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きょうの社説 2010年8月25日
◎株価9000円割れ 政府、日銀の無策に失望感
日経平均株価の終値が1年4カ月ぶりに9000円を割り、海外市場で1ドル=83円
台に突入した急激な円高と株安で、景気が腰折れする懸念が一段と強まってきた。にもかかわらず、政府、日銀の動きが鈍いのはどうしたことか。株価の下落は円高などに加え、それに有効な手を打たない政府、日銀の無策ぶりに市場が失望した結果でもある。菅直人首相と白川方明日銀総裁は23日に電話会談し、「緊密に連絡を取る」ことを確 認したという。だが、具体的な円高対策は明らかにされず、24日は輸出関連株を中心に幅広い銘柄が売られた。 直接会談しても具体策が伴わなければ市場が反応するのは避けられない。そこで電話会 談し、取りあえずは協調姿勢を示す狙いだったのだろう。9000円の大台割れは政策の手詰まりが市場に見透かされ、裏目に出た形である。アリバイづくりのような協調の演出や口先介入はもはや通用しないことを認識する必要がある。 日銀には追加金融緩和を求める声が日増しに強まっている。昨年末に導入した「新型の 資金供給策(新型オペ)」の拡充などが浮上しているが、政府の追加経済対策の中身が見えないために、現時点では足並みをそろえた対策を打ち出しにくい面もある。 追加経済対策の財源としては、今年度予算の予備費や09年度決算剰余金を合わせた1 ・7兆円が想定されているが、閣僚からも、それを上回る規模を求める声が出始めている。来年度予算の子ども手当上積み分や高速道路無料化など、マニフェストを大胆に見直してでも財源を捻出する努力がいる。場合によっては、さらなる財政出動もやむを得まい。単独での為替介入も選択肢として視野に入れておく必要がある。 憂慮されるのは、民主党代表選へ向け、首相続投支持派と反対勢力との間でマニフェス ト実行をめぐる路線対立が激しくなっていることである。代表選で身動きが取れない印象を与えれば、政治に対する市場の不信感はさらに広がることになる。政府、日銀は危機感を共有し、これ以上の円高を許さないという断固たる意思を具体策で示してほしい。
◎基地周辺対策費 使い勝手の良い交付金に
来年度の基地交付金の概算要求について、原口一博総務相が減額方針を改め、今年度当
初予算と同額を要求することにしたのは当然の判断であろう。自衛隊基地などを抱える自治体にとっては、総務省所管の基地交付金だけでなく、防衛 省の特定防衛施設周辺整備調整交付金の扱いも気になるところで、この調整交付金を、より使い勝手のよい制度にすることが望まれる。 原口総務相が当初、概算要求で「聖域扱いをしない」と述べ、削減の構えを見せた基地 交付金は、自衛隊施設や米軍使用の国有地の固定資産税が非課税であることを踏まえ、その資産額に応じて自治体に配分されている。 いわば地方税の代替措置という同交付金の性格を考えれば、小松市や金沢市など交付対 象の自治体にとって、国の都合による一方的な削減は理不尽な措置と言わざるを得まい。全国基地協議会が減額反対の緊急決議を出したのも無理からぬことである。 基地交付金は使途が限定されない自治体の「一般財源」となるのに対し、特定防衛施設 周辺整備調整交付金は、自治体の使い道が特定された「特定財源」という性格を持つ。防衛施設周辺環境整備法に基づき、生活への影響が特に大きい基地などを抱える自治体に交付され、小松市の場合は08年度実績で約3億円に上る。 これまで公共用の施設整備に使途が限られてきた同調整交付金は、今年度からはソフト 事業にも使えるようにしようということになり、その対象として、医療費の助成やコミュニティーバス運営費、学校施設の耐震診断費の助成などが想定されてきた。しかし、そのために必要な防衛施設周辺環境整備法の改正案は、先の通常国会で継続審議となり、まだ成立していない。次の臨時国会で速やかに成立させてもらいたい。 調整交付金の使途拡大は、「地域の使いやすいものに」という昨年の事業仕分け判定に 基づいて行われるが、使途の制限のない一般財源化を望む声も強い。自治体の裁量がより認められる制度になるよう、検討を進めてほしい。
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