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[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ(第八話②更新)
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/24 22:55
初めまして、騎士王と言います
初のアルカディアでの投稿に緊張しまくってます
偶に短文になる事もあるかも知れませんが、温かく見守って下さい


この作品は
・タケルちゃんチート…かも
・オリキャラ・オリジナル戦術機
・時々(?)キャラが崩壊、キャラによっては、はっちゃける時や暴走もアリ
・ハーレムルート…になるかもしれない
・時々短文(最低でも二千文字程度)に書く時が有るかもしれません、ご了承を。
などなど…と有りますのでご了承を…嫌いな方は見ない方が良いです
応援のメッセージ受け付けてます…更新の力をオラにわけてくれ…(えっ?)


修正・第一話①
ちょい修正しました…
この頃(小説の設定時期)まだ佐渡島ハイヴ無かったよ……まだちょい未来だった…グハッ!?
修正・プロローグ
真耶の名前が真那に……
修正・プロローグ・一話①
巌谷中佐の所をオリキャラに変更しました…
お゛お゛ぅ…唯依姫登場のが遠退いていく…
追伸・第二話④
お゛お゛ぅ…話が長くなるぅ…スミマセンでした…

修正・第三話①
夜中の眠い時に更新した為、少し間違えました
真耶戦が短くてスミマセンでした、
しかし、XM3無しではタケルの持ち味も減り、尚且つ接近戦では真耶に負けると考えて短くなりました
…この頃のタケルちゃんはチートではありません…ご了承を…m(_ _)m
修正・第二話④と第三話①
シュミレーター(誤字)からシミュレーターに修正

追伸・第五話①
ちょっと短めの話になりました…スミマセン

修正・第二話③

官僚から閣僚に修正しました
報告ありがとうございます
変更・第四話①
九條椿の設定で、最初は『当主』でしたが、変更し『当主』ではなくなりました
理由は椿ママを登場させる為です
突然の変更で申し訳ありません
修正・第六話③

マインドシーカーの複座の座る位置を間違えてました

ESP発現体は上(後部座席)ではなく下でした


修正・第七話②

イーニァをイーニャと誤字


修正・第七話③
ブラックウィンドウでなく『ブラックウィドウ』でした



[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ~プロローグ
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/10 19:00
1998年・1月ーーーーー
仙台・第二帝都城ーーー「雪か…寒い訳だ」
白い息を吐きながら、帝都城の渡り廊下を歩く男ーーー帝国斯衛軍大佐・斉御司兼嗣
『五摂家』の一つの現当主で、齢50を超えて尚、未だに戦場を駆ける『武士』の一人
「日本の未来は…一体何処に向かうのだ…」
米国に政権を一時的とは言え、握られ
日本が迷走し、将軍家の存在が『お飾り』とまでされ、今の日本には『幸せな民』は一握りしか居ない現実に嘆く日々ーーー
苦々しく表情を浮かべる斉御司大佐の顔は歯を食いしばりなからも空を見上げる…
「アラ…そなたは…?」
「あ…貴女様は…殿下!?」
声をかけられ、振り向くと、幼いながらも将軍になった『煌武院 悠陽殿下』と、護衛の『月詠 真耶中尉』が歩み寄って来た
「斉御司兼嗣殿ではありませんか…」
「ハッ…殿下に名前を覚えて頂き至極有り難き幸せで御座います」


クスクスと笑いながら冗談を言う斉御司大佐
その後、跪いて頭を下げる


「何をしてたか…聴いて宜しいでしょうか…?」

「ハッ…日本の現状と行く末に頭を悩ませながら、空から降る雪を見ながら考えてました」


「……スミマセン、私に力が無いばかりに…」


「で、殿下、頭を上げて下さいっ!!」

説明すると悠陽殿下が頭を下げながら謝罪する
それを見て、頭を上げるように説得する真耶中尉


「……未だに将軍家の威厳は昔のようにありません…


しかし、私には皆さんの力も有って、将軍として力を振るえるのです」


「勿体無き御言葉…」


悠陽殿下の御言葉を聴き、感動する真耶中尉…

「しかし…あと一手…
あと一手何か『決め手』があれば…!!」

斉御司大佐も苦痛な表情をしながらも悩んでいた…
そしてーー再び雪降る夜空を見上げるとーーーー


「「「ーーーーーなっ!!?」」」


突然の目の前に光輝く柱の出現に驚愕する三人
輝きが徐々に消えていくと、気を失った一人の青年が姿を現れた


「コレは一体…!?」


余りの出来事に驚愕を隠せないでいる斉御司大佐


するとーーーー















「タケル…様…?」

「えっ…?」
「殿下…?」
悠陽殿下の一言に反応する二人だった…



[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ~第一話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/10 10:20
「う…ん……………ん?」
目を覚ますと、見知らぬ天井が見え、起き上がりながら辺りを見る
「此処は…何処だ…?」寝ぼけながらも脳をフル回転させるタケル
そして出た結論はーーー
(…もしかすると『御剣家』の一部屋か…?)
以前、御剣冥夜と御剣悠陽の実家の御剣家に訪ねた時があり、(強制連行だが…)その内の一部屋に似ている記憶があった
(やっぱり、悠陽や冥夜の実家ーーーーー痛っ!!)
すると、突然の頭痛が襲い、膨大な『記憶』が流れて来る!!


(BETA……横浜基地…?
戦術機…G弾…凄乃皇四型…!?)


徐々に流れて来る『記憶』に少しずつ『理解する』タケル…そしてーーー
(柏木…伊隅大尉…速瀬中尉…涼宮中尉…!!)
そして、尊敬すべき先任達の記憶と悲しき別れの記憶…
(神宮司軍曹…委員長…彩峰…美琴…タマ…)
そして、最も尊敬すべき恩師と苦楽を共にした仲間達の様々な記憶…
(冥夜ーーーーー!!
純夏ーーーーー!!)
そして、こんな自分の事を最も愛してくれた二人の記憶ーーーーー
「ハァ…ハァ…
コレは…もしかしてーーーー」
今、タケルの脳裏にひとつの『考え』が浮かび上がる
「『帰って来た』…のか…?
『BETAのいる世界』に…?」
『三度目』のループだと答えを見つけるタケル
記憶が『全て』思い出すと同時に涙が溢れてきた「やった…やったぞ…白銀武…!!」
記憶を思い出したタケルにとってーーーー
『三度目のループ』は…望むべき『願望』だった…
「これで…みんな…みんなを…救える…!!」
納得のいかなかった『一度目と二度目』のループ
一度目は力が無かったーーーー
二度目は覚悟が足りなかったーーーー
だが、今回は違うーーーー!!
「今回こそ…今回こそみんなを救ってみせるっ!!
絶対に…あんな悲劇は二度とゴメンだっ!!!」
右手を拳にし、力強く握り締める
決意は決まったーーーー
やる事も決まったーーーー
力も覚悟もあるーーーー
次する事はーーーー!!
「……まずは情報を集めよう…
ここが『三度目の世界』であるならば、『御剣家』では無い筈…
…という事はーーーー」


記憶を振り絞って出した結論はーーーー
「…帝都…なのか…?」以前までのループと違い、『白銀家』でのスタートでない事に少し戸惑うタケル
しかし、このような豪華絢爛な和風な部屋は滅多に有るモノではない
特に『BETAの居る世界』ならば尚更
まず浮かび上がる答えは『帝都城』
帝都城ならば、この作りは納得する
日本を象徴とする帝都城ならば、この豪華絢爛な部屋も当然の事
「…という事は…京都か仙台の帝都城…なのか…?
それとも高位の武家の家なのか…?」
益々わからなくなってきたタケル
混乱しそうだったので、考えを切り替える事にする

(とりあえず…場所は保留にしとこう…
次は…今は何時頃の時代なんだ…?)
普通に考えれば『2001年10月22日』なのだが、今回のループは違う
目覚める場所が違う為、何か『違う』気がしたタケル
辺りを見回してみるが、カレンダーは無く、唯一骨董品みたいな古い柱時計があった
(日付は9日…時間は夜中の2時12分か…)
日付は違う
時間帯も違う
年号はわからない
この部屋では情報が全く無い為、難航するタケル
(参ったな~…情報が少な過ぎる)
ボリボリと頭をかきながら寝台から起き上がる事にしたタケル
するとーーーー!!


「目覚めたようですね…タケル様…」
「悠陽…殿下…?」
知っている『煌武院悠陽殿下』とは少し『幼い感じ』がした為、一瞬戸惑うタケル
「殿下…先に入られては困ります」

「大丈夫ですよ、真耶さん」
すると、悠陽殿下の後ろから真那中尉が現れ、悠陽殿下の前に立ち、タケルを警戒する
(あれは月詠さんの従姉妹の月詠真耶さん…だっけ?)
タケルも数回程度しか合った事が無い為、少し困惑する
「貴様…白銀武か…?」
「ハイ、オレは白銀武です…
スミマセンが、今の年号と日付を教えてくれませんか…?」
真耶中尉に質問に正直に答え、タケルも真耶中尉に質問する
「…今は『1998年1月9日』だ」

「せ、1998年ッ!?」
予想外な年号が出た為戸惑うタケル
「そ、それじゃ、此処は何処ですか!?」

「仙台の第二帝都城の一室だ」
「えっ、ええぇぇえぇぇっ!?」
更なる返答に混乱するタケル
「今度は此方からの質問だ
正直に答えよ」
鋭い眼光を放ちながら、タケルに問いただす
「貴様は何者で何故光と共に現れたのだ?」
「…その時の詳しい状況を教えて下さい…」
タケルの心の中で『やっべー…もしかして大勢の人に見られた…?』と嫌な汗を流しながら真耶中尉の返答を待つ
「数時間前…殿下がその日の作業を終えて、寝室に向かう際、とある渡り廊下で帝国斯衛軍大佐の斉御司兼嗣殿と出逢い、少し話をしてた際、貴様が我等の目の前で光と共に現れたのだ」

「ノゥ…やっちまった…」


目撃者が三人だったのは幸いだが、少なくとも『斉御司大佐』の事は全く知らない人故に焦りが生まれる
「大丈夫ですよ、タケル様…
斉御司大佐には此度の事は内密にと言って起きましたので、他の方には漏れる事はありませんわ」
「ふぃ~…有り難う御座います…殿下…」
少し安心したタケル
そして、真耶中尉の問いに答える

「オレは『この世界』とは違う並列世界から来ました
ただ、以前『BETAのいる世界』に飛ばされた事があり、『二度の結末』を見て『元の世界』に帰りました…」
「違う『並列世界』だと?
詳しく話すのだ」
「良いですけど…眉唾的な話ですよ?」
「それでもだ」
「……わかりました…
これから話す事は…全て『真実』です」
タケルの真っ直ぐな眼を見て『嘘では無い』と悟る悠陽殿下と真耶中尉…
「始まりは…オレん家から始まりました…」
2001年10月22日ーーー
全ての『始まり』は其処から始まったーーーー
『一度目』は何が何だかわからない自分は混乱し、横浜市柊町をうろつき、廃墟とした光景に唖然とした…
幼なじみの家は撃震で破壊され、周りの建物も同じように破壊されていた
辿り着いた場所は『国連軍横浜基地』
その場所は自分の通ってた学校の有った場所だった…
その後、正門前の衛兵に怪しまれ、捕まるが、此処である人物に出逢うーーーー
『国連軍横浜基地副司令・香月夕呼』
皮肉にも、『元の世界』での知ってる人物であり、お互いに切っても切れない『縁』である彼女に出逢い、拾われたのだ
「…あの『魔女』の知り合いとは…」
「確かに先生は他の人にしてみれば『油断出来ない人物』ですが、『中身』を見れば『優しくて頼りがいのある人物』なんですよ
堅い考えと偏見な見方を止めて、よ~く中身を見れば理解出来ますよ
…ただし、それまでにどんな理不尽な『イタズラ』が待ち受けてますけどね…」
「な、何故泣く!?」
夕呼の事を理解してるタケルが真耶中尉に『香月夕呼』の事を説明するが、その最中に『悲しき記憶』が蘇り、るーるー…と涙を流す

…それからタケルに『生きる術』を教える為に『訓練兵』として学ぶ事になった
その際、『元の世界の恩師』である神宮司まりもに出逢い、『207B分隊』に配置される
そしてーーーー其処でかけがえの無い仲間達と出逢うーーーー
榊千鶴
彩峰慧
鎧衣美琴
珠瀬壬姫
そしてーーーー『御剣冥夜』
『元の世界』でも仲の良かった友でもあり、『BETAのいる世界』では大切な仲間だったーーーー
「ーーーーー冥夜…様だと…?」
この事に驚愕する真耶中尉だが、冷静に話を聴く悠陽殿下…
それから、悪戦苦闘の毎日が続いたーーーー
みんなの足を引っ張りながらも、『総戦技演習』をクリアし、衛士になるべく戦術機の訓練をしていた
その際、『元の世界』でのゲームが役に立ち、戦術機の腕前では『天才衛士』と言われるまでに評価された
しかし、様々な事件が起こり出す
群馬・新潟沖に佐渡島のBETAが上陸し、『新潟沖BETA襲撃』が発生
横浜基地を目標とし、突撃するが、なんとか最終防衛線にて阻止する
爆薬満載なHSSTによる『横浜基地強襲』
この時は訓練兵でありながら『極東一のスナイパー』である珠瀬壬姫が『1200mmOTHキャノン』を使い、撃墜に成功
噴火目前の天元山による『災害救出活動』
この時は冥夜と二人で力を合わせ、『第3世代機高等練習機・吹雪』にて天狗岩を両断し、マグマの進路を変えて麓の村を救う事に成功するーーーー
だが…しかし…『12月25日』ーーー
オルタネイティヴ4は失速し、オルタネイティヴ5が発動
選ばれた10万人だけ宇宙の何処かにある惑星に逃げ、地球は残った全人類によるG弾による殲滅作戦が始まったーー
「そんなーーーー」
「ふっ、ふざけてるっ!!
G弾による殲滅作戦だとっ!?」
「…その後の結果はオレにはわかりません…
途中で死んで『二度目のループ』に行った為、『人類の勝利』か『滅亡』かは知りません…
けど、『対応』をするBETAの事を考えれば…『滅亡』の可能性の方が遥かに高いでしょう…」
タケルの言葉を聞き、絶句する二人だった…
「そして、次に『2度目の世界』です…」
『二度目の世界』はオルタネイティヴ5を避ける為、『未来を変更する』手段を取った
普通ならば絶対に不可能だが、タケルだけは違った
『未来』を唯一知る人物ーーー
だからこそ『未来の変更』が可能になった


幸いな事に『一度目』で鍛えた肉体と知識、そして衛士としての腕前は継承していた為、多少の日にちを早め、少しずつ『未来を変更』していたーーーー
『新潟沖BETA襲撃』も香月夕呼の力を使い、帝国軍をBETAが上陸する付近に配置し、前回より被害の少ない未来に変更したーーー
HSSTによる『横浜基地強襲事件』も、前もって監視と脅しを入れ、阻止する
天元山の『災害救出活動』も、強引な手段とは言え、民間人の救出に成功する
そして、タケルの機動特性を元に作った新OS・『XM3』を開発
後に『全衛士の半数を救うOS』とまで呼ばれる事になる

…だが…予期せぬ事態が起きた…
帝都でのクーデター事件
煌武院悠陽殿下をも巻き込んでの大事件を始めとして、横浜基地に現れたBETAの『トライアル襲撃事件』
そして、佐渡島を消滅という結果になったが、『佐渡島ハイヴ攻略』に成功する
その3日後にBETA達が陽動などを使い、『横浜基地襲撃事件』を発生
そして…息を吹き返したオルタネイティヴ5の危機を回避する為ーーーーー
『桜花作戦』を開始するーー

