JR名古屋駅前の顔として長年親しまれてきた松坂屋名古屋駅店(名古屋市中村区)が29日、36年の歴史に幕を閉じる。6月から続くセールには閉店を惜しむ大勢の買い物客らが訪れ、セール後の売上高は前年比2倍を超える活況だ。閉店まで残り5営業日となった24日も、バッグなど格安商品を目当てに女性客らでにぎわった。【工藤昭久】
親子で買い物に来た同市中川区前田西町、主婦、酒井智加子さん(57)は「交通の便がよく、市外に住む母親と名古屋駅で待ち合わせて買い物を楽しんできたのに」と閉店を惜しんだ。雑貨を買いに来た清須市の主婦(62)も「百貨店の中では敷居が低く入りやすかった。名古屋の顔が消えるのはさみしい」と残念がっていた。
従業員の思いも複雑だ。ギフトセンターで働く国友紀代美さん(57)は「開店当時、婦人服売り場で忙しく準備をしたことが昨日のことのように思い出される」。1階で20年以上受付係を務めてきた棟方則子さん(50)は「閉店したらどうするのかと気にかけてくれる顔なじみのお客様が来てくれる。最後まで笑顔で応対したい」と話していた。
名古屋駅店は74年オープン。売り場面積は約1万6000平方メートルと松坂屋名古屋店(中区)の5分の1しかないが、アクセスの良さを生かし顧客を取り込み、91年度のピークには売上高約297億円を記録した。
しかし、00年に隣接ビルにジェイアール名古屋タカシマヤが開業し競争が激化、消費不況も影響し09年度の売上高は104億円に落ち込んだ。入居ビル建て替えを巡りビルを所有するJR東海との賃料交渉も折り合わず、閉店を決めた。
ただ閉店セール効果で6~7月の売上高合計は前年比約2倍の41億円と大幅にアップ。セール期間の3カ月の売り上げ目標66億円を達成する見通し。同店の販促担当者は「セールの勢いを名古屋店の販売につなげていきたい」と話している。
毎日新聞 2010年8月25日 2時00分