東京女子医大病院で01年、心臓手術を受けた女児(当時12歳)が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われ、無罪が確定した同病院元助手、佐藤一樹医師が「大学側の誤った調査報告で名誉を傷つけられ、不当に解雇された」として、大学などに約8300万円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は24日、請求を棄却した。松田典浩裁判官は「報告の誤りは重大だが、賠償請求権の時効(3年)が成立している」と述べた。
松田裁判官は「大学の調査委員会が執刀医の証言の信用性などをよく検討していれば佐藤医師が逮捕、起訴されなかった可能性がある」としたが、佐藤医師が報告の誤りを指摘しようとした04年2月時点で提訴が可能だったとして、時効成立を認めた。諭旨解雇については「遺族に死因をごまかす目的で医療記録の一部改ざんに協力しており、かなり重い処分はやむを得ない」と判断した。
判決によると、佐藤医師は手術で人工心肺装置の操作を担当。手術中に装置が正常に作動しなくなり、女児は脳障害のため3日後に死亡した。大学側は原因を「佐藤医師の初歩的な過失」とする報告をまとめた。
刑事裁判の2審の東京高裁は「執刀医が装置の管を挿入した位置が悪かったことが原因」と指摘し、佐藤医師の操作と死亡の因果関係を否定、1審の無罪判決を支持した。【和田武士】
毎日新聞 2010年8月25日 東京朝刊