***2010年1月20日マンダレーハイヴ ***
東南アジア大反抗作戦。
大国のアメリカとソビエトがいない間、中国が提案した自国の領土奪還作戦。
当初は、反論があるとされていた日本は、中国との極秘会談によって、オリジナルハイヴにあるG元素に干渉しない代わりに、重慶ハイヴを好きに使っていいという、裏取引によって、日本も賛成に回った。
そして今日、作戦が発動した。
作戦開始直後、大東亜連合と統一中華軍を中心とした部隊の多くが上陸に成功したが、いまだフェイズ5の攻略は行ったことが無いために、戦局は押され、徐々に敗北の色が濃くなっていった。
『こちら、第5方面軍!HQ!もう戦線の維持ができない!!支援砲撃を頼・・・・・・『た、隊長!うああああぁぁぁあああ!!』・・・急いでくれ!!こっちはもう持たない!!』
『HQより第5方面軍、良く頑張った!そちらに応援が向かっている。。
喜べ、あのA-01だぞ!』
『・・・・・・A-01!?まさか、シロガ・・・ッ!』
その時、目の前に突撃級は突進してくる姿が目に入った。
『(マズイッ!直撃!!)』
そう思った瞬間、彼は目を閉じてしまったが、しばらくたっても何の衝撃も来ないので、恐る恐る目を開けてみると・・・・・・。
『こちら、A-01部隊の白銀大佐です。
指揮官殿、応答を願います。』
目の前に映ったのは、日本のType-00の後継機として名を馳せ、A-01用に特別生産されたType-01、暁であった。
『指揮官殿、応答を願います。』
催促されたので返事をする。
『あ、ハイ、こちら第五方面軍のムライ中佐です。』
『これより、この戦線は我々が仕切ることになった。』
『では、我々は後退します、ご武運を。』
『ありがとう。』
そう言って通信をきった。
『シルバーファング1、こちらホワイトウルフ1、周辺のBETAの掃討に成功。』
『シルバーファング1、こちらシルバーファング2、天照、軌道上の衛星とのリンクに成功、180秒後に照射を開始します。』
『シルバーファング1、こちらレイン1、06式電磁投射砲の発射準備完了。』
『了解した。
A-01各機に告ぐ、第1,2,3,4大隊は20km前進、門(ゲート)より進入し、各中隊にある雷光をセット反応炉を停止させろ、第5,6大隊はこの場で援護をしろ。
長い旅の始まりだ、こんな所で、脱落するんじゃねえぞ!』
『了解!!』
そして、彼らが前進を始めてから、わずか一時間で、反応炉の停止が全軍に伝えられた。
Muv-Luv Alternative IF~イノセントフィナーレ~
第12話「総合戦闘技術評価演習と帝都の取引(中編)」
***総合戦闘技術評価演習二日目***
―――ドゴオオォォンンンン
「少しばかり、爆薬が多かったかな?」
「すごいねえ、麻倉さん、爆弾について詳しいんだ。」
美琴は感心するが、麻倉はたいしたことはなさそうな顔をしていた。
「前に、じい様に教わったんだ。
じい様が、戦争で教わったもので、どうすれば爆発がよくおこりやすいのかとか教えてくれた。」
「へぇ~、そうなんだ。」
「・・・・・・しかし、鹵獲物資がまさかのドロップだとは。」
「先を急ごう、麻倉さん。」
そう言って、二人はその場を後にした。
―――
柏木と冥夜は、巧妙に仕掛けられた罠があるジャングルの中を歩いていた。
「御剣さん、そこに落とし穴があるから気をつけてね。」
「うむ、すまぬな。」
そう言って、ヒョイッと落とし穴があると思われる場所を飛び越える。
「・・・・・・ねぇ、御剣さん。」
「何だ?柏木?」
「そんなに白銀のことが心配?」
そう言われた瞬間、危うく今飛び越えた落とし穴に落ちかける。
「な、なな何を言うか、そなたは!」
