「芥川作曲賞」音楽家が覚醒剤所持の疑いで現行犯逮捕

　エリート音楽家が、覚せい剤所持で捕まった。警視庁池袋署が、国立音大准教授で作曲家・指揮者の夏田昌和容疑者（４２）を覚せい剤取締法違反（所持）の疑いで現行犯逮捕していたことが２３日、明らかになった。新進気鋭の作曲家を対象とする「芥川作曲賞」を受賞したり、国内外でのコンクールで入選歴を持つ夏田容疑者は「３年ぐらい前から自宅などで使用した。現実逃避のためだった」と供述、容疑を認めている。

　将来を嘱望された作曲家の突然の不祥事に、国立音大関係者のショックは大きかった。２３日夕、東京・玉川上水のキャンパス内で副学長２人とともに緊急記者会見を開いた庄野進学長（６２）は「大学教育に携わる者がこのようなことに手を染めたのは大変ゆゆしき事態。多くの方々に迷惑をかけて大変申し訳ない」と頭を下げた。

　逮捕容疑は２１日午後１時ごろ、調布市の自宅マンションのビデオデッキの中に、覚せい剤３袋（計約２・４グラム）を隠し持っていた疑い。夏田容疑者は「３年ぐらい前から自宅などで使用していた。やめようと思ったがやめられなかった。現実逃避のためだった」などと供述。尿鑑定の結果、覚せい剤反応も出ており、同署は使用容疑でも追起訴する方針。

　池袋署が別の女性（２６）の覚せい剤事件を捜査中、夏田容疑者が女性に覚せい剤を譲渡していたことが分かり、２１日に家宅捜索した。

　夏田容疑者は作曲家・夏田鐘甲氏の息子で、東京芸術大大学院修了後、９７年にパリ国立高等音楽院作曲科を首席で卒業。９８年から母校の東京芸大などで非常勤講師としての活動を始めた。９１年に日本音楽コンクールで３位入賞したのを手始めに、国内外で何度も入賞し、２００２年には新進音楽家の作品の中でも「最も清新かつ将来性に富むもの」に贈られる「芥川作曲賞」を「アストレーション～オーケストラのための―ジェラール・グリゼイの追憶に―」という作品で受賞した。最近は指揮者としても活躍していた。

　０３年４月に国立音楽大の非常勤講師に就任。０４年に専任講師となり、０６年に異例のスピード出世で准教授になった。教科は現代音楽の作曲と音楽理論。庄野学長は「研究活動も積極的で、学内での問題はなかっただけに遺憾だ」と述べ、「現実逃避のため」という夏田容疑者の供述についても「（理由が）分からない」と述べた。２４日に懲戒委員会を開いて事実関係を調査し、処分の検討に入る。

（2010年8月24日06時02分スポーツ報知）