米国でインフレ懸念が金利上昇に作用、経済成長を圧迫=ソロス氏
[ニューヨーク 30日 ロイター] 米著名投資家ジョージ・ソロス氏は30日、米国ではインフレ懸念が金利の上昇に作用し、結果的に経済成長を圧迫すると述べた。
ソロス氏は米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が主催した朝食会に出席し「市場の回復に伴い、インフレ懸念が金利の上昇に作用し、経済成長を圧迫する」と述べ、借り入れコストの増大が経済成長を鈍らせる要因になると警告した。
米国では米国債の利回り上昇を受け、住宅ローン金利が上昇。住宅市場の回復に冷や水を浴びせるとの懸念が出ている。また住宅ローン借り換えの動きが活発になったことが景気後退で打撃を受けた家計、および個人に融資を行っている銀行の活性化に一役買っていたが、こうした動きも後退するとの懸念が出ている。米国における国債利回りと住宅ローン金利の上昇はまた、ここ3カ月ほどの世界的な株価回復の動きに水を差しかねない。
ソロス氏はまた、国際金融市場の規制について「市場が自動的に調整するという考えは正しくない」とし、国際金融市場を取り締まる世界的な規制の導入は必要だと述べた。その上で、各国政府は、バブル経済の発生を予防することは不可能だが、発生したバブル経済の肥大化を食い止めることはできるとの認識を持つ必要があると述べた。
ただ「規制当局というものは、いつも誤ったことをするものだ」と述べ、このため「当局による関与は最小限にとどめるべき」との考えを示した。
ソロス氏は、当局が特に犯しやすい過ちは、当局がマネーサプライを制御し、その他のことは全て市場まかせにすることだと指摘。政府や当局が過去25年にわたりバブル経済の崩壊を抑えようとしてきた努力が、結果的に今回の「スーパーバブル」発生の原因となったと述べた。
同氏は、大規模な景気刺激策、および銀行の救済策で、米政府の財務状態は悪化していると指摘。今回の信用収縮と景気後退(リセッション)対策として米政府が実施している措置は、同様の深刻な過ちである可能性があると警告した。
また、今回の危機の最悪期は脱したものの、投資家は教訓を学んでいないとし「市場参加者は危機などなかったふりをして、通常の状態に戻りたいと思っている」と述べた。
ソロス氏は今年初めに表立った活動から引退。インスティテューショナル・インベスターズのアルファ・マガジンによると、同氏が2008年に稼ぎ出した資金は約11億ドル。
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