「…桜花作戦とは…何だ…?」
緊張感が張り詰める中、質問する真耶中尉…
「桜花作戦の作戦内容はーーーー
『オリジナルハイヴ攻略戦』です…
そして…多大な犠牲がある中…桜花作戦は成功しました…」
「「ーーーーーーーーーッ!?」」
人類の念願の夢のひとつである『オリジナルハイヴ攻略』
それが現実になったと知り、衝撃が二人を襲う!!
ーーーしかし…タケルの表情は暗いまま
『オリジナルハイヴ攻略』を成功したというのに『笑顔』が消えた…
「しかし…桜花作戦で…かけがえの無い仲間達を失いました…
委員長に彩峰に美琴にタマ…
そしてーーーー幼なじみの純夏や…冥夜まで…オレを生かす為に……戦い…二度と逢うことは叶いませんでした…」
「ーーーーーッ!?」
「冥…夜……が……」
『御剣冥夜の死』を知り、衝撃を受ける二人…



[20989] MUVーLUV ALTERNATIVE~三度目のループ第一話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/09 14:43
タケルの説明を終えて言葉を失う悠陽殿下と真耶中尉
「…結論を言うと…半信半疑だな…
いきなり佐渡島ハイヴだの…未来だの言われても、貴様の言う通り『眉唾的』な話ばかりだ…」


「それは仕方ない事ですよ
『証拠』を出せと言われても『物』として有る訳でないから出せませんし…」
「そうですわね…」
流石に証明するモノが無く、決定的な実証が出来なかったタケル
「…だが、貴様が嘘を言ってる節は見えなかった…
だから、とりあえず『話を聞いておく程度』にしておく…
…でなければ…私は貴様を『殺して』しまいそうだ…
冥夜様が…死ぬなど…許されるハズが無い!!」


内心怒り心頭の真耶中尉…
やはり『御剣冥夜死亡』の話はかなり揺らいだようだ…


だがーーーーー


「ーーー月詠中尉、頼みが有ります…」
「…なんだ…?」
「オレをーーーー気が済むまで殴って下さい」
「「なっ!?」」
タケルの突拍子も無い言葉に驚愕してしまう真耶中尉と悠陽殿下
「何故ーーーーと聞いて良いか?」
「オレは…自分が許せません…
仲間達を救えずに…逆に守られる身だった自分に…
そしてーーー冥夜の命を……この手で『奪った』自分が許せません…」

「…えっ?」

予想外な返答に唖然とする悠陽殿下
そしてーー!!
「グハッ!!」
「貴様ーーーッ!!!!!」
一気に怒りが爆発した真耶中尉が渾身の一撃をタケルの顔面に叩き込む!!
「貴様が…貴様が…冥夜様を……ッ!!!!!」
タケルの首筋を左手で鷲掴みにし、狂ったようにタケルの顔面を殴り続ける真耶中尉

「や…やめなさいっ!!
止めるのです、真耶さん!!」
「貴様のせいで……貴様のせいで…冥夜様は…!!!」


悠陽殿下の言葉すら届かず、『殺意』を持ってタケルを殴り続ける真耶中尉

「駄目ですっ!!このままではタケル様が……死んでしまいますっ!!」

「殿…下…?」
身体を張って真耶中尉を止める悠陽殿下
その際に正気に戻る真耶中尉…
「良いんだ……止めなくても良いんだ……」
「しかし、このままではーーー」
『死んでしまう』ーーーー
そう口にする前にタケルに頭を優しく撫でられる悠陽殿下

「オレは許せないーーー
幾ら『元の世界』に帰り、記憶を失っていても……
こんな自分を『愛してくれた』冥夜を…殺し…その罪を『忘れた事』を……」


「えっ…冥夜様が……貴様を…?」
タケルの言葉を聞き、ピタリと反応する真耶中尉ーーー

目の前の男は少なくともーー
自分の利益や保身の為に仲間を裏切る者ではないーーーー
むしろ、自分が何でも背負い込むタイプに見えなくも無いーーーー
「………白銀武
『冥夜様の死』を詳しく教えろ…」
「ハイ…」

タケルは機密情報(凄乃皇等)の事は伏せながら話す……





桜花作戦時ーーー
遂に『あ号標的』のいる間まで辿り着いたタケル
だが、しかし…『あ号標的』の攻撃により、『決戦兵器(凄乃皇)』の行動を封じ込め、幼なじみの純夏や同じ搭乗者の霞まで『あ号標的』により、気を失っていた

だが、タケル達の瞬間に、『紫の武御雷』に搭乗していた冥夜がタケル達を救い出すものの、『あ号標的』には適わず、触手攻撃により、武御雷ごと、決戦兵器に貼り付けられる
S11の自害も封じられ、冥夜の全身に『あ号標的』の触手攻撃により『乗っ取られてしまう』のだった



「そん…な…」
絶句する真耶中尉
あまりの絶望的状況に言葉すら発する事が出来ない悠陽殿下
「そしてーー冥夜は……オレに『自分ごと、あ号標的にトドメを刺せ』と言ったんです……」

「ーーーーーッ!!」
なんて残酷な選択を選ばされたのだーー
自分を愛してくれた人物を『殺せ』と言われる絶望ーーーー
自分ならば……どうするのだろう…
真耶中尉は…残酷な選択に判断が出来ないでいた…
「そして……冥夜は言ったんです……
『御剣冥夜は最も愛したソナタの手で……殺して欲しい…のだ』…と…」


ガタリと跪いて戦意喪失になる真耶中尉…
あまりの真実に絶望し…力が抜けてしまう
「冥夜…様…」
「だから……オレは自分を許せないんです……
冥夜を……みんなの『幸せ』を守れず…自分だけ生き残った事に……」
涙をこらえながら、食いしばって語るタケル…
初めてタケルの『苦しみ』を理解する二人…
「…………」
言葉を発する事が出来ない状況になり、無言の時間が経つ……
「……………殿下…
話の続きはまた今度にしましょう…
時間ももう遅い……お休み下さい……」
「ハイ…わかりましたわ…」
苦痛な程空気が重くなる……
それから逃れるように話を中断する三人…
「…白銀武よ…しばらく待っておれ
殿下を寝室まで送って来る」

「ハイ…わかりました」部屋を出て、悠陽殿下を寝室まで送る……



そして……時間がしばらく経ちーーーーー
「失礼するーーーー白銀武?」

再び部屋に入る真耶中尉
しかしタケルからは言葉が出てこなかった
「白銀武ーーー気を失っていたか……」
真耶中尉の怒りの猛攻に気を失っていたタケル…
気を失っていたタケルの顔に『塗り薬』を塗り、湿布薬や絆創膏を貼り、治療する
「私はーーーー
この者の『苦しみ』を理解出来なかった…」
先程の出来事に深い反省をする
「この者とてーーー苦しみながらも戦い続けたのだ…
なのに…私は…怒り任せに暴れるだけ…」
タケルの『覚悟と贖罪』を知った真耶中尉…

ボコボコに腫れ上がるまで殴り続けた自分に深い後悔が真耶中尉の背中にのしかかって来た…


「月詠…さん…?」


腫れの痛みで起き出すタケル、そしてーーーー

「ん………」
「!!!?」

優しくタケルの唇に触れ合う真耶中尉の唇
予想外の出来事にタケルも驚愕する


「済まなかった…やり過ぎた…
コレは…私なりの『償い方』だ…だからと言って勘違いするなよ!?
…別に『恋愛感情』で唇を合わせた訳ではないぞっ!!」
顔を真っ赤にしながらも誤魔化す真耶中尉…


「…だから……自分を…許してやれ…」
優しくタケルの頭を抱え込んで慰めれる
優しく……豊満な胸にタケルの顔を少し埋める
「休むが良い……話は後日またしよう…」
「………ハイ…
スミマセン…でした……」
そのまま再び深い眠りにつくタケル…
今度はゆっくりと眠りにつけれるように…そっと休息を与える真耶中尉だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第二話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/10 21:51
1998年・1月9日
「モグモグ……イチチッ…」


目が覚め、すっかり『朝・昼飯兼晩ご飯』になってしまったタケル
傷がチクチク痛みを感じながらも根性で食べる

「すっかり外が暗くなってやがる…
オレ…鈍ってるのかな…」


ちょっと不甲斐ない自分に反省するタケル
身体を鍛え直そうと考えたりする


(けど…1998年って事は…『光州作戦』や佐渡島や横浜にハイヴを建設した年だよな…)

モグモグと食事しながら考えこむタケル

(つー事は、この時はまだオレや純夏は無事に柊町で暮らしてるんだよな…)

この時『まだ生きてる自分や鑑純夏』を心配するが、『何か良い手無いかなぁ~…』と脳をフル回転させる


(…やっぱり『先生』に逢わないと始まらないか…悠陽に頼んでみるか…)


『歴史を変える』には『香月夕呼』という人物が必要だと考えを改めて思う

すると、丁度食事が終わると同時にドアからノックする音が聞こえて来る
「ハイ、どちら様ですか?」

「私だ」

すると真耶中尉が部屋に入って来た
「随分と寝坊助だな、もう晩だぞ?」
「グッ…面目無いです…」

反論が出来ないでいるタケルを見てクスリと笑う真耶中尉

「さて、今夜は殿下と斉御司様と密会をしてもらう
良かったな、白銀
まだ眠っていたら『拳』が飛んでいたかも知れぬぞ?」
「アハハハ…」
冗談には見えなかったタケルは苦笑いをしながら嫌な冷や汗をダラダラと滝のように流す…

「斉御司様には、一通りの話はした
勿論斉御司様は『半信半疑』で聞いてたがな」

「…『半信半疑』って事は『少し』は『信じた』って事ですよね…?」

タケルの問に『ああ、そうだ』と返答が帰って来る

「まず白銀の話の内容だが…
『嘘』にしては、内容が『突拍子過ぎる』
『嘘』をつくならば、もっと上手い『嘘』をつく
次に『妄言』の可能性だが…
『妄言』を言う奴が『俺を殴って下さい』などと言うのも変だしな…
それに『妄言』にしては内容が弱い
それに話の内容も『出来事と結果だけ』で『中身』を喋ってない…
これは『機密情報を隠蔽』を意味する事から『真実味』が有ると私は思う
…ついでに言えば、白銀がスパイや暗殺者の可能性も皆無
もし、白銀がスパイや暗殺者の類いならば…貴様はどうしようも無い程の『莫迦でマヌケな奴』だ…
故にこの案も消える」


「……なんか酷い言われようですね…」

素直に喜べないでいるタケルを見て『良かったな、死罪は免れたぞ?』と冗談を言う真耶中尉

「それに我々の目の前で『光と共に現れる』のだ…普通に考えれば有り得ない出来事だ
『未来から来ました』なんて事を言えば『多少』は信じてしまうぞ?」
「なんか複雑な気持ちですね…」


真耶中尉の説明を聞いて、だんだん落ち込んで来るタケル
「その真意を知る為に今回の密談が有るのだ
お二方に信用して貰うかは白銀次第だ」

「ハイ、わかりました…」

真耶中尉の言葉を聞き、覚悟を決めるタケル
その真っ直ぐなタケルの表情を見て、『フッ…』と笑みを浮かべる真耶中尉…

「さて、話も此処までだ
いい加減、服を着替えるんだ」
「服って……………………まさか…コレデスカ?」


ベットから離れた場所の小さな机の上に『斯衛軍の軍服(黒)』が用意されていた

「他に服が有るか?」

「ソウデスヨネー…」
仕方無しに服を着替えると……

「グハッ……似合わねー…」
鏡を見て素直な感想を言うタケル
「『馬子にも衣装』だな」
「んがっ!?」
真耶中尉の一言にショックを受けるタケル
「ホラ、さっさと行くぞっ!!」
そのままタケルの腕を掴み、悠陽殿下達の居る部屋へと向かって行った…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第二話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/11 16:20
部屋を出て十数分後…
殿下達が待つ部屋の前に到着するタケル達

「ここだ、失礼無いようにな」

「ハイ」

「では行くぞ…
失礼します殿下、月詠真那中尉只今参りました」

頭を下げながら入室するタケル達
中では、殿下と斉御司大佐が待っていた
「ご苦労様です、真耶さん
ようこそいらっしゃいました、『タケル様』」
「…………?」

なんとなく悠陽殿下のセリフに違和感を感じるタケル

「此方に居る御方が、五摂家の一人である斉御司兼嗣様だ」


「私が斉御司家現当主であり、斯衛軍陸軍大佐の斉御司兼嗣だ
済まないが君の自己紹介をしてくれないかね?」

「ハッ、オレの名は白銀武と申します
歳は18です」

「ウム、元気の良い若者だ」

はっきりと返答するタケルに好印象を感じる斉御司大佐

「あと、此処には居ませんが、『もう一人』お呼びしてます
少々遅れますが直に来るでしょう」

「ハッ、わかりました」
悠陽殿下の会話に返答を返すタケル
すると斉御司大佐からタケルに話しかけて来る

「…ところで、月詠中尉からは話を一通り聞いたが…はっきり言えば突拍子過ぎて困惑してる状態だ…」
「…スミマセンでした」

困惑している斉御司大佐に申し訳無い気分になり、素直に謝るタケル

「あの…質問の前にスミマセンが…こちらからひとつ殿下に質問して宜しいでしょうか…?」


「私にですか?
…勿論宜しいですが…兼嗣殿…宜しいでしょうか…?」

「ハッ、殿下にお任せします」

「有り難う御座います」
殿下と斉御司大佐に深々と頭を下げるタケル

「殿下…何故オレの事を『タケル様』とお呼びになるのでしょうか…?」

「…そうですな、その事に関しては、私も月詠中尉も気になる所です」

「殿下は…過去に白銀に会った事が有るのですか…?」

タケルの質問ーーー
『タケル様』と呼ぶ事に違和感を感じていたタケル達
「オレの事を『タケル様』と呼ぶのは元の世界の殿下…御剣悠陽とメイド長の月詠真那さんと月詠真耶さん
…あとは3バカの巴・戎・神代の三人…
この六名のみがオレの事を『タケル様』と呼んでました
…しかし、二度目の世界では、殿下はオレの事を『白銀』とお呼びになってました
この世界で出逢って間もないオレに『タケル様』と呼ぶのは何故でしょうか…?」

先程の違和感ーーー
悠陽殿下の『タケル様』が気になっていたタケル
何故出逢ったばかりなのに『タケル様』と呼ばれるのか…悠陽殿下に問いただす


「そうですね…わかりました
実はタケル様と出逢ったあの時ーーー
光と一緒に現れたタケル様を見た瞬間ーーー
私の頭の中に見覚えの無い『記憶』が流れて来ました…」


「記憶…ですか…?」

「ハイ…
見覚えの無い公園で『幼い姿の私と冥夜とタケル様』が砂場で遊んでた記憶と…
今ぐらいのタケル様と同じように成長した私が仲の良い関係になりながら、冥夜や御親友達に囲まれてる記憶が流れて来ました…
その際、私が『タケル様』と呼ぶシーンが流れてきて、あの時はつい呟いたのです…」

「記憶の流出…もしかして…」

悠陽殿下の説明を聞き、ある仮説が浮かぶ

(もしかすると…元の世界の悠陽の記憶がループの際流出して、この世界の悠陽に記憶が流れて来たのか…?)