「あれ?違ったの?」
「違う!」
「でも、なんか心配そうな顔してたから。」
「彩峰と榊のことだ。
そなたは、心配ではないのか?」
「今のあたしたちには、信じることしかできないでしょ。」
そう言われて、冥夜も確かにそうだと思った。
二人はそのまま、目的地に向かった。
***総合戦闘技術評価演習三日目***
夜、静まり返ったジャングルの中を茜と築地は歩いていた。
「あ、ああ、茜ちゃん、ゆ、幽霊なんていないよね?」
「あのねぇ、幽霊なんかいるわ・・・『・・・こんばんわ。」・・・。」
「「でッ!!・・・「静かに・・・。」・・・ムグッー!」」
「あれ?茜?」
彩峰と榊であった。
「あ、千鶴、大丈夫・・・じゃないわね。」
彩峰は、比較的普通だったが、何故か榊だけボロボロだった。
「ええ、いろいろあってね。」
「・・・・・・落とし穴に落ちたんだけど、そこのほうにいろんなものがあってね。」
「・・・い、いろんなものって何ですか?」
恐る恐る多恵が聞くと、いきなり方を掴まれ。
「・・・・・・知らないほうが、幸せになれる。」
コクコクと、顔を縦に振った。
「ねぇ、向こうのあれ、明かりじゃないの?」
榊に言われて向こうを見ると、確かに、明かりのようなものが見える。
「あ、みなさん、到着しましたか。」
そこに居たのは、高原であった。
「瑞希がいるってことは、他のみんなは?」
「みんな集まっています。
皆さんが、最後ですよ。」
「高原さん、明かりが漏れてたわよ。」
「スイマセン、でも、少し漏らしておかないと、皆さんとすれ違ってしまうかもしれなかったので。」
確かにそうだ、そう思いながら、集合場所に着いた。
「えっと、この倒れている人は・・・麻倉さん?」
「はい、一番初めからいたのですが、ずっとこの調子です。」
「ちょっと由香、起きなさい。」
「・・・・・・・・・。」
返事がない。
「多分大丈夫だと思うよ。」
多分ですか。
「と、とりあえず、全員揃ったところで、現状の確認をしましょ。」
榊の一声で、それぞれの成果を報告する。
全員、目標施設の破壊に成功。
鹵獲した物資は、榊たちはシート、茜たちはラペリングロープ、高原たちは弾が一発の対物体狙撃銃を一挺、柏木たちは脱出ポイントが書かれた地図、鎧衣たちは何故か、ドロップだけだった。
地図で脱出ポイントは確認すると、そこは島の端だった。
自分たちの位置では地形のことなどが分からないので時間的余裕があるかどうかは疑問だ。
よって、死に掛けのメンバーが一名いることもあり、なるべく緩やかそうなルートを選ぶことにした。
「とりあえず、今はここで休むことにしましょう。」
その言葉で、今日は休むことになった。
―――
「さて、どうしましょうか?」
周りはドシャブリの大雨になっており、川は増水してわたれなくなっている。
「恐らく、スコールだと思いますので、数時間もすればわたれると思います。」
「瑞希がそう言うなら、多分そうでしょ。」
高原の意見に他のメンバーもうなづいた。
「・・・・・・茜ぇ~、ドロップをくれ~。」
「ちょっと由香、この先何かに使うかもしれないじゃない、だめよ。」
「断言しよう、ありえない。」
「はぁ、しょうがないわね~。」
そう言って、ドロップを二、三個由香にあげると、心のそこから嬉しそうだった。
後、築地も欲しがっているようなので、二、三個あげた。
「毒とか大丈夫?」
「問題ない、私と鎧衣で二、三個食べたが、何の問題もなかった。」
「これおいしいよ、茜ちゃんも食べてみなよ。」
そう言われて、糖分を摂取するのいいかと思い、皆も食べ始めた。
そうこうしている内に、次第に由香の顔に普段、ろくでもないことを思いついたときの顔が出てきた。
