山口県で昨年10月、助産師にビタミンK2の代わりにホメオパシー療法の特殊な錠剤を投与された乳児がビタミンK欠乏性出血症で死亡したことを受け、日本学術会議の金沢一郎会長は24日、「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されている」との談話を発表した。
ホメオパシー療法は18世紀末ドイツで始まった。病気と似た症状を起こす植物や鉱物を何度も水で薄めてかくはんし、この水を砂糖玉にしみこませた錠剤(レメディー)を服用して自然治癒力を引き出し、病気を治すというもの。元の物質は水にほとんど残っていないが、実践する人たちは「水が記憶している」と主張している。
欧米やインドで盛んだが最近は効果を巡り議論が起きている。日本でもごく一部の医療関係者が、がんやうつ病などの患者にレメディーを投与している。
日本学術会議は政府に科学振興策などを勧告できる、日本の科学者の代表機関。記者会見した金沢会長は、欧米のように普及する前に、医療分野で広がらない手だてが必要と主張した。
山口県の乳児死亡では、母親が助産師を相手に損害賠償を求める裁判を起こしている。
ホメオパシー療法の普及活動をしている「日本ホメオパシー医学協会」(東京都)は「欧米の実績で分かるようにホメオパシー療法は効果が科学的に証明されている」と反論している。【小島正美】
毎日新聞 2010年8月25日 東京朝刊