「白銀、何かわかったのか?」

考え込むタケルに真耶中尉が訪ねてくる
「いや、恐らくは『元の世界の御剣悠陽の記憶』が流出して、この世界の殿下に流れて来たんでしょう
原因は…恐らくはオレのループによる事だと思います」

「そうか…
では、殿下のお身体には影響は…?」
「無いでしょう
ただ、莫大な量の記憶が流れて来たのなら、強い頭痛は来ますが、今の内容だけの記憶量ならば、頭痛も無いでしょう
有ってもチクッとする程度です」
「そうか…それを聞いて安心した」
タケルの説明を聞いて一安心する真耶中尉

「なる程…
しかし、何故今でも『タケル様』とお呼びになるのでしょうか、殿下?」
ふと、疑問に思った事を質問する斉御司大佐
するとーーー
「…何故だが、『タケル様』と呼びたい気持ちになりましたので、つい…」

「「「えっ?」」」

「大丈夫です、他の者が居る時は『白銀』と呼びますのでご安心を
それ以外の時は『タケル様』とお呼びますので…」

「「「ええっ!?」」」

悠陽殿下の反応に思わずハモる三人

「で、では斉御司大佐
な、何かご質問が有りませんか?」

「ウ、ウム……では…」
なんとかこのビミョーな空気から出ようと話題を変えるタケル
斉御司大佐も戸惑いながら、タケルに質問をする「白銀武よ、貴殿は『未来』から来たと聞いたが…
済まないが、何か『納得出来る証明』を提示してくれないかな…?」
「…と、言いますと…?」

「君が『別の世界』から来たという話は信じよう…
現に我等の目の前でいきなり光と共に現れたのだ…その事に関しては信じよう
だが、『未来から来た』というならば、我々が信ずるに値する事を教えて欲しいのだ…」

「信じる事に値する内容か…」


うーん……と腕を組ながら考えるタケル
すると…ふとある事を思い出す

「そういえばーー
『光州作戦』って聞いた事ありますか…?」

「聞いた事も何も、今現在『光州作戦』は発動してるぞ?」

「ええっ!?」

斉御司大佐の一言で驚愕するタケル

「大変だっ!!
今すぐ手を打たないと大変な事に…!!」

「どういう事だね…!?」
「実は、この光州作戦は、後に『光州作戦の悲劇』と呼ばれる事になり、結果…『彩峰中将』が死罪となり、後に起きる帝都での『12・5事件』のクーデター事件の引き金にもなるんです!!」

「な…なんだとっ!!」
タケルの語る『歴史』を聞き驚愕する三人



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第二話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/18 01:01
「し、白銀…詳しい話をしてくれないかね…?」
「ハッ、何時起きたかは俺はわかりませんが、光州作戦の撤退支援として帝国軍も参加してましたが
脱出を拒む現地住民の避難救助を優先する大東亜連合軍に彩峰中将が協力した為
その隙を突かれた国連軍司令部は陥落し、指揮系統に大混乱が起き、国連軍は甚大な被害を負い、日本政府に猛抗議し、彩峰中将の国際軍事法廷への引き渡しを要求しました
そして内閣総理大臣の『榊是親』殿は『国連に従えば軍部の反発』と『逆らえば、オルタネイティヴ4が失速する』という辛い選択肢に悩み苦しみました…
結果、榊首相は苦汁の選択として、最前線を預かる国家の政情安定を人質にし、国内法による厳重な処罰という案で国連を納得させました」


「なんと…」
「彩峰中将が…そのような事に…」
タケルの衝撃的な『歴史』に驚愕するしかなかった悠陽殿下達

「…これは後に聞いた話ですが…
榊首相が彩峰中将の下に一人で訪ね、日本の未来を説き、土下座をしたそうです
その姿を見て彩峰中将が人身御供を快諾し、後に死罪となりました…」

「榊首相が…それ程苦汁の選択を…」

榊首相と彩峰中将の二人を思ってか、つらそうな表情になってしまう悠陽殿下

「…そして、それが引き金となり、2001年・12月5日にクーデター事件が起きてしまいます…
首謀者達の中には彩峰中将を慕う者達が居て、彩峰中将の死後以来、日本政府に不満を持ち、結果、クーデターは起きて…榊首相を始めとした閣僚達は…『暗殺』されました…」

「「!!!!!」」
「榊…首相が…暗殺…?」
再び衝撃的な歴史を知り、言葉を失う斉御司大佐と真耶中尉
唯一悠陽殿下だけが、声を震わせながら呟く

「そして、このクーデター事件には、裏で『米軍』が動いてるようで、事実クーデター事件時にクーデター側に居た米軍のスパイが帝都に攻撃し、帝都での戦闘が開始しました
その際、殿下は帝都での戦闘を避ける為に帝都城から逃げ、自らを『囮』となりました
これは殿下自らの案で、城内省にも知らせず、殿下と帝国情報省・外務二課の鎧衣左近課長と侍従長一人の三人のみで帝都を離れ、箱根の離城に繋がる秘密の地下鉄道で到着した際
当時訓練兵だった俺達『第207衛士訓練小隊B分隊』が配置され、休憩の際に外に出てたオレが殿下達を発見し、鎧衣課長の提案もあって、オレが搭乗していた第三世代機の『97式戦術歩行高等練習機・吹雪』に複座して貰い、『国連太平洋方面第11軍・横浜基地』へと退却戦が始まりました…」

「なっ…訓練兵だけで殿下の護衛だと…!?」

『殿下の護衛が訓練兵』という事に戸惑う斉御司大佐にタケルが…

「それはちょっと違います、斉御司大佐
俺達訓練兵以外にも、教官一人と、斯衛軍であり、冥夜の護衛である『第19独立小隊』の月詠真那中尉とその部下の巴・戎・神代少尉達も殿下の護衛に入ってます」
「…そうか…真那が居たか…なら安心だ」
従姉妹である真那中尉が悠陽殿下の護衛に廻ったと聞き、安心する真耶中尉
「退却をする際、途中で米軍の『第66戦術機甲大隊』が援軍に来て、我々の援護をしてくれました
彼等は純粋に祖国の命に従い、我々を助けてくれましたが…中に彼等も知らなかったスパイが居た為、戦況は悪化しました…」
「悪化…とは…どの様な…?」
不安をしながらタケルに問うと…

「首謀者である帝国本土防衛軍・帝都守備連隊の『沙霧尚哉大尉』に説得を試みた冥夜は殿下に変装し、沙霧大尉との対話をなさいました…
しかし、あと一歩という所で米軍に潜んでいたスパイが攻撃、結果説得は失敗し、再び退却戦が始まりました」

「なんという事だ…」

「結果、米軍は壊滅的な被害を受け、クーデター軍は撃退し、首謀者である沙霧大尉は月詠真那中尉により、殉職しました…
他のクーデター軍も帝国軍により鎮圧され、事件は終わりました…」

余りの悲劇の連鎖に言葉が出て来ない悠陽殿下達…

「ですから…追加の軍でも命令でも何でも良いです…
彩峰中将に現地民族を救助に向かわなければ…光州作戦の悲劇も…クーデター事件も防げるかもしれないんです…!!」


強い気持ちで殿下達に進言するタケル
その強い気持ちが真実と知り、驚きながらもタケルを注目する斉御司大佐
「この悲劇を回避しないと…オレの大切な仲間が…彩峰と委員長が父親の死や大切な人の死で再び悲しむ姿をオレは見たくないんですっ!!」

「ーーーーーッ!!」

先の話で聞いていた訓練部隊のメンバーに彩峰慧と榊千鶴の名前を思い出す悠陽殿下達


「どうか…どうか…お願いしますっ!!」


悠陽殿下達の前で深々と土下座をするタケル
その姿を見て『嘘』と思う者は居なかった…

『…気持ちはわからんでも無いけど、土下座は止しなさい、白銀
殿下達だって困ってるでしょう?』
「えっ……?」
突然の声に全員が注目する
カツカツと足音をたてながら姿を現す
『その件に関しては私が先手を打ったから安心なさい、白銀
…あと、遅ればせながら失礼致します殿下
国連軍所属・『香月夕呼』…只今参りました』

「せっ、先生!?」
突然の香月夕呼博士の訪問に驚きを隠せないでいるタケル



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第二話④
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/16 09:49
「せっ、先生!?
何故此処に……っていうか…先生も『記憶』が有るんですかっ!?」

アワアワと慌てるタケル
知っている『香月夕呼』とは少し若返った姿での再会とタケルの存在を知っていた事に困惑していた

「……アンタも相変わらずね~…
ちゃんと順番に説明するから落ち着きなさい」

「ハイ…」

慌てるタケルを落ち着かせて、順番に説明する香月博士


「私が此処に居る理由は、殿下にお呼びがかかったからよ
何の用なのかはわからなかったけど…アンタを見て納得したわ」

相変わらずの鋭い洞察力で全てを悟る香月博士
『流石は先生だ…』と感心するしかないタケル

「次にアンタの事を何故知っていたか…
そんなの簡単よ…私は『二度目の世界』の香月夕呼だもの
私もアンタと同じように『ループ』したんだからね…
まあ…私の場合は『今回限り』だけどね…」

「ハァアァァァァァッ!!!???」

衝撃的な事実に驚きを隠せないでいるタケル
思わず開いた口を閉じる事すら忘れる程の衝撃だった

「アンタ、『転移装置』を覚えてる?
アンタが元の世界に一時的に帰還して、『並列処理装置の根本理論』の数式を『元の世界の私』から貰いに行ったあの装置よ」

「ハイ…覚えてます」
「なら話を進めるわよ
アナタが『二度目の世界』から立ち去ってから10年後…
ハイヴも残り数が10まで減り、人類に希望が広がってた頃
一度は離れたけど、殿下達の計らいもあって再び横浜基地に着任した私は様々な新開発などをしてたの
そんな時ーーー
2012年・4月28日に横浜基地にテロ事件が合ったの
そして、丁度転移装置のある部屋に居た私は、突然の転移装置の『暴走』に巻き込まれたのよ」

意外な事実を知り、驚きながらも香月博士に質問するタケル

「暴走…ですか…?」

「そっ、暴走
テロリストが、どうやら基地の発電所を爆破したみたいでね、その際に暴走した電力が転移装置に流れて暴走し、『高エネルギー体』が私を襲ったのよ…
流石に死んだと思ったわよ~…
けど、目覚めて見れば、『14歳の頃』にタイムスリップしてた事にしばらくは呆然としてたわ
アンタがループした時の気持ち…今ならわかるわ…」

流石の香月博士も複雑な気持ちになっていた…

「なんでまた転移装置を処分しなかったんですか?」


「…なんとなくだけどね…
アンタにまた『逢えそうな気』がしたのよ…
そんな気持ちもあって10年間残していたら暴走して…
しまいにはループしたこの世界で…今アンタと再会したのよ」

「…ホンット先生とは『腐れ縁』ですね…」

「まったくよ」

皮肉を言うタケルに賛同する香月博士
しかし…ここにひとつの『縁』に再会して喜び合う


「あ…あの……
話についていけないのですが…」

「あっ」

「スミマセン殿下
まあ『白銀と同じ存在』とお考え下さい」

「は、ハァ…」

余りの突然の話について来れなかった悠陽殿下達…


「ーーーーーさて、話を戻しますがーー
香月博士、先程の『手を打った』とはどういう事か説明して貰えませんでしょうか?」
「ハイ、実は光州作戦開始時に私の特殊任務部隊『A-01連隊』に『現地住民の避難救助と護衛』を命じておきました
もし、国連軍司令部の防衛する部隊が救助活動に参加した場合は、
代わりにA-01が国連軍司令部を防衛するようにと言ってありますから、万が一に彩峰中将が救助活動に向かってもカバー出来るように先手を打っておきました」

「さ、流石は先生!!」

香月博士の先手を聞いて安心するタケル

「そうですか…油断は出来ませんが、手を打った事に感謝致しますわ、香月博士」
「いえ、恐縮です殿下」
「彩峰中将は私にとっても『恩師』となる方…
あのような方を失う事は、日本にとっても大きな損失となるでしょう…」
「後は…朗報を待つのみです…」

香月博士の行動に感謝する悠陽殿下
そして謙遜しながら後はA-01連隊の活躍を信じるしかないと無事の帰還を心の中で祈る香月博士

「さて白銀…今までの貴殿の話の真意だが…
私は信ずるモノと判断する事にした」


「あ、ありがとうございますっ!!」


斉御司大佐の決断の結果に感謝するタケル

「まず話を信じる決め手だが…
貴殿は我々しか知らない情報を知っていた事が決め手となった」

「決め手…?」

「ウム、クーデター事件の件の話だが…
貴殿は将軍家及び五摂家やほんの一部の上位の者しか知らない『地下鉄道』の事を知っていた
しかも箱根までのルートまで知っているとなると、疑いようの無い事だ
…次に鎧衣課長の事だ…
彼は情報省というスパイ活動が主な活動故に、その存在を知っているのは一部の人間のみだ
我々や香月博士のような地位の高い者ならば兎も角、貴殿が鎧衣課長の存在を知っていた事も決め手のひとつだ
そして…最後にーー御剣冥夜殿の事ーー
貴殿は御剣冥夜殿がどのような立場の方か…知っておるな?」

「ハイ…冥夜は…殿下の『双子の妹』です…」

「「!!!!」」

機密である『双子の妹』を知っていたタケルに驚く悠陽殿下と真耶中尉

「殿下の『紫』の武御雷を冥夜の為に用意してくれた事…
悠陽殿下と冥夜の容姿と性格があまりにも似ている事…
そして、その推測の結果を殿下本人に問いただした時にーー冥夜が『双子の妹』と告白してくれました…」

「そう…でしたか…」

タケルの話を聞き理解する悠陽殿下達


「その事もあって、私は白銀武が『未来から来た事』を信じる事にする
歴史云々の話はこれから証明される事だ…その事に関しては、その時に証明された場合に信用しよう」


「それだけでも…有り難いです!!」
斉御司大佐からある程度信用された事に感謝するタケル

「では…次にタケル様の身分ですが…
私としては、帝国軍が斯衛軍に属して貰いたいのですが…
兼嗣殿と香月博士の意見はどうでしょうか…?」
次の話題として、『タケルの身分』の事について話し合う事になった
「私は別に帝国軍でも斯衛軍でも国連軍でも構いません
ただ、オルタネイティヴ4が本格的に活動する際には白銀を国連軍に『一時的に配属』してくれると助かります
此方にとっても、白銀はオルタネイティヴ4の『重要人物』でありますからね…彼が居ないと先に進みません
ですが…そうですね…
白銀の更なるレベルアップを考えるのならば、帝都で『最強』の二文字を持っている『紅蓮大将』と『神野大将』に鍛え上げて貰うのも良いかと…」

「ほう…紅蓮大将と神野大将とは…香月博士もなかなかのスパルタだ」

香月博士の提案を聞いて関心する斉御司大佐
不安感タップリのタケルはコッソリと真耶中尉に質問する


(あの…月詠中尉…
紅蓮大将と神野大将とはどんな方で…?)
(私や真那を始め、殿下や冥夜様の『師』である方である
そして、この日本を守る最古参の二人でな…
前将軍の『煌武院雷電』様と三人で『最強』を欲しいままにした生きた武人だ…)
(…月詠中尉はどなたか勝った事ありますか…?)

(有るわけ無かろう!!
あの武人一人だけでも、精鋭を集めた『一個師団』をぶつけても全滅は必至だっ!!)

(んがっ!?)