「そうだ、皆に聞きたいことがあったんだ。
白銀のこと、好きか?」
「「「「「ブッ!」」」」」
全員、一気に吹いた。
「あ~、あ~、もったいない。
せっかくのドロップが。」
「い、いきなり、何を・・・「よし、最初は茜から聞こう。」・・・あ、アタシ?」
「そうだ、白銀のこと、好きか?」
全員の視線が一気に集まる。
「あ、アタシは、き、嫌いじゃないわよ。」
顔を真っ赤にしながら、言ったら心の中など由香には全てお見通しである。
「よし、帰ったら、PXのおばちゃんに頼んで赤飯を作ってもらおう。」
「な、なんでそうなるのよ、そ、それに、由香のほうはどうなのよ?」
「私か?私は好きだぞ。」
そこまで堂々とするのもどうかと、心の中で全員突っ込む。
「無論、おもちゃとしてな。」
あ、ですよねー。
「では、築地よ・・・「ふ、ふひゃい?」・・・お前はどうなんだ?」
「わ、わだずは、・・・「好きなんだろ?そうじゃなきゃ、夜な夜な・・・」・・・わーわー!」
この人の前には、秘密というのは存在しないのか?と、全員は心の中で突っ込んだ。
「では次は、高原。」
「私ですか?白銀さんは、そう言う恋愛対象にはなりませんね。」
「分かっている、だからお前はつまらないんだ。」
「ひ、ひどいです麻倉さん。」という高原の言葉を無視し、矛先をB分隊に向けた。
「わ、私は別に、きょ、興味はないわよ。」
「僕は、タケルのこと好きだよ。」
「わ、私は、えっと、・・・・・・。」
「ハイハイ、次々。」
「二人はどうだ?」と彩峰と冥夜と聞くと。
「私たちは、ノーコメント。」
「そうか、では・・・「ちょっと、待った。」・・・なんだ?委員長?」
「その呼び方はやめて、なんで二人は追及しないの?」
「興味がないからだ。
最後、柏木、どうなんだ?」
榊を無視して、柏木へと視線が集まる。
「ん?私?私は白銀のこと好きだよ。」
そこまで堂々といわれると、ちょっと。
皆の心はまた一つになった。
「具体的には、どこら辺に惚れた?」
「そ~だね~、前に二人きりで話したときに、白銀がさ、普段じゃ絶対に見せないような弱気な顔を見てさ、その時に、なんか守ってあげたいなって、思った。」
そう言われて、皆少し黙ってしまった。
「なら、支えてやれば、いいだろ。」
「そうだね、だからいつの間にか、惚れてたかな?」
「ウム、青春だな~。」
ふと気がつくと、雨がやんでいた。
「川はまだ増水してますけど、もう少ししたら渡れるようになりますね。」
高原の言葉を聞いて、皆準備を始めた。
***2001年5月9日帝都 とある喫茶店***
場所が変更され、先ほどまでいた店に皆を残し、ひとりで向かいの喫茶店に来たが、中は先ほどの店と変わりがなかった。
店に入ると、あらかじめ伝えてあったのか、店員がすぐに案内してくれた。
「どうぞ、お掛けになってください。」
予想通り若い男だった。
若い、年は10代といったところか、だが、何故だ?私は、この男に似ている男を知っている気がする。
いや、今は取引を成功することだけを考えよう。
「君が、あの手紙の差出人か?」
「ええ、そうですよ、さっさと取引を始めましょう。」
「その前に質問があるが、いいかね?」
「・・・・・・どうぞ。」
巌谷中佐は、ずっと聞きたかった質問を彼に聞く。
「この取引は、・・・・・・香月博士は関与しているのかね?」
「直接的な関与はありません。」
「では、君は国連軍だろう?何故、帝国にXM3を引き渡そうとする?」
「国連軍だと、機密ってものが守られるかどうか心配なんですよ。
その点だと、日本は、信頼ができます。」
「なるほど、では、・・・「よろしければ、私も同席させていただきたい。」・・・篁中尉!?何故ここに?」
