郡の無職の女(48)。県警は、助手席の知人女性(51)も同法違反(同乗)容疑で調べる。
このほか酒気帯び運転の疑いで10人が摘発された。福岡県内では今年1-7月の飲酒運転による事故件数が前年同期から22%増えて209件になり、全国ワーストを記録している。
=2010/08/25付 西日本新聞夕刊=