真耶中尉からの死刑宣告に近い言葉を聞いて、『あっ…オレ…もう此処で逝くのかな…?』と遠い目になるタケル

そんなタケルの気持ちを無視して話は進む

「階級は以前は少尉でしたが、短い期間ですが小隊長も経験してますし
最終的なポジションも『突撃前衛長』ストームバンカード・ワンでした
ですから今回は『中尉』からでも大丈夫かと…」
「ほう…突撃前衛長とは…なかなかの腕前と見た」

その時、斉御司大佐はある案を浮かぶ

「スミマセンが殿下
白銀をシミュレーター訓練で衛士としての腕前を見たいのですが…宜しいですか?」
「名案ですわ、私もタケル様の腕前を見てみたいですわ」
すっかりタケルの機動特性を見せる事になってしまった
「真耶さん、スミマセンが…タケル様の相手になってくれないでしょうか…?」

「ハッ、承知致しました」

「ええっ!?」
一方的に話が進められて、相変わらず選択の権利が無いタケル…
「では早速行きましょう!!」

ズルズルとタケルを引きずりながら、シミュレーター訓練に向かうのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第三話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/16 09:47
「ハァ…なんでまたこんな事になるのかな…」


溜め息を吐きながら、更衣室で斯衛軍の強化装備(黒)を装備するタケル


「…まあ、先生から色々話も聞けたし…良しとするか…」


香月博士から色々な話を教えて貰った

まずは『鑑純夏』の処遇
現在鑑純夏を監視をしながら保護していた香月博士
この世界の白銀武もそうだったが、今日白銀武の姿が消えたと聞いた時は焦ったらしいが、先程『ループした白銀武』に再会して納得したらしい(どうやら『この世界の白銀武』と『ループした白銀武』が同化したのが原因らしい)

鑑純夏については、ループする以前から『人間として生きた状態で00ユニット』として起動出来るかを研究してたらしい
ループしてからも研究を続け、合計20年以上の歳月の結果、『可能』になった
現在、強化装備にも似た装備を00ユニットの適合者が着用する事で『00ユニット』として起動出来るように着々と進んでるらしい
それを教えてくれた時に香月博士がーー
『鑑純夏を幸せにしたいんでしょ?
アンタには『二度目の世界』でオルタネイティヴ4の完遂やオリジナルハイヴを攻略してもらったからね…その『ご褒美』よ』
香月博士なりの『優しさ』ーー
それを受けたタケルは香月博士の手を握り、涙を流しながら感謝した

「ホンット…先生には適わないな…」
思い出して、思わず再び泣きそうになったが、堪えるタケル
心の底から香月博士に感謝していた


次に光州作戦に参加したA-01連隊の事

現在、連隊の数はやはり減っている状態だが、少なくとも『二個中隊』は健在してるらしい

まずは、タケルも知っている『ヴァルキリーズ』
現在は8名と少ないが、伊隅大尉を隊長として健在らしい
次に『オーディン隊』
メンバーこそ4名少ないが、実は連隊の中で一番強い中隊だったらしいが、厳しい特殊任務や戦闘で減り続け、結果『二度目の世界』では『明星作戦』のG弾で全員死亡したらしい
メンバーの補強も考えたが、単に人数を揃えるだけでは駄目なため、徐々に減っていく状態だったらしい
だがーー95年、『霞』を貰う際、他の『第三計画』のメンバーを追加したらしい
香月博士の言う事によるとーーー

『アンタ、『紅の姉妹』スカーレット・ツインって聞いた事ある?
実はね、『二度目の世界』で凄腕の衛士の噂が流れててね~…
実は霞と同じ『第三計画』の奴らでね…リーディングしながら邪魔な『敵』を始末する『死神』みたいな事させられてたの…
それで、過去にループした私は、霞の他にこの『紅の姉妹』スカーレット・ツインも引き抜いたのよ
…勿論あの手この手使ってね…
あっ、この子達は光州作戦には参加してないわ
今頃基地で訓練しながらお留守番してるわよーーーって白銀…アンタ何震えているのよ?』

『あの手この手』と言っていた時の香月博士の表情を見て思わず恐怖して、部屋の隅っこでガクガクブルブルと震えていたタケル
余りにもーーーー素敵な『笑顔』で黒いオーラを放っていたのだ…
タケルじゃなくても、泣きながら逃げる事は間違いない

「…あん時の先生の笑顔…怖がったなぁ…」

ブルブルと震えながら更衣室から出るタケル


「さて…と…頑張りますか…」


カツカツと足音を響かせながらシミュレーターデッキの中に入り、シミュレーター訓練の準備をする



「先生、準備完了です
何時でも良いですよ」

『そう、わかったわ
月詠中尉も準備完了してるし…始めるわよ』


「ハイ!!」
『了解』

タケルと真耶中尉の返答を聞いてからシミュレーター訓練を開始する
「…ステージは…市街地か…
機体は…斯衛軍だけあって瑞鶴か…」


辺りにはビルなどの建物が沢山ある市街地に設定されたステージ
機体も乗った事の無い瑞鶴での搭乗に少しぎこちなさを感じるタケル
(仕方ないか…吹雪や不知火に慣れすぎてるせいもあるな…)

この辺は『慣れるしかない』と気持ちを切り替えるタケル

そしてーーーーー
離れた場所の真耶中尉はーーーー
「天才衛士…か…
その実力…見せて貰うぞ…白銀!!」
鋭い眼をしながら、冷静にタケルの動きを待つ真耶中尉
するとーーーーー
「むっ…来たな…」

前方にタケルの機体を発見
長刀を装備し、待ち構える真耶中尉
「奇妙な動きだな…連続噴射跳躍だと…!?」

姿を現したタケルは、目の前のビルを連続噴射跳躍でビルの屋上に登り、屋上を左右に移動するように噴射跳躍を繰り返す

「何を誘ってる…?」
まるで『撃って来い』と挑発するように噴射跳躍を繰り返しながら接近するタケル

「…良いだろう…
お望み通りに蜂の巣にしてやる」


武器を長刀から突撃砲に変え、挑発するタケルを狙撃する

「来たっ!!」

『待ってました』とばかりに、屋上からの移動を止めて、地上に降りて匍匐飛行で接近するタケル

「フン、それがどうしたっ!!」

地上に降りたタケルを狙撃する真耶中尉
しかしーーーーこの時、真耶中尉を始めとして、モニターで眺めてる斉御司大佐と悠陽殿下は驚愕する!!

『『なっ!!?』』

「なん…だと…!?」

狙撃した弾丸を横へ回避し、ビルを蹴り上げて、『倒立反転』しながら突撃砲で反撃するタケル
そのあと、着地と同時にしゃがみながら左右に水平噴射跳躍で移動しながら接近して来る!!

「クッ…なんだこの動きは…!?」

タケルの突撃砲の弾を回避しながら長刀に再び切り替える真耶中尉
タケルの機動に戸惑いながらも斬り込む!!

「喰らうかっ!!」
再び噴射跳躍で攻撃を回避するタケル
再び倒立反転しながら背後から攻撃をする時にーーー
「させるかっ!!」

倒立反撃している最中に斬撃を入れる真耶中尉
普通ならば、これで『勝負あり』だがーーー

「おっと危ない」
「なーーーーーっ!?」

反転途中からの回避
噴射跳躍で方向転換し、斬撃した長刀の峰部分に手を当てて回避する

回避した後突撃砲で狙撃し、真耶中尉との間合いを少し離し、タケルも長刀に切り替えると同時に再び噴射跳躍でビルを利用した三角飛びをして、真耶中尉に斬り込む!!

「グゥ…!?
なんだ…この動きは…!?」

全てがデタラメーーーー
自分が見た事も体験した事も無い事を、白銀武は平然としてやっている
本当に同じ機体かと思う程、動きが違う
ーー正に『翼』を得た状態になり、タケルの瑞鶴はアクロバットを繰り返しながら、真耶中尉の瑞鶴を追い込む


「ーーーー惑わされるな、真耶」

しかし真耶中尉も黙ってはいない
静かに動きを見ながら…ただ、ジッと長刀を構える…
確かに凄い機動だーーーー
それは認めようーーーー
だが、攻撃する術は同じ
狙撃さえ、気をつければ、接近戦は我に勝機有り
我が間合いに飛び込めば、一閃の下に斬り裂くのみ


「やべっ…」

タケルも真耶中尉の行動に気づき、警戒する

今、真耶中尉の居る場所は、交差点のかなり広い場所で周りに目立った障害物は無い
それは、タケルの『変態機動(後に夕呼が命名)』が制限され、尚且つ狙撃に関しても、回避し易い場所
皮肉にも、『狙われ易い』広場が『回避し易い』場所に姿を変える
本来ならば、建物の影から狙撃という手もあったが、今回は『XM3の有効性』も見せる意味もある為、却下
大体にして、タケルの性格上その戦闘方法は無い

仕留めるならば、接近戦がアクロバットをしながらの狙撃かのどちらか
しかし、タケルの取った手段はーーーー
「ウオォォォッ!!」

「ほう…接近戦か…良い覚悟だ…」


長刀を装備しながらの接近戦を選んだタケル
真耶中尉もタケルの攻撃に備えて『居合い』の構えをしながら集中する



「ハァァァッ!!」
「フンッ!!」


タケルが攻撃をする直前ーーーー
真耶中尉の一閃がタケルの瑞鶴の胴を斬り裂かんと放たれていた

「やべぇっ!!」
咄嗟に回避行動に切り替えるタケル
真耶中尉の一閃の『下』を潜り抜けるように機体を倒して回避するが、その際、タケルの長刀が弾かれて、飛ばされる
「負けるかよっ!!」
「何っ!?」
タケルは長刀を弾かれると同時に、収納していた短刀を取り出して、斬撃を放っていた右腕を斬り込む!!


「チィッ!!」
「うわっ!?」
しかし、右腕を切り落とされる寸前で、強引に蹴りを放ち、タケルを弾いた長刀の方へと蹴り飛ばす



「やるな…今のは危なかったぞ…」

「いたた…あ~あ…背中の担架が壊れたか…」


先程の蹴りでタケル機体の担架が破壊される
それと同時に突撃砲も一緒に失う
タケルに残された武器は、先程弾かれた長刀が運良くそばに有った為回収
短刀は残り一本
先程の短刀は蹴られた際に落としてしまった
(さて…どうする…)

攻撃する手段は接近戦のみしか許されてない



(接近戦か……………待てよ?)
この時、タケルにある『奇策』が浮かんできた

「よぉし…この手で行こうか…」
フッフッフッ…と少し黒くなるタケル
不気味な笑みを浮かべてレバーを倒し、突撃する


「玉砕覚悟か…?」


最早勝負は見えたと判断する真耶中尉は再び居合いの構えをとる



「ウオォォォッ!!」

再び長刀を構えながら突撃するタケル
「…喰らえ!!」

そして、再び放たれる居合いの一閃ーーーー!!




「ターーックル!!!」
「はっ…?
うわあぁぁぁっ!!?」
突然の奇襲攻撃
真耶中尉の居合いの一閃を長刀でガードし、その隙を突いて、柔道で言う『双手刈り』をして真耶機を背中から転倒させる!!

「フッフッフッ…長刀を離しましたね…?」

「しっ、しまった!?」

「転倒の際に『受け身』をとりますからね~♪
もう…怖い居合い斬りは出来ませんよ…?」

ズルズルと引きずりながら後退して長刀から離れるタケル
しかも、オープンチャンネルで通信しながら恐怖心を煽る
そしてーーーー
「チィィタァァァ……ボム!!!」
「キャアァァァッ!!!!」

何を思ったか、真耶機にプロレス技の『パワーボム』を炸裂させる
その際、真耶機の担架と頭部を破損させる

タケルの案ーーーー
それは、『元の世界』でやりこんでいたゲーム…
『銅拳3』を思い出した事
そして、使い手のひとつである『チーターマスクマン』を思い出し、プロレス技で奇襲攻撃しようと考えたのだ

この世界の者ならば…まさか戦術機でプロレス技をしようと思う奴は…彩峰慧以外には居ないだろう…


正に『常識』を打ち破った行動に真耶中尉は虚を突かれ、奇襲攻撃は成功する!!



「さぁ~て…トドメだっ!!」

「やめろ、貴様…うわあぁぁぁっ!!!」


真耶機の背中に回り込んで、腰を抱えるように持ちーーーーーー
「フィニッシュッ!!!」
「ガハッ!!!」


見事な『バックドロップ』を決めるタケル
頭部は愚か、胸部もかなり潰れる判定を貰い戦闘不能になる真耶機

「…えーと…?」

「………うーん…これは…」

「アッハッハッハッハッ♪
さ…流石は白銀…ね…」
あまりの出来事に困惑する悠陽殿下
なんともビミョーな決着で表現が出来ないで困っている斉御司大佐
お腹を抱えながら爆笑する香月博士

後に真耶中尉が『貴様………私に無様な敗北を…許せんっ!!』とブチ切られ、お仕置きにタケルをマウンドポジションにとり、愛のベア攻撃にフルボッコされるのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第三話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/14 17:08
「真耶さん…其処までにしないと…『白銀』が本当に死んでしまいますよ…?」

「ハァ…ハァ…
ハッ…殿下が望むのであれば…」

流石にこれ以上はマズイと判断した悠陽殿下は真耶中尉を止める
周りに人がいた為『タケル様』ではなく『白銀』と呼び変える
タケルはというと…屍と化していた…
「殿下や斉御司様の目の前で…無様な敗北を見せてしまった…」
「けど、あれは月詠中尉が『悪い』わよ?」
「何…?」
落ち込んでいた真耶中尉に追い討ちをかけるように香月博士が語ってくる
「先程の白銀の奇襲攻撃だけど…あれは別に白銀は悪くはないわよ?
むしろ『油断』していた真耶中尉が悪いわ
だって、戦いはいつ何時何が起きるかはわからないわ…そしてそれは戦術機の戦闘方法も同じ事よ?」

「ぐっ…」

香月博士の言葉に反論出来ない真耶中尉
香月博士の言っている事がわかるからだ

戦術機の戦闘方法が『銃火器類で撃つか』『刀剣類で斬るか』の2つだけではない
場合によっては殴ったり、先程の真耶中尉のように蹴ったりもする
戦術機は人間が出来る行動は全て出来、人間が出来ない事を戦術機は出来るのだ…勿論『投げ技』や『関節技』だって出来る
ただ、『やらないだけ』だ
戦術機は基本、BETAとの戦闘を基本とする
時には人間同士の戦いで、戦術機とも戦う事もある
だが、『素手による打撃』や『投げ技』や『関節技』は確かにBETAには有効ではない
しかし、戦術機にはどうだろう?

人間の兵士だって格闘訓練はする
幾ら銃火器での戦闘が最も有効とはいえ、弾数には制限がある
接近戦に持ち込めば、銃火器も場合によっては邪魔になる事もある
接近戦して投げ技で動きを鈍らせたりする事も出来る
締め技で窒息死や首の骨を折る事も出来る
関節技に持ち込んで折れば、戦力を削ぐ事も出来るし、場合によっては『殺害』しないで『捕獲』する事も出来るのだ
…そして、それは戦術機にも言える事
投げ技で地面に叩き落とす事が出来れば、機体に大きな損傷を与える事も出来る
関節技で手足を折れば戦力を削ぐ事も中で操縦する衛士を捕獲する事も出来るのだ
ただ、実戦でする事は無いだけ
相手は大軍で攻めて来るから実用的では無いからた
「…………」
「今回のアナタの敗因は勝手な思い込みによる『油断』よ
そして、白銀の奇襲攻撃は成功し、アナタを撃破する事に繋がったわ
これが本当の『殺し合い』ならば『捕獲』されてるか………死んでるわよ?」

「クッ…!!」
流石にグウの音も言えない程香月博士に正論を言われてKOされる真耶中尉
『恥ずかしい気持ちは分からんでもないけどね~♪』と呟きながらイイ感じに笑顔になる香月博士である…うん、あくまだ

「月詠中尉…反論はあるかな?」

「…ありません
つい…恥ずかしい場面を殿下と斉御司様に見せて、頭に血が上ってました…」
斉御司大佐の問いに素直に答える真耶中尉…
香月博士に諭されて、血の気がかなり下がったが……既に遅かった
「これは『罰』を与えなければいけませんね
なんせ勝利者の白銀に八つ当たりでボコボコにしてるんだから~♪」
イイ感じに笑顔で『でびるふぇいす』になる香月博士
弱みをヅケヅケと突かれて真耶中尉のライフポイントがゴリゴリと削られていく

そしてーーーー香月博士が下した『罰』はーーー

「月詠真耶中尉、罰として白銀の住居場所を『アナタの家』にしてもらうわ
期間は2001年頃に白銀を国連軍に転属するまでよ?
それまで白銀と『同棲』して貰うわよ~♪」

あくまの宣告を受けてパタリと倒れる真耶中尉
「そ…そんな事…受け入れられるか…」

「香月博士…それは幾ら何でも…」

流石にマズイと感じた悠陽殿下だがーーーーー

「殿下…ちょっとお耳を…」

「ハイ?」

ゴニョゴニョ…と殿下の耳元で呟く香月博士…
次第に悠陽殿下の表情が明るくなり、最終的に笑顔になるほどだ
「真耶さん」

「ハイ…」
「香月博士の提案した罰…私も賛同致しますわ♪」
『バタリ』
「つ、月詠中尉っ!?」
ライフポイントが0になり、バタリと気を失い倒れる真耶中尉…
そんな倒れた真耶中尉を心配してか、心配しながら抱える斉御司大佐

ーーーーちなみに、悠陽殿下が香月博士から聞いた話はーーーー

『殿下…私の目から見ても白銀は『ウブ』な奴でどうしようも無い程の『鈍感』です…
このままでは、殿下の好意も気付く事も無く、尚且つ殿下のアタックからも逃げてしまい無念する事になります…
それを避ける為に月詠中尉と『同棲』させる事で『乙女心』や『好意』に気付き易くなるように『荒治療』をする必要がありますわ…
あとは…殿下が『一夫多妻制』でも法律を改正すれば、月詠中尉とも衝突する事もありませんし…
上手くいけば、妹君の御剣冥夜殿との『姉妹としての生活』も可能になるかも知れません』

ーーーそのあくまの囁きに悠陽殿下は陥落したのであった
(フフフ…恋愛原子核か……面白そうだから、まりもにも参加してもらおうかしら♪)

以前聞いた『恋愛原子核』という言葉を思い出す香月博士…
どうやら、タケルをハーレムにしたいらしい……

「……さて、斉御司大佐、先程の白銀の機動特性はどうでしたか?」

「う、うむ……確かに驚くべき機動特性だ…
あのような機動…思いつく事すらしなかった…」
「そうですか、なによりです
…ところで、もし…あの機動が誰にでも出来るようになったら……どうします?」

「それは戦力も生存率も…………………まさか…」
この時、香月博士の『企み』に気付く斉御司大佐
「そうですわ、斉御司大佐
あれ以上の機動を誰にでも可能にするのがーーーー『XM3』ですわ
『奇跡のOS』とまで呼ばれ、世界中の衛士の死亡率を半分にまで減らし、幾多のハイヴを攻略に貢献した新OS…それがXM3ですわ」
「ーーーーーッ!!!」

話に聞いていたXM3が予想以上の効果になる事を知り、ゴクリと息を呑む斉御司大佐
それが可能ならばーーー
日本の…いや世界中の衛士達の命を救う事になる

そして、日本を侵略せんとするBETAや米軍からも守る事も大幅に可能になったのだ

「殿下…そして斉御司大佐…
帝国軍…そして極東国連軍による共同開発を提案しますわ
それはXM3に限らず、様々な部門に関しての共同開発を意味します」
「「!!!!」」
香月博士の言葉に衝撃が走る悠陽殿下と斉御司大佐

「国連軍の開発したデータは問題の無いモノであれば、そちらに提出します
そして、それらの開発データを見て『純国産製』を飛躍させるのも良し
ですが、代わりにそちらの開発したデータを問題の無いモノで宜しいので提出してください
場合によっては、それらを改良したモノなどや要求して来たモノを製作し、そちらに渡す事もありますのでご了承下さい」

「…………」
腕を組み考え込む斉御司大佐…
確かに美味しい話だ
勿論向こうも『何か』を狙っての事だろうが、それにしても、此方側にすれば良い話になる

ーー今問題になっている『不知火の改良』の問題についても、恐らくは大幅に改善する可能があるだろう
国連軍から寄越してくる開発データを元にして純国産製の底上げに貢献すれば、飛躍的に上がる可能もあるのだ
そうすれば『純国産製の戦術機』も可能になるし、場合によっては頭の固い連中を説得させる事も可能なのかも知れない
…いや、先程の機動特性を見て作られるXM3を創り、見せつければ本当に説得させる事が出来るかもしれない
それ程インパクトのあるモノなのだ…
「…香月博士…貴殿の狙いは何なのだ…?」
香月博士にソレを問いただすとーーーーー
「政治的な事を言うならば…米国の計画を木っ端微塵に粉砕する事
そしてーー個人的の意見を言うならーーーーー」
一旦目を閉じて言葉を止める
そして再び目を開くと同時にーーーー純粋な笑顔で答える
「『ガキ臭い英雄さん』の望みを叶える為に後押しする為ですわ」
クサいセリフを口にしながらも、思わず笑ってしまう香月博士
そして心の中で呟く
(私もーーーーー誰かさんのおかげで甘くなったわね)
そんな事を考えながら少し苦笑してしまう香月博士
(まりもーーー
今度は死なせないわよーーー)
二度と友を死なせない為に心に誓う
そしてーーーーー

「斉御司殿…」
「…仰せのままに…」
全ての決断を悠陽殿下に託す斉御司大佐
斉御司大佐の考えも悠陽殿下と同じようだ
「…香月博士…そなたの提案…お受け致しますわ…」
「ハッ、有り難き幸せで御座います…」


こうして、この日帝国軍と極東国連軍との共同開発計画が始まったのである…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第四話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/19 22:45
1998年1月12日
京都・帝都ーーーー

「着いたぞ、白銀」
「ハア…予想はしてだけど…すげぇ」


京都・帝都に到着したタケルと真耶
仙台・第二帝都城で職務をしていた悠陽殿下の護衛をしながら京都・帝都城に帰ってきた
その際、護衛の任を解かれ、今日は休日となった二人

そして今、到着した場所は『月詠邸』だった

「これでもか……ってぐらい…無駄にデカいな…」

「失礼な
それに我が月詠家は五摂家に近い程位の高い名家なのだ
その存在を示す意味もあって、このように大きいのだ」

「そっかぁ~…けど、一般人のオレには理解出来ないかも…」


「仕方ない事だ
貴様と頭の固い連中の考えでは、このように違うのだ」


「はうあうあ~…
オレ…ここの生活に慣れる事出来るのかな…」


これからここが『住居』となる為、少し不安気味のタケル
緊張しながら月詠邸の中に入る



「ーーーーお帰りなさいませ、真耶様」


待ち構えていたのは、真耶中尉の帰りを待っていた若い侍従
玄関で我が主に頭を下げて礼をし、真耶中尉の荷物を持つ
「白銀、この者が我が家の侍従の『月島やちる』だ
この家のわからない事があったら、聞くと良い」

「あっ、ハイ
白銀武です、これから御世話になります
オレの事は『白銀』でも『タケル』でも呼び捨てで結構ですよ」

「わかりました、タケルさん
呼び捨ては…ちょっと苦手なので『さん付け』しますね」


お互いに軽い自己紹介をするタケルとやちる


「やちる、白銀の部屋の用意は出来たか?」

「ハイ、ご要望通りに『一番狭い部屋』をご用意致しました」


実は『住居』が決まった際、真耶に『デカくない部屋』を頼んでいたタケル
理由は簡単…
『広過ぎたら落ち着かない』だそうだ




「此方です、タケルさん」

「うわぁ…」


やちるの案内に着いて行くタケルと真耶
すると『タタミ30畳程』の広い部屋に到着する

「…ここ…広いね…」

「これでも一番『小さい部屋』ですよ?
真耶様の部屋なんて『50畳』はありますよ?」

「こ、コラやちるっ!?」

真耶の部屋の大きさを暴露するやちる
思わず慌ててしまう真耶


「ゴホン…白銀、貴様の身分が先程決まったぞ」

「ハイ」


「貴様は明日から『帝国斯衛軍第17大隊』の第1中隊に所属される事になった
階級は中尉、貴様の中隊の隊長は大隊の隊長でもある『九條椿少佐』だ
名前から聞いてわかる通り、九條様は五摂家の一人だ
21歳という若いでありながらも、少佐になった御方だ、失礼の無いようにするのだぞ」


「ハッ!!」


タケルの身分と所属が公開される
それに伴い、注意事項を説明されて、真耶に敬礼するタケル


「そうだ…先程光州作戦の報が入ってな…
現在退却戦に異常は無しだそうだ」


「ありがとうございます」

光州作戦の報告を教えてもらい、少しホッとするタケル


「さてと…これから一休みをしたら街を案内するが、何処に寄りたい?」

「まずは…服が欲しいな…」

現在着ている斯衛軍の軍服以外には、この世界に渡った時の白陵学園の制服しか無い為、衣服が欲しかったタケル


「そうだな…わかった、連れてってやる」

「ありがとうございます」

真耶に服屋に案内してもらう事に感謝する

「ヤレヤレ…私は『赤』の家系だぞ?
その私に『運転手』をさせるのは貴様ぐらいだぞ?」

「アレ、家の運転手って居ないんですか?」

「…一応居るが、既に出てる
それに…私は自分で運転したい性分でな…よほどの事で無い限り、運転手を使わん」

「成る程…」

『あはは~…』と苦笑いしながら複雑な気持ちになるタケル


それから小休止をした後に街へ買い物に向かうタケルと真耶

「ふぅ…結構買ったなぁ…」

服や下着を大量に購入したタケル
『給料入ったら返します』という事で真耶中尉の支払いになった
(うーん…カッコワリィな…今度お礼の品でも買っておくか…)

ちょっとお礼をしようと考えていたタケルだが、後に騒ぎになる事はまだ知らない

「随分と早い買い物だな…
量の割りには一時間以内とは…」

「…俺からしたら、女性が時間かけ過ぎです…
ひとつの買い物に数時間って…良くそんな長い時間かけれますね…?」


『そうか?』と返答する真耶に軽く溜め息を吐くタケル


『アラ、貴女は月詠真耶中尉?』

「えっ……貴女様はッ!?」


すると、背後から声を掛けられ振り向くと、長い黒髪をした綺麗な女性がいた


「これは『九條様』!!!
気がつかなくてスミマセンでしたっ!!」


「良いのよ、今日は休日で暫く振りのプライベートを楽しんでるのだから」


ビシッと敬礼する真耶
タケルも慌てて敬礼するが、その姿を見られてクスクス笑う九條


「君は…確か白銀武中尉ね
私は貴方の上官になる、帝国斯衛軍第17大隊所属の『九條椿少佐』よ
私の中隊に入るとは…ついて無いわね♪」

「ハッ?」


いきなり『運が無い』と言われてポカンとするタケル


「私の中隊の副隊長はね…私の妹に当たる『九條沙耶大尉』が居るの
沙耶は規律に厳しいから大変よ」


「丁度良い機会だ、白銀…その貴様の『馴れ馴れしい』性格を直して貰うと良い」


「酷っ!?」


真耶にいじくられるタケル
その姿を見て再びクスクスと笑う椿


「白銀中尉、貴方の事は聞いてるわ
特殊任務で極東国連軍と帝国軍の共同開発計画に参加してると聞いてます
そして衛士としても優秀で、あの『極東の魔女』とまで呼ばれてる香月夕呼博士に『天才衛士』と呼ばれてるみたいですね」

「め、滅相も御座いませんっ!?」


なんかベタ誉めされてる事に戸惑うタケル
心の中で『先生の仕業だな…』と悟る



「ところで……白銀中尉」


「なっ、なんでしょうか!?」


ジロジロと椿に見られて戸惑うタケル



「貴方…………………
月詠真耶中尉の……『彼氏』?
それとも『婚約者』?」

「「………………………………………………………………………ハイ?」」


椿の質問にフリーズするタケルと真耶
そして、早くに復活するタケル
「ななななななな…………なんですか、イキナリッ!?」

「えっ?
だって、月詠真耶中尉の家に『同棲』してるのでしょう?
『彼氏』とか『婚約者』って噂が我が大隊の中で広まってますよ?」

「だだだ…誰から聞きました?」

復活した真耶が椿に質問するとーーーー


「私は沙耶からだけど…
噂を流したのは誰かは知らないわ」


「…間違い無く先生だ……」


噂を流した人物を断定したタケル
タケルの頭の中では、香月博士がステキな笑みを浮かべながら親指をビシッと立ててる姿を想像する
そして、後に犯人が誰か分かったが、タケルの予想通り香月博士が噂を流した張本人だったりする
「アラ、違うの?」
「違います……ただの居候です」
「残念だなぁ…明日白銀中尉の『お祝い』の為に買い物したのに……」

「ええっ!?」

椿の一言に驚愕するタケルと真耶
『冗談よ冗談♪』と二人をからかう椿

「とりあえず私はこれから買い物の続きがあるからお邪魔するわ
明日から頑張りましょう、白銀中尉」

「ハ、ハイ…」


手を振りながら椿と別れるタケル達…


「月詠中尉…帰りませんか……?」

「……………そうだな…帰ろう」


車に乗って月詠邸に帰る二人…
家に帰ってからも、ずーん…と落ち込んでいた二人だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第四話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/15 20:41
「お帰りなさい…………どうなさいましたか、お二方?」

玄関で二人の帰りを迎えるやちるだが、うなだれてるタケルと真耶の姿を見て『どうしたのかしら?』と首を横に傾げる


「違う意味で疲れた……」

「ああ……そうだな…」

先程の『婚約者事件』でどっと疲れが襲ってきた二人

「白銀…貴様が香月博士の事を言った意味が…今になって……よ~くわかったぞ…」

「そうですか……
けどまだ甘いですよ…
このまま終わらせる先生な訳が無いですから…」

「……………………………そうか…」

ガクリと力が抜ける真耶
その身をもって、香月博士の『イタズラ』の恐ろしさを理解する

「白銀…心の底から尊敬する…
このような事を毎度被害にあっても、香月博士に着いて行ける貴様を凄いと思う…」

「ハハハ…慣れましたから…ハァ…」


深い溜め息を吐くタケル
事情を知らないやちるは『何の事でしょうか…?』と益々困惑する


「月詠中尉、スミマセンが電話を貸して下さい」

「ん…良いが、何処にかけるのだ?」

「自分ちですよ
多分純夏とか親が心配してるだろうし……
先生からも許可は貰ってますから大丈夫ですよ」

「む…そうか、わかった
やちる、電話の場所まで案内してやってくれ」

「わかりました
ささっ、此方ですタケルさん」


やちるに電話機の場所まで案内して貰う


「ありがとうございます、やちるさん」


「はい、それではごゆっくり…」


電話機の場所まで案内すると、真耶の場所まで戻るやちる



「さてと…」


ポチポチと自分の家の番号を押していくタケル…




するとーーー


『…モシモシ………』

「純夏か?」

『タケルちゃん!?
今何処に居るのっ!?』

受話器を取ったのは純夏で、タケルの声を聴いた途端元気が出て来る


「今京都の帝都だ」

『え、ええぇぇぇっ!?
な…なんでまた京都に……?』

「いや、ちょっと厄介事に巻き込まれてな…
その際、斯衛軍の人に助けられたんだ」

『嘘は言ってないぞ…』と心の中で呟くタケル…
けどやはり、純夏に対して罪悪感があった


『もっ、もう大丈夫なの…?』

「大丈夫だ
けど、ちょっと機密事項の事知ってしまったから、そのまま斯衛軍に入隊する事になっちまった」
『ええぇぇぇっ!?
けどタケルちゃんまだ16歳になってないじゃん!?』

「まあな、だから訓練兵として学んでから斯衛軍に入る事になってるんだ
だから、暫くは帰れないんだ」

『そ、そんなぁ…』

帰れない事が知ると、テンションが下がる純夏


「安心しろって…
任務とかで近くへ来たら、寄るからよ」

『…うん、手紙や電話も頂戴ね…』


「わかった、だから元気だせよ、元気無い純夏なんて『純夏らしく無い』ぞ?」


『…うんっ!!』


少し元気を取り戻した純夏にホッとするタケル


「そういえば、オヤジ達は俺が居なくなった事知ってるのか?」


『うん…知ってるよ
おばさんなんて、凄い心配してたよ?』

「そうか…それで、オヤジと母さんは今何処に?」

『今は基地の『帝国陸軍白陵基地』に戻ってるよ?』


「白陵基地に?(オヤジ達…帝国軍だったのか…)」


純夏から重要な情報を得て、少し考えるタケル

「そうか…わかった
オヤジ達にはオレが元気にしてる事言ってくれな」

『うん、わかったよ
…元気でね、タケルちゃん』


「ああ、純夏もな」


受話器を置いて電話を切るタケル
そして、直ぐに電話をかけ直す


『こちら『帝国陸軍白陵基地』ですが…』

「スミマセン、そちらにいる香月博士に連絡をしたいのですが…」

『お名前を教えて下さい』


「帝国斯衛軍の白銀武中尉です」


『わかりました、暫くお待ち下さい』



帝国陸軍白陵基地に居る香月博士に連絡を入れるタケル…
すると、香月博士に電話が繋がる



『モシモシ、何の用?』

「先生、スミマセンが…」

タケルは香月博士に事情を話す…


『成る程…アンタの両親がこの基地に所属してるのね…』

「ハイ…それで先生に話が有るんですけど…」


『何?』


「オヤジ達に『説明』してくれませんか…?」

『…成る程…そういう事ね…』


タケルの言いたい事を悟る香月博士


『確かにこのままでいたら怪しまれるし、アンタに逢っても怪しまれる…
会っても会わなくても何かしらと厄介事になる可能性があるか…』

「ハイ、ですから…オヤジ達には説明して欲しいんです」


『…それは『此方側』に入れるって事よね…?』


「…ハイ」


言葉を重くしながらも返答を返すタケル


『…そうね、今は不安要素を増やしたくは無いわ…
こちらから説明しておくけど…その時はアンタも立ち会いなさい
じゃないと説明が出来ないわ』


「わかりました
ありがとうございます、先生」


礼を言うタケルだが、『その代わり、借り一つよ?』と不安な一言を言う香月博士


「そういえば…先生…まだ変な噂流しましたね…」


『フフフッ…何の事かしらねぇ~♪』


『このあくまめっ!!』と心の中で叫ぶタケル
しかし、そんな心の叫びは届かないまま『ぢゃあねぇ~♪』と通話を切られる


「………先生め」


静かに受話器を置くタケル…

「終わったようだな」

「あ、ありがとうございます」


すると、私服に着替えた真耶が近づいて来た


「これから食事になるから、着替えたら来ると良い」


「わかりました」


先程教えて貰った部屋に移動して、買ったばかりの私服に着替えるタケル


「これからだな…頑張るぞっ!!」


窓から見える夕陽に決意を決めるタケルだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第五話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/17 02:09
1998年・1月13日
帝都・シミュレータールーム
椿side

「何だコレは…!?」


目の前に映る光景に驚愕する私
私の自慢の中隊のみんなが、悉く撃墜されていく光景にただ唖然とするしかなかった
相手は一機
しかも今日から配属になったばかりの新人一人にだ

「天才衛士…」
その言葉の意味を示すように、見た事の無い機動を操り、我々の予想を覆す行動ばかりをする事に言葉を失う私

白銀武中尉ーーーー
急遽我が大隊の一員になる事になり、少し驚きはしたものの、正直有り難い事だった


時折部隊の中から帝国軍に転属や一時的に所属し、大陸の戦いで散って帰らずの身となり、私の指揮する大隊の第一中隊は人手がやや不足していた

他の中隊も減ってはいたが、まだ一中隊に一人程度
しかし、私の指揮する第一中隊は三人も失い、正直困っていた
補充要員を頼んでも今の時期は居る筈もなく、補充要員は諦めていた
すると、一昨日突然帝国斯衛軍大将・紅蓮大将直々の報告で補充要員一人が増えるとの事だった
ポジションは突撃前衛、一番欲しいポジションが来た事もあり、正直嬉しかった
噂を聞けば、あの月詠真耶中尉をも撃墜させる程の腕前と聞き、期待してたと同時に、その月詠真耶中尉の『彼氏』とも『婚約者』という噂も聞き、少し驚く


そして昨日、休日で街に出て買い物を楽しんでいると、噂の月詠真耶中尉が男性と一緒に買い物をしていた
男性の方は誰かは直ぐに気づいた
一昨日に書類上の写真で見た男性・白銀武中尉
声をかけて話してみると、斯衛軍には居ないタイプの人物だった
悪く言えば、馴れ馴れしい
良く言えば、周りの人達を惹きつけ易い雰囲気を持つ人物だった
噂の『婚約者』の話をすると、二人して固まり、否定する
どうやらこの噂は違ったらしい
そして今日、白銀武中尉の入隊を歓迎し、同時に『婚約者』ネタでいじくり、楽しい一時になった
あの規律に厳しい義妹の沙耶もその時は楽しそうに笑ってた程だ
ウン、彼は入隊して正解だった
そして、歓迎の意味を込めて、『シミュレーター訓練での歓迎』をしようとの提案があり、採用
白銀武中尉は話を聞き、驚いて落ち込んでいた

内容は簡単…というか、可哀想な内容
『1対9』の対戦だった
流石に可哀想なので、私と沙耶は後方で見学
それでも7名もの相手が居るのだ…イジメみたいなものだと私は思っていた…
だがーーーー現実は違う
目の前の光景は、こちらの部隊が次々と撃破されるシーン
ある者は見た事の無いアクロバットで背後に廻られて、短刀の一突きで機関部を破壊
ある者は予想外な機動に翻弄されて、踏み台にされた後に突撃砲にて撃破される
そしてある者は、イキナリ『踵落とし』を喰らい、頭部を大破され、視界を封じられた所を長刀により撃破される


そして、気づいた時には、9機も居た此方の部隊は、私と沙耶の2機のみとなった



「油断したッ…!!」

そうだ、相手はあの月詠真耶中尉を撃破したと噂されてるのだ
噂が本当ならば、油断ならぬ相手に決まってる


「椿様…」

「沙耶…迎え討つわよ」

残りは我等二人のみ
相手は一機だけだが、我等精鋭の中隊の衛士7人がいとも簡単に撃破する程の兵(つわもの)
気を引き締めて、『敵』を討つ為に武器を構える

「ハァ…椿様…」
「何かしら、沙耶」

すると義妹の沙耶が声をかける
「また悪い『癖』が出ましたよ
顔が笑ってますよ」


「あら…」


悪い『癖』ーーーー
強者を見ると、挑みたくなる癖が出てたようだ

しかし…仕方無い事だ、目の前に未知の強さを持つ者が居るのだ…血が騒ぐなと言う方が無理だ



「済まない、血は抑る事は出来ない」

「わかってますよ」


やれやれ…と苦笑する沙耶
さあーー挑もうではないか


二人して長刀を装備して白銀中尉を迎え討つ


「アルファ2、行くぞっ!!」

「アルファ2、了解!!」

水平噴射跳躍をしながら突撃する私達


さあ…白銀中尉よーー
私を楽しませてくれーーーー!!!

sideend



「ふむぅ…なかなか面白い訓練ですな…紅蓮大将」


「ウム、確かに『天才衛士』に恥じない腕ですな、神野大将」


シミュレータールームのモニターを観戦する帝国斯衛軍の偉大なる武人
『三強』とまで呼ばれる二人がタケル達のシミュレーター訓練を見て関心する


「あの若者…なかなか筋が良い
まだ荒削りだが、独特の機動で九條少佐達を翻弄してるぞ」


「だが、椿様も沙耶殿も我が『無現鬼道流』を教えた愛弟子達
このまま終わる二人ではない」


「カカカッ!!
そうか…それではどちらが勝つか見守ろうぞっ!!」


「ウム」



三人の対戦に期待しながら観戦する紅蓮大将と神野大将だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第五話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/21 06:20
「いくぜっ!!
アアァァァッ!!」


水平噴射跳躍を全力噴射しながら、建物の間を飛び回るタケル
特攻隊のような突撃に戸惑いながらも、椿機と沙耶機で白銀機を迎え討つ。

「このような全力噴射では、我等の剣はかわす事など出来るかっ!!」

「我等が剣…無現鬼道流の剣を受けるがいいっ!!」

お互いの息を合わせながら、放つ長刀
しかも、ワザとに沙耶機の剣閃が僅かに遅れるようにタイミングをズラす。

「「ハアァアァァッ!!」」

2つの剣閃が×字に放たれ、白銀機を捉えるが----

「喰らうかよっ!!!」

機体を捻るように動かし、椿機の剣閃の上に回避し
沙耶機の剣閃を白銀機の長刀で防ぎ、沙耶機を蹴り飛ばす!!

「キャアァァァァッ!!」

「沙耶!?」

蹴り飛ばされた沙耶機に『一瞬』視線を向いてしまう椿
しかし…その『一瞬』が『油断』と判断した時には遅かった。


「オオォォォォッ!!」


「しま…ッ!!」


沙耶機を蹴り飛ばした白銀機は、其処から椿機に向かって噴射跳躍し、椿機の頭部を白銀機の左腕で鷲掴みにし、そばに有る建物に叩きつける。


「ヨシ、今---」
「させるかァァァァッ!!」

椿機に長刀でトドメを刺そうとすると、体制を立て直した沙耶機が、突撃砲で阻止する。


「危なっ!?
ふぅ…体制立て直すの早いよ…」

沙耶機による突撃砲の攻撃を、寸前で回避に成功するタケル
いつもとは、ちょっと違う戦い方で、相手の意表を突く事に成功する。

1対9と聞かされた当初は『入隊早々イジメ喰らってる?もしかして?』と嘆いたタケルだが、
冷静に考えてみると、『チャンス』だという事に気付く。

1対9という設定に油断している向こうの部隊
現に、隊長機と副隊長機は様子見という『油断』しまくっていると判断したタケルは、最初っから全力で戦闘をする事にした。

結果は大成功
他の機体はタケルの機動について行けず、翻弄され続け、結果『7機撃破』に繋がった。

残るは隊長機達二機のみ、
しかし、そう簡単には撃破は出来ないと考えていたタケルは『奇襲』をかける事にした。

まずは挑発気味な全力噴射での水平噴射跳躍をし、長刀を装備する白銀機
すると、タケルの予想通りに隊長機達は長刀装備をしながら、突撃してきた。

ここまでは想定通り、あとは自分が二人の攻撃を回避する事に専念するだけ。


ドキドキと緊張感を高め、その時を待つタケル
最初の攻撃をギリギリで回避するが、あとから来る沙耶機の回避は不可能と判断し、長刀で沙耶機の攻撃を防ぎ、蹴り飛ばす。

そして、沙耶機を蹴り飛ばしたお蔭で、全力噴射した勢いをある程度殺す事が出来、再び噴射跳躍をして椿機に突撃する。

椿機の頭部を鷲掴みにして、そのまま建物に叩きつけるタケル
そのままトドメを刺そうとしたが、予想以上に早い沙耶機の反撃に戸惑いながらも、回避するタケル。


(けど---
これで、隊長達は困惑しながら戦う事になる)

タケルの考えでは、普通の衛士達ではしない攻撃をする事で、本来するであろう行動を、ある程度『封じる』事に成功するタケル。

椿機と沙耶機の二機は、迂闊に行動をする訳にはいかず、消極的な戦い方になると踏まえたタケルは一気に勝負を決めに行く!!

---だが…
ここで、タケルの計画に『想定外』なる出来事が起きる

「フフッ…やるな…白銀中尉。
だが…このままで終わる私ではないぞっ!!!」

「え゛っ?」

なんと、あれだけの事をされたにも関わらず、積極的に突撃して来る椿機。
流石のタケルも、その行動に驚く。

(予想外だ…
…もしかして、椿隊長って、速瀬中尉や冥夜達みたいなタイプなのかっ!?)

『しまったぁぁ…』と少し後悔するタケル
もし、予想通りに、速瀬中尉・彩峰・冥夜みたいなタイプの人物ならば、逆に火が付き、動きが良くなる為、作戦が半分失敗になってしまった事に嘆くタケル。

(けど…どうやら、沙耶大尉には効いたようだな。)

そして、先程とは少し動きが悪くなった沙耶機には効いた事を悟るタケル。
事実、多少のフェイントを入れると、回避行動をとる沙耶機を見て、少し安心するタケル。

(良かったぁ…沙耶大尉も速瀬中尉みたいなタイプだったらヒヤヒヤしたぜ…)

(クッ…白銀中尉の策にかかったか…不覚!!)

タケルの作戦に気付く沙耶大尉だが、少しでもタケルの行動に不安感を植え付けられた為、未だに本来の戦いが出来ないでいた沙耶大尉。
自分の未熟さに反省しながら、椿機をサポートする


そして、椿機や沙耶機と鍔迫り合いを繰り返す際、タケルは『ある事』に気付く。


(あれ…?
もしかして冥夜と同じ剣術か…?)

多少の違いはあるものの、二人の長刀の扱いに冥夜の剣と被りだす。

(試してみるか…)


そう思ったタケルは、二人を『冥夜が二人いる』と思いながら、長刀で戦い続ける。


(…ヤッパリそうだ…
癖とかは違うけど、殆ど同じだ…
…という事は同じ流派なのか?)

冥夜と同じ無現鬼道流と悟るタケル
そして、冥夜との模擬戦を思い出しながら、椿機や沙耶機を相手に戦う。

(何故だ!?
最早我等の剣を見切ったとでも言うのかっ!?)

自分達の剣が悉く防がれ、回避される事に驚く沙耶だが…

「フフフッ…凄いわ…
まさか此処まで凄いとは…嬉しいわよ、白銀中尉ッ!!」

戦いに酔いしれてる椿
沙耶大尉とは真逆に士気が高まり、益々バトルジャンキーになってしまう。


そして---

「「ハアァアァァッ!!」」

白銀機と椿機がお互いに長刀での必殺の一撃を入れ、擦れ違う

『ブラヴォー1(白銀機)、左腕大破…戦闘続行
アルファ1(椿機)、機関部大破…機能停止』


「クッ…何だと…!?」

勝負は白銀機に軍配が上がる。
椿機の一撃は白銀機の左腕を両断するものの、白銀機は椿機の機関部を両断する。


普通ならば、剣の腕では椿少佐には適わない
だからこそ、タケルは再び『作戦』を考える。

まずは、お互いに必殺の一撃を入れる際、タケルは突撃するスピードを『抑え』ながら、椿機に突撃する

お互いの斬撃が、振り切り、相手の機体を切り裂く直前に、スピードを全開にするタケル。

タイミングが狂った椿機の一撃は、白銀機の左腕を斬り、胴体を切り裂く前に、自分の機体が切り裂かれてしまう結果になったのだ。


「椿様っ!?」

「あと一機のみ---」

椿機がやられた事に戸惑いながらも、白銀機を迎え討つ沙耶機

そして、白銀機も体制を直して突撃しようとしたその時----



「なっ!?」

突然白銀機がバランスを崩す
ガクリと左脚部の膝が曲がってしまう


「なっ、何!?
左脚部の関節部が壊れたっ!?」

突然左脚部の関節部が壊れた為、動きが止まってしまう白銀機


「隙アリッ!!」

「あ゛っ…」


その隙に白銀機に横薙の一閃を入れて、白銀機を撃破する沙耶大尉
そして大破判定を貰ったタケルは、機能停止になり、シミュレーター訓練は終了したのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第五話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/19 01:03
「あちゃー…やっちまった~…」


少し落ち込み、一人反省会をしながら、シミュレーターデッキから降りて来るタケル


『お前…やりやがったなっ!!』

『九條少佐を接近戦で討ち取るなんて…凄いな…』

『教えろっ!!
あの機動の仕方を私に教えてくれっ!!』

「えっ、ええぇぇぇっ!?」


デッキから降りて来たタケルを待っていたのは、先程までタケルがコテンパンに撃破した衛士達だった。

タケルの背中や肩を強く叩きながらも、タケルの強さを認め、仲間として認めてくれた。

(前の世界でのトライアルを思い出すな…)

あの時----
前の世界で自分を認めてくれた先任衛士達を思い出すタケル
この世界でも、先任衛士達に認めてもらい、嬉しい気持ちが溢れていた。

「むぅ…今回の勝負は負けを認めるわ…
けど、次は必ず勝ってみせるわっ!!」


ビシィッ!!…と宣戦布告を椿から受けるタケル
椿の負けず嫌いの姿を見て、『速瀬水月中尉』と重ねてしまう。

(うわぁ…ヤッパリ少佐って、速瀬中尉にそっくりだよ…)

『これから大変だな…』と予感するタケルだが、
その予想が思いっきり的中してしまう事はお約束だったりする。


「ふむ、諸君ご苦労様だ」

「ぐっ、紅蓮大将に…神野大将!?」

モニター室から現れた紅蓮大将と神野大将を見て驚愕する椿達
タケルはポカンと『ええぇ…嫌な予感が…』とダラダラと嫌な汗を流す。


実はタケルは、元の世界で、二人に出逢ってたりする。
冥夜と悠陽の紹介で、師である二人に出逢っていた。


その際、紅蓮が『ハァハァ…冥夜タン…』
神野が『悠陽タン…萌え…』…と怪しい呟きを漏らしながらハァハァしてた記憶があったりする。


しかし、武術に関しては、やはり冥夜と悠陽の師だけあって、チートを超える程強かった。

特に紅蓮は胸元からビームを放ったりする摩訶不思議な必殺技を使い、タケルの度肝を抜いた記憶は新しい。

そんな奇妙な記憶がある為、この世界の二人にイヤな予感がバリバリしていた。


「さて、白銀中尉よ…」

「ハッ、なんでしょうか?」

突如、声をかけてきた紅蓮大将に敬礼するタケル。


「貴殿の戦闘を見せて貰ったが…誠に天晴れだ」

「まぁ、最後の故障についてはヌシの失敗じゃが、
よくぞ椿様を討ち取ってみせた」


「あ、ありがとうございます」

伝説の二人に誉められて、敬礼しながら礼を言うタケル。


「此度の敗因は、無理な機動と…二度の蹴り技じゃな」

「うぐっ!?」


敗因をズバリ言われてしまい、ちょっと傷つく。

「ヌシの操作技術は確かに限りなく高いが、まだまだ荒削りじゃ
もう少し機体にダメージを蓄積せんように戦わんと、戦うたんびに機体を壊しては話にならん」

「あと、あの蹴り技だが…あれが無ければ、もしかすると、沙耶殿にも勝てたかもしれん…
最初の『踵落とし』と、沙耶殿を蹴り飛ばした時…
あれが故障の原因だな」

「踵落としはまだ良いが、全力噴射しながらの水平噴射跳躍からの蹴り…
あれが一番の致命傷じゃよ。」

「ガハッ!!」


紅蓮大将と神野大将のダメ出しの言葉に致命的ダメージ(精神的に)を負うタケル。

「だが、貴殿の意表を突く攻撃や行動は満点をくれてやろう
それは神野大将も同じ意見だ」

「敵の頭部を踏みつけて視界を封じる事…
得意のアクロバットで敵を翻弄する機動…
攻撃手段の視野を広げ、相手の予想を外す手札の多さ…
そして、どんな不利な場面でも諦めずに挑み、
そして、様々な策を実行する度胸…
正に天晴れと言うしかあるまい」


「あ…有り難う御座います!!」


紅蓮大将と神野大将のお褒めの言葉を頂き、感謝するタケル。


「流石は殿下や斉御司大佐に認められる事は有る
此度の新OSの開発の件…期待してるぞ?」

「新OSの開発?」

はてな?と紅蓮大将の言葉に疑問に思う椿
その反応を見て神野大将が説明する

「白銀中尉は、此度帝国軍・極東国連軍による共同開発任務の任があってな、
この最初の開発任務として新OSの開発が進められてる
そして、その新OSの実態が…先程の白銀中尉の機動特性じゃ」


「「ええぇぇぇっ!?」」

神野大将の発言に驚愕する椿達
口をパクパクとする者や呆然と立っている者が出てくる程衝撃が強い話だった。

「誰もが白銀中尉と同じ機動特性が可能となる新OS
そうなれば、戦力の大幅アップは勿論、生存率の底上げ、新しい戦術の可能性まで現れると考えられている
その為、白銀中尉には『テストパイロット』としての任務があるのだ。」

「どうかのぅ…椿様?
もし、椿様が白銀中尉と同じ機動が出来るとなれば…?」

紅蓮大将の説明を聞き、驚き以上に歓喜が現れてくる椿達
神野大将に問われる椿は---笑みを浮かべて答える

「是非とも欲しいですね
それに白銀中尉に負けっぱなしっていうのも、嫌ですしね。」

「だそうだ、良かったな白銀中尉
既に椿様の『お気に入り』になったぞ?」

「んがっ!?」

獲物を狙う眼光を放つ椿と、タケルをいぢくる紅蓮大将の発言を聞いて『ハァ…ヤッパリこうなるのね…』とorzになるタケル。


「あと、最初は白銀中尉だけじゃが、後からお主達にもテストパイロットをしてもらう予定じゃ」

「その時は貴殿等中隊は、白銀中尉と同じく帝国代表として『次世代戦術機の開発部隊』となる事になる」


「「「!!!!」」」


「この話はかなりの機密故に他の者達には喋る事は禁ずる…いいな?」


「「「ハッ!!!」」」


自分達の重要な立場を理解し、紅蓮大将達に返答を返す椿達。


「あと、椿様
時折白銀中尉には開発の任務で国連軍の方に出向く事があります
その際は隊を一時的に抜ける事もあるので御理解頂きたい」


「ハッ、了解致しました!!」

「…そうそう、白銀中尉よ
実は国連軍の香月博士から新OSのデータを送られて来てな…
休憩が終わったら、早速テストパイロットをしてくれたまえ
終わり次第、再び香月博士の下にこのデータの結果を送りたいのだ」

「ハッ、了解しましたっ!!」


早速来た新OSのテストパイロットにウキウキするタケル
そして、その新OSのデータに興味津々の椿達。

休憩後、再びシミュレーターデッキに乗り、新OSのテストパイロットをするタケル
その新OSを装備した白銀機の瑞鶴の機動をモニター室で見て驚愕する椿達と紅蓮大将達
新OSのデータを装備したタケルの機動を見て、人類の未来に『希望』がちょっと見えてきた瞬間だった。



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第六話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/19 22:39
「ハァ…今日1日は色々有り過ぎたわ…」

「まったくです」

疲れ果てた椿と沙耶
自宅である九條邸で今日1日の事を整理するが、様々な『出来事』があって、精神的に疲労がきていた


「白銀武中尉か…
まさか…彼の入隊が『母様』まで関わっていたとは…」

「由佳里様らしいと言えばそれまでですけどね…」


深く溜め息を吐く椿
そんな椿に温かいお茶を差し出す沙耶

ずずず…とお茶を飲みながら今日の事を思い出す


新OSのテストパイロットを終えたタケルは『だいぶ使い易くなってきた』と発言し、椿達中隊が驚愕する


『だいぶ…って事は…まだ『あれ以上』の機動が可能なの…?』

椿が顔を引きつりながら質問すると…

『あんなモンじゃないですよ、新OSの力は』
…とケロッとした発言をするタケルに対し、全員が『コイツ…何処の星の超人?』…などと、タケルに生暖かい目で見ていた



そして、シミュレーター訓練を終えると、神野大将から解散を命じられ、
その後タケル・椿・沙耶には『共同開発の打ち合わせをするから、シャワーを浴びた後に会議室に来るように』と命じられる


しかし---実際に会議室で話を聞くと、『共同開発の打ち合わせ』は嘘で、実際は『重要機密情報』の話だった


回想----




『重要機密情報…?』

『ウム、済まなかったな、嘘をついてしまって
…じゃが、こうでもせんと、怪しまれる故にああ言ったのだ…』


神野大将が説明した後、頭を下げて、タケル達に謝罪する。
勿論タケル達は、慌てて神野大将に頭を上げてもらおうと説得する


『さて、椿様…
此度椿様と沙耶殿には『特殊任務』を与えるのだが…
此度の特殊任務は、九條家現当主の『九條由佳里様』からの推薦故、椿様と沙耶殿が選ばれた』


『母様からの推薦…ですか?』


『ウム…』と頷く紅蓮大将
その事を知り、緊張する椿と沙耶


『此度の特殊任務の内容は…『白銀武中尉の期間限定の共同計画と護衛』です』

『『『は…ハァァァァッ!!?』』』

紅蓮大将から告げられる『特殊任務』の内容に驚愕する椿と沙耶
タケルも流石に大声で驚愕する


『ぐ、紅蓮大将っ!!
一体どういう事ですかっ!!?』

『慌てるな、白銀中尉
今ちゃんと説明する。』

慌てるタケルを落ち着かせる紅蓮大将
椿と沙耶は余りの事に未だに混乱していた

『実は白銀中尉は『オルタネイティヴ計画』の重要人物の一人でな、その事もあって、殿下や香月博士から『護衛』を付けるようにと頼まれてたのだ』


『ええっ!?』
『オルタネイティヴ…計画…!?』

驚愕した椿は思わずタケルと沙耶を見る
いきなりの展開に驚いてるタケルと…顔面蒼白している沙耶だった

『…最初はのぅ…ワシ等も椿様や沙耶殿にこの任務は酷だと言ったのだが…
丁度その場に居た由佳里様が『あの子達にこの任務を任せる』と厳しい表情で申してたのだ…』

『幾らオルタネイティヴ計画の重要人物とはいえ、『五摂家』の者に護衛させるなど大問題だと反対する声もあったのだが…
由佳里様が『五摂家だからといって、『甘えた事』はさせてはいけません
むしろ五摂家として人を導く先導者の一人として、厳しい任務を与えるべきです』…と頑固を貫くのだ…』

困り果てた紅蓮大将と神野大将を見て、『申し訳ありません』と謝罪する椿

『そして同時に時折白銀中尉が行う特殊任務に一緒に参加して貰うのも、任務内容のひとつだ』


『例えば、どのような任務でしょうか?』


説明する紅蓮大将に質問する椿、
すると紅蓮大将はその質問に対して説明する

『まだ詳細な事は知らないが…
例えば、新OSの任務で白陵基地に向かう際は、
白銀中尉の護衛と開発任務を行って貰う事になります。
戦地へ向かう際は、白銀中尉の生還を重視として任務を遂行して貰う事。
他に何かの特殊な任務な場合、護衛をしながら任務遂行を目指す事になります』

『期間は2002年頃、任務終了は…まあ、その時は三人共一時的に国連軍に出向されてる筈じゃから、香月博士から告げられる事になってます』


『こ、国連軍に…一時的に出向…?』

突然の事に精神的にゴリゴリと削られる椿
特に『一時的に国連軍に出向』という言葉に一番戸惑う



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第六話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/22 00:59
(沙耶大尉…?)


先程から何か沙耶から『親近感』があったタケル。

(沙耶大尉の『事情』…?
オルタネイティヴ計画に関係してるのか…?)

先程の事を思い出すタケル。


(さっき紅蓮大将が『オルタネイティヴ計画』って言った時、沙耶大尉の顔色が悪かったな…
それに沙耶大尉の『事情』も関係してるのか…?)


推理するタケルだが、やはり簡単には分からなかった。



(沙耶大尉ってやっぱり『誰か』に似てるんだよな~…
あの容姿…あの雰囲気…)


『何か』が引っかかるタケル
ひとつひとつキーワードを組み込むと----


(容姿…『銀色の髪』…そうかっ!!
『霞』に似てるんだっ!!)


ひとつのキーワードを解くと、解けた紐のように『謎』が解けだす。


(そうだよ、霞に似てるんだっ!!
あの髪の色といい、あの『謎めいた雰囲気』といい…アレ?)


タケルの脳裏にある『仮説』が浮かび上がってくる。

(オルタネイティヴ計画と沙耶大尉の事情…
そして、霞に似ている…まさかな…)


一度頭を振るが、やはり沙耶大尉の反応が気になるタケル。
そして、沙耶大尉もタケルをチラチラと気にしていた


(…気まずい空気だなぁ…
失礼を覚悟して聞いてみるか…)


決意を決めたタケル
罪悪感もあったが、沙耶との関係を解決する為に行動をとる。



『紅蓮大将、ひとつ質問が…』


『なんだ、白銀中尉?』


『---紅蓮大将や神野大将はオルタネイティヴ計画に詳しいのですか…?』

タケルの質問に反応する四人
特に沙耶からは大きな反応があった



『ウム、一応大体の事はな
ワシも神野大将も知っておる』


『そうでしたか、ありがとうございます』


紅蓮大将に質問を終わらせると、今度は沙耶の方を向くタケル。



『スミマセン…大尉
もし…違っていたら謝っておきます。』

『な、なんだ…?』

タケルの対応に戸惑う沙耶…


『大尉は---
『第三計画』の出身ですか…?』

『『『『-----ッ!!!』』』』

この瞬間----
空気が凍りだすっ!!


『な、何故そのような事を…?』


『いや…大尉は、オレの知り合いに似ていたもので…
そして、先程紅蓮大将が『オルタネイティヴ計画』と『沙耶大尉の事情』と口にした際、顔色が悪かったもので…
間違ってるかもしれませんが、大尉が『第三計画』の出身ではないかと思ったのです。』

『し、知り合い…?』


タケルが口にした『知り合い』に反応する沙耶。

『はい、その知り合いも『第三計画』の出身です
以前、オレが『第三計画』の事を知った時に、『彼女』が怯えるように逃げ出した時がありました
彼女にとっても、知られたくは無い事実でしたが、オレにとっては『彼女は彼女』でしたので、必死に探して、説得…というか…話し合いをして、お互いの事を理解しあった事があったんです。』

『…………そうか』

タケルの口にした内容に驚きながらも、少し落ち着きを見せる沙耶


『白銀中尉は…『怖く』はないのか…彼女とやらを…?』


『怖い………考えた事もなかったな…
ウサギみたいな可愛らしい奴だし、彼女の『能力』も慣れっこ…って言うより、内緒話したり同意を求めたりする時にも使ったりするし…正直、今は能力に関しては全然気にしてません
むしろ、ひとつの『長所』として見てますよ。』

『な…なんだと…?』


タケルの返答に驚きを隠せない沙耶
紅蓮大将や神野大将は『大した若者ぢゃ』と関心し、椿に関しては、タケルの話を聞いて、ホッと安心する



『もし違っていたら謝ります
けど、もしそうならば----怖がらないで下さい
オレは…貴女の『味方』です…!!』


『----ッ!!』


タケルの言葉に陥落する沙耶
そして、沙耶の口から告白する。



『そうだ…白銀中尉の察する通り、私は『ESP能力者』だ…
まさか…こうも簡単に見破られるとはな…』

『謎めいた雰囲気とか髪の色も同じでしたからね、
出逢った時から、なんか引っかかっていたんです』


『そうか…』


落ち着き直した沙耶
椿が『良かったわね』と沙耶の下に駆け寄ってくる。
そして、沙耶はタケルの方に顔を向けて、声をかける

『白銀中尉…ひとつ質問したいのだが…いいか?』


『なんでしょうか?』

『実は…今日、貴殿に出逢った時に、用心の為に一度『リーディング』したのだが…
その際、不可解な『記憶』を見たのだが…それに問いたいのだが、良いかな…?』


『げっ!?』

既にリーディングされて記憶を覗かれていたタケル

『ど…どのへんまで覗きましたか…?』


『今より成長している冥夜や殿下が、貴殿を囲むように仲良くしてた所とか…
貴殿が国連軍に所属していて、冥夜と一緒に訓練してた所や、ハイヴのような場所で戦っている場面とかの記憶を見たのだが…不可解過ぎて訳が分からなかったのだ』


『うわぁ………見事に致命的デスネ~…。』


重要な記憶を見られていて、落ち込んでいたタケル。
そばで『す、済まない…』と謝る沙耶


『ほ、他にも見ましたか…?』


『……………済まない』

『グフッ!!』


もう駄目だ…と諦めるタケル



『…スミマセンが、沙耶大尉…
巻き込むカンジになってしまいますけれど…覚悟OKデスカ?』


『ま、巻き込むって…引き返せないの…?』

『無理です…
例えるならば…底無し沼に全身埋まった状態?』

『ええぇぇぇぇっ!?』


不安になって、引き返せないかと訪ねる椿だが、『無理、絶対に逃げられない』と、ズバリとタケルに言われてしまう。


『ええと…ホラ、底無し沼に全身埋まった状態でも助けに行けば----』

『無理、香月夕呼という番人が存在してるから、救出不可能です
それに最近、煌武院悠陽殿下という戦力も増え、万全な防衛になってますよ?』


『ゴメンね…沙耶…力の無い私を許して…』

『椿様っ!?』


救出不可能とわかり、沙耶に詫びる椿


後々、香月博士が『アラアラ、秘密…知ったんだ…ヘェ~…』…と良いカンジにステキでドス黒い笑みで二人を巻き込んだ事は後の話だったりする…



現在----



「はふぅ…内容が濃すぎるわよね…」


「も、申し訳ありません!!」

ペコペコと椿に謝る沙耶
『良いわよ、気にしないで』と謝る沙耶を落ち着かせる


あの後、タケルには沙耶が九條家に引き取られるまでの話を伝える


沙耶は数年前、とあるハイヴ攻略の際、第三計画として、BETAの思考や意思を探る為に、彼女達『ESP発現体』は、戦術機に乗り込み、複座として衛士達に守られながら出撃した


しかし、生還率は僅か6%
そして、沙耶も本来はその6%から漏れた者だった…


しかし、其処に『奇跡』は存在していた
その時、無意識の内にSOSの信号--
自分の居る場所のイメージをプロジェクションを飛ばした所、偶々特殊任務として参加し、帰還の途中だった帝国軍特殊任務部隊の一人である『辻間英治大尉』が沙耶を発見する


衛士は無惨にも死亡していたが、複座だった事もあり、下に座ってた沙耶は無数の傷はあったものの、命には別状は無かった
即座に救出し、帰還して沙耶を治療
そして気づいた沙耶を話をすると---
沙耶の能力を知り、ESP能力者としる辻間大尉


重大な機密性を知った辻間大尉は、沙耶をそのまま日本に連れて行き、帰国
そして、かつての上官だった当時の九條家当主の『九條元泰准将』に相談し、話し合いの結果、九條准将に沙耶を預ける結果になる


そして、九條准将は第三計画の内容を知り、事の重大さと、人間としての大罪を知る


人工的にESP発現体を創り、戦場へと送り出す

狂った科学者達の生み出した大罪に九條准将は怒り、同時に沙耶を哀れんだ


『このような子供が親の愛情も知らず、そして身勝手な科学者達に創られ、自分の意思を無視し、戦場へと送り出される
--これは、人間として許される事ではない
そして、同時に彼女に償わなければならない。』
九條准将は同時の政威大将軍である『煌武院雷電』と、その側近でもあった紅蓮大将と神野大将
そして、当時の五摂家の当主達を集めて緊急会議を行い、説得していた
そして、九條准将は懸命に説得し、その姿を見て感服した煌武院雷電は、九條准将の意見を聞き取り、結果は『九條家の養子として世話をする事』になった


そして、この事は将軍家及び五摂家と紅蓮大将・神野大将の秘密という事になった


『彼女にも、『人としての幸せ』を与えねばならぬ
彼女も---『人間』なのだから』


そして、沙耶は九條家に養子として入る
妻・由佳里や娘・椿も大いに大歓迎し、沙耶を『家族』として迎える



本来は沙耶が椿より一つ年上だったが、養子だった事もあり、歳を一つごまかして『椿の妹』となる


その事に恩義を感じ、九條家に絶対の忠誠を誓う沙耶
『沙耶』という名もこの頃に付けられるのだった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第六話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/21 19:29
「それにしても良かったわね、沙耶
白銀中尉が沙耶の事理解してくれて。」


「ハイ…少しまだ戸惑ってますが…安心しました…」

タケルが沙耶をESP能力者と知っても変わらない態度で接してくれる事に嬉しく思う沙耶
つい、思わず笑みが浮かんでいた


「アラアラアラ~♪
沙耶が笑ってる~!!
珍しいわね~、九條家や五摂家の一部の者にしか見せた事の無いのに、沙耶が笑ってる~」


「つ、椿様っ!?」


沙耶をからかう椿
しかし、内心とても嬉しかった事で、つい沙耶をいじくってしまう



「アラアラ…沙耶ちゃん、『恋』でもしたの?」

「うわぁっ!?」

「母様っ!?」

背後から突如現れた九條家現当主・九條由佳里


「沙耶ちゃん、誰に恋したの?
お母さんに教えて頂戴♪」

「由佳里様っ!!」


からかって来る由佳里につい、怒鳴ってしまう沙耶


「『由佳里様』だなんて家では止めなさいって言ってるでしょ?
家では私は貴女の『母』なんだから」


「うっ…か、母様」


照れながら由佳里に『母様』と呼び直すと、『沙耶ちゃ~ん☆』…と沙耶を抱きしめる
…その姿は、九條家現当主とは思えない接し方をする由佳里


「…ところで、誰が沙耶ちゃんをこんなにも可愛らしい笑顔にしたの?」

「白銀武中尉よ、母様」


「椿様!!」


バラす椿に可愛らしくポカポカと叩いてしまう沙耶
そして、今日あった事を大体話す(タケルの記憶は秘密)椿…


「…そっか、少し心配してたけど、安心したわ
白銀中尉に感謝しないといけないわね…」


「…ハイ」


「けど、本当に今日は色々とあり過ぎたわ…
本当に疲れた…」


「ご苦労様…ああ、そうそう
椿・沙耶、明後日の10:00から貴女達は白銀中尉と一緒に白陵基地に向かって貰うわ
任務内容は新OSの開発よ
その際、今回は月詠真耶中尉も同行するから、ちゃんと任務をこなすのよ?」


「「ハッ!!」」


この瞬間だけ、軍人の姿に戻る椿と沙耶。


「さてと…久々に晩御飯でも作りましょうか」

「手伝います」


腕まくりをして『母の味』を振るおうと立ち上がる由佳里
その手伝いをしようと沙耶も立ち上がるが『今回はゆっくりしてなさい』と断る由佳里


台所に向かう最中、とある写真を見る由佳里


「貴方…沙耶があんなにも笑顔を出せるようになったわ…貴方も見てるかしら…?」


愛する夫の『遺影』を見ながら報告する由佳里
少し寂しそうな表情をするが、パンパンと頬を軽く叩いて台所に向かって行った



時同じくして---
帝国陸軍白陵基地---


『白銀影行大尉と白銀楓中尉、入ります』


「開いてるから入んなさい」


ウィィンと自動ドアが開き、『白銀』を名乗る2人が入ってくる
部屋に入ると、香月博士が書類を目を通していた

「博士がお呼びになってると聞いたのですが…?」

「ええ、呼んだわ
要件は一つ、明後日の午後に帝都から五摂家の九條椿少佐と九條沙耶大尉が来るわ
その護衛として、斯衛軍から月詠真耶中尉と…アンタ達の『息子』の白銀武中尉が来るわ」


「タケルがっ!!」


タケルの名前を聞いて反応する母・楓


「ええ、来るわ
表向きは視察って事になってるけど、実際は白銀がメインの共同開発よ
それにしても贅沢よね~
白銀ったら、九條家の2人と五摂家に近い名家1人を『護衛』に付けるんだから驚きよね~♪」


「「え、ええぇぇぇぇっ!?」」


香月博士の爆弾発言に驚愕する白銀夫妻
その姿を見てニヤニヤする香月博士



「まっ、その際に九條家の2人と一緒に白銀の秘密もちゃんと打ち明けるわ…
信じるか信じないかは…アンタ達次第だけどね」


「「…………」」


一応香月博士からタケルの事を聞いていた白銀夫妻

やはり信じらんない事だったが、『一本のビデオテープ』を見て、2人の心が揺らぎだす



『一本のビデオテープ』…それは、偶然、防犯用の監視カメラが、悠陽殿下と真耶と斉御司大佐が渡り廊下でタケルと出逢った場面を写していた…

そして、そのビデオテープを殿下から借り、白銀夫妻を説明する材料に使ったのだ

その際、楓が香月博士に『このビデオテープに映ってるタケルは『本物』のタケルなの…?』と訪ねる
香月博士は『確かに貴女達の息子の白銀武よ
ただ、『別の世界の白銀武』と同化してるから、肉体が18歳まで成長してるけどね』…と聞き、ポカンと唖然としていた

そして、タケルが並列世界を二度も移動し、ループしていた事を聞いて言葉が出て来なかった


しかし、やはり言葉だけでは信用出来ず、自分の目と耳で確認したかった

そんな事もあり、今回のタケルの任務は香月博士が仕掛けた任務でもあったのだ。


(さて、此処まで歴史を変えて…どう変化するかしら
白銀…全てはアンタ次第よ…)


今はそばに居ない『腐れ縁』に問いかける香月博士…
タケルが望む『未来』の為に、白銀夫妻をいじくりながら、着々と計画を進めていた…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第七話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/22 02:53
1月15日・帝国陸軍白陵基地----


「「お待ちしておりました
ようこそ、白陵基地へ!!」」


ヘリで帝国陸軍白陵基地へやってきたタケル達
表向きは護衛のタケルと真耶が先に出て、椿と沙耶を先導する


そして、出迎えとして白銀夫妻が敬礼しながら待っていた


「ようこそ白陵基地へ
私は帝国陸軍第6中隊所属の白銀影行大尉であります
こちらは副官の白銀楓中尉であります。」


「白銀楓中尉です、よろしくお願いします。」


「えっ…白銀…?」


白銀夫妻の自己紹介を聞いて、思わず後ろにいるタケルを見る椿


「…オレのオヤジと母さんです。」

「まあ、そうでしたか」

タケルの両親と知ると、少し驚く三人
『また先生の仕業かよ…』と香月博士のイタズラに頭を抱えるタケル


「…タケル、話したい事は山ほどあるが…後にしとくぞ」

「わかった、オレもそのつもりだ」

少しジト目で見る父・影行だが、覚悟を決めていたタケルは、真摯な表情で父・影行に答える


「…まさか中尉とはね…
数日で母さんと同じになるとは…」

「しかも斯衛軍だなんて…なんで私達と同じ帝国陸軍に入らなかったの?」


「いや、オレの所属や階級は殿下や斉御司大佐や先生…香月博士が決めた事だから…」


歩きながら会話をする白銀親子
本来はこんな会話は出来ないのだが、椿の御好意により、許可された。


「タケル、アンタ衛士って事は戦術機に乗れるんでしょ?
ポジションは何処よ?」

「突撃前衛だよ
オヤジや母さんは何処なんだ?」


「父さんは迎撃後衛
母さんは強襲前衛だよ
まっ…母さんの場合は突撃前衛並みに突撃してBETAをミンチにするけどな」

「はっ…?」


影行の発言に唖然とするタケル

「普通、そんな事したら隊が崩れるんだが、母さんの場合は逆に合理的でな…
母さんは接近戦以外なら何でもこなせてしまってな…
なんて言うか…強襲前衛でありながら、制圧支援・砲撃支援も一流にこなし、突撃前衛並みに突撃するんだ…
接近戦以外ならば誰にも負けないよ。」


「……なんですか…そのチートっぷりは…?」

母・楓のチートっぷりに唖然とするしかないタケル
楓も顔を真っ赤にしながら『影行さんったら…恥ずかしいじゃない…』と小さな声で呟く



(…白銀中尉の戦術機の才能は此処から来てるのね…)

(親子共々『天才衛士』の血筋…ですね。)


ボソボソと小さな声で本音を語る椿と真耶
しかし、ちゃっかり白銀親子に聞こえたりするのはお約束だ



そして、香月博士の待つシミュレーター室に入ると、まだ幼い姿の社霞と、タケルの見た事の無い少女2人が居た。


「待ってたわよ、白銀~
さっさと強化装備に着替えてXM3のテストをするわよ。」

「えっ…その前に話は…?」


「あのねぇ…白銀…
一応建前は『共同開発の視察』なのよ
九條家のお二方に共同開発の視察をする『フリ』をしてもらわないと、怪しまれるでしょうに…」

「…さいですか…
せめて前もって連絡下さい」

香月博士から国連軍の強化装備を貰い、更衣室に着替えてくるタケル



「…どう?
まだ信じられないかしら…?」


「…まだ戸惑っている最中です
確かに…あれは私達のタケルだ。」


「けど…なんか違和感があるけど…何かしら?」

タケルが去った後に白銀夫妻に声をかける香月博士
影行は香月博士の話が本当だった為、戸惑っている最中
楓は『知っているタケル』とは違う違和感を気にしていた



「多分、それは『別の世界の白銀武』が同化してるせいよ
『この世界の白銀武』とは違うモノを持っているから、そう感じるのよ
例えば…この世界の白銀武は衛士じゃないけど、別の世界から来た白銀武は、ループした事によって、衛士としての経験が豊富になり、一流の衛士になったわ
そんな『アンタ達の知らない白銀武』を知った為、アンタが感じる『違和感』として現れたのよ」

「…なる程…一理あるわね」


香月博士の答えを聞いて納得する楓
そして、それから数分後に強化装備を着たタケルがやってきた


「先生、お待たせしました」


「さて、取りかかるわよ
帝都で取ったデータのバグは取り除いたわ
以前より動きは良くなってる筈だから、思いっきり動きなさい」



「思いっきり…スミマセン、先生…機体は一体…?」


「話には聴いてるから大丈夫よ
今回は不知火に搭乗して貰うから、瑞鶴よりはマシよ
…それに、不知火の方が動かし易いでしょ、アンタは」


香月博士の気遣いに感謝するタケル
冗談半分で『武御雷でも良かったのに…』と呟くが、『まだ完成されてない機体頼んでも無理よ』とキッパリと断れてしまう


「さて、始めるわよ白銀
やるんならド派手な機動を見せつけてやりなさい」


『了解!!』


そして、XM3の開発テストが始まった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第七話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/22 22:33
「ウオォォォォッ!!」


縦横無尽に飛び回り、仮想敵(アグレッサー)の不知火や吹雪を次々と撃破していく白銀機

空中での倒立反転しながら短刀を装備し、着地と同時に短刀投擲と水平噴射跳躍をし、短刀を回避した仮想敵は接近して来る白銀機の長刀に両断される



「----なんだコレは…!?」

「コレがタケルの機動…
倒立反転しながらの短刀装備し、着地と同時に短刀投擲と水平噴射跳躍を同時にこなすなんて…」
モニター室から見たタケルの機動制御に驚愕する白銀夫妻
そして、2日前の開発テスト時より上回る機動制御を見せつけられて、驚愕と同時に真剣にモニターに食い込むように見る椿達

「フフッ…やっぱりアイツじゃなければXM3は完成しないわ
それに---フフッ…どうやらお気に入りになったようね…」


香月博士の視線の先には、椿達と一緒にタケルの機動を注目する少女2人が居た


「クリスカ・イーニァ、白銀の機動…どうかしら?」

「タケルすごい…どうやったら、あんなうごきできるの!?」

「…悔しいけど…今の私達には、出来ない機動制御です。」


香月博士が第3計画から追加で連れてきた『紅の姉妹』のクリスカ・ビャーチェノワとイーニァ・シェスチナ
イーニァは