いつの間にか、席の近くまで来て話しかけた女性は、遅れると言って、先ほどまでいた店には来なかった篁中尉であった。
「先ほど、中佐がこの店に入るのが見えたので、私もこの店に入ったのです。」
「そうか。」
すると、目の前に座っている彼が、篁中尉のことをじっと見つめているのが見えた。
「ああ、すまない、彼女は・・・「篁 唯依中尉。」・・・。」
「アラスカのユーコン基地で開発中の不知火 弐型の開発主任、・・・・・・ですよね?」
「・・・・・・そうです。
私のこともご存知ですか。」
「凄腕の衛士とも聞いたので、覚えているんですよ。」
「彼女の同席は・・・「構いませんよ。」・・・ありがとう。」
「では、取引を始めましょうか。」
こちら側の要求は唯一つ、XM3を手に入れること、そのためには、絶対に成功させなければ。
「こちらとしては、XM3を頂きたいのですが、そちら側の要求は?」
すると、何故か少しばかり迷っているような表情を見せた後に、話し始めた。
「こちら、・・・いや、俺からの要求は、俺を帝国軍に入れて欲しい。」
「「!?」」
帝国に入れて欲しい?どういうことだそれは?
「先ほどまでの会話から、あなたは香月博士の腹心ではないのですか?」
「ああ、・・・博士とは、協力関係なだけで、別に従っているってわけじゃないんですよ。」
「では、帝国軍に入って何を?」
篁中尉はずっと彼のことを疑っている。
当然だ、いきなり帝国軍に入れてくれなど、こちらとしては可能だが、普通は怪しむ。
「ああ、別に悪いことをしようってわけじゃないです。
中佐の、・・・・・・いや、技術廠のお抱えの部隊を新たに創設していただき、そこの部隊長として俺を置いてください。
現在、帝国軍の新兵器などは、富士教導団などが、実験などを行っていますが、トライアルなどを行うにあたっても、一から説明するより、お抱えの部隊にやらせたほうが、そちらとしてもいいのではないでしょうか?他にも、98年のBETA襲撃によって、うやむやになってしまった装備などがたくさん埋もれたりしているのではないですか?それらを有効活用するにあたってもいかがです?」
「分かった、君の要求どおりにしよう。」
「中佐!?」
「彼の言うことに、我々のデメリットが少なく、かつメリットのほうが大きい。」
「そうですが!」
何故か彼女は、この内容に否定的なようだ。
「階級は、大尉でいいかね?」
「それでいいです、後、副官を一名つけてください。
なるべく、衛士で。」
「分かった。
では、君の名前を教えてくれ。」
「あ、ハイ、白銀 武です。」
「「!?」」
今、この男はなんて言った!?ま、待て、落ちつくんだ!
「字は、黒白の白、金銀の銀、武術の武。」
「ち、父親の名前は!?」
無意識のうちに彼の胸倉を掴んで大声を上げていたので、店中の視線が集まる。
「し、白銀 影行ですけど。」
「そ、そうか、わかった。
では、今月の30日には、・・・・・・間に合わせる。」
何を言っているのだ、俺は!目の前に、目の前に彼がいるのだぞ!!
「あ、分かりました。
では、・・・・・・失礼します。」
彼も少し驚いた様子で店を出て行った。
「篁中・・・・・・ッ!だ、大丈夫か!?」
ふと隣にいた篁中尉を見ると、彼女の顔は青ざめていて、体中が震えていた。
「・・・・・・し・・・ろ・・・・・・がね?影行おじ様?」
クソッ!お前は、お前たちは、あの時死んだんじゃなかったのか!?影行!!
彼が心の中で叫んだ声は、誰のも聞かれることなく、彼の心に響いていた。
あとがき
ホントは昨日の正午には投稿できるはずが、ミスってデータが全部消えた。
昨日の教訓、バックアップはこまめに!!