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★2001/05/15(火)★
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今回から数回に渡って「ヘッジファンド」についてお話しようと思います。
ヘッジファンド自体をあまりご存知ない方のために、まずはヘッジファンドを簡
単に説明しましょう。
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ヘッジファンドとは投資信託の一種です。
通常の投資信託は、野村投信だの大和投信だのといった、ちゃんとした(?)企
業が運営しているため、その運用状況は全て開示されていますし、投資信託法と
いう法律に基づいて運用されています。
しかし、ヘッジファンドは「私募投信」のため、法的な規制を一切受けません。
故にヘッジファンドの詐欺にあったとしても、法は守ってくれません。
「私募投信」とは、文字どおり「私的な募集」によって集められるものです。
ちなみに通常の投資信託は「公募投信」と呼びます。
例えば、私がこのメルマガでこのように呼びかけたとします。
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「今からノビタファンドを募集します。みなさん、私にお金を預けませんか?」
「最低、1億円からです。先着10名で締め切ります。」
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もし、これで10億円が集まったとします。
この場合、このノビタファンドは「私募投信」ということができます。
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さて、ヘッジファンドの始まりですが、1949年にジョーンズが設定した『市場中
立型』のファンドが始まりだと言われています。
このファンドは、株式の売りと買いを組み合わせて、リスクをヘッジ(低減)し
ようとしたファンドであったため、「ヘッジファンド」と名付けられたのです。
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80年代に入り、ヘッジファンドは新しい局面を迎えます。
有名なジョージ・ソロスやジュリアン・ロバートソンといったカリスマ運用者が
『グローバル・マクロ型』と呼ばれる新しい運用形態を編み出し、世界を股にか
けた運用を始めたのです。
当初のヘッジファンドである『市場中立型』がリスクをヘッジ(低減)するもの
であったのに対し、ソロスなどの『グローバル・マクロ型』はデリバティブ(金
融派生商品)を駆使して、手持ちの資金を何倍にも膨らまして運用する、ハイリ
スク・ハイリターンのファンドです。
そうして、カリスマ運用者達は年率50%などといった運用利益を上げたのです。
驚くことに、年率100%というファンドも存在していたようです。
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さて、ヘッジファンドがその名をとどろかせたのは、1992年のことでした。
『1992年のポンド危機』というのは、金融機関に勤める人間にとって、もはや伝
説と化しています。詳細を説明しましょう。
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当時のイギリス政府はERM(欧州通貨制度)に参加しており、ポンドとEC諸国との
為替レートを一定の枠に収めなくては、なりませんでした。
しかし、イギリス経済は低迷しており、カリスマ運用者であるジョージ・ソロス
は、過大評価されたポンドは大幅なポンド安に追い込まれると予測しました。
そして、ソロスは、イングランド銀行を相手に100億ドル相当のポンドを売りま
くったのです。イギリス政府はソロスに対抗するため、92年9月16日に2回公定歩
合を引上げました。10%の公定歩合を午前中に12%まで、そして、午後には15%
まで引上げたのです。
ちょっと金融をかじった人なら分かるでしょうが、公定歩合を1日に2回も変更す
るなど、尋常ではありません。イギリス政府は国家の威信にかけても、たった一
人の個人に負ける訳にはいかず、なりふり構わない抵抗を試みたのでしょう。
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しかし、ギリギリで踏ん張っていたイングランド銀行も、ついにソロスの容赦な
いポンド売り攻撃を買い支えることができませんでした。
その結果、9月17日には公定歩合が10%に戻され、イギリス政府はERM(欧州通貨
制度)から撤退を表明。最終的に、ポンドは約4割も下落したのです。
そして、ソロスはこの勝負で約20億ドルの利益を得たのでした。
たった一人の男が、大英帝国の威信である、ポンドとイングランド銀行を打ち
破ったのです。世界中の金融関係者は驚き、拍手喝采を贈ったのですが、同時に
「ジョージ・ソロスとヘッジファンドは侮れない」と記憶に焼き付けられたので
した。
明日は「ヘッジファンド黄金期」についてお話します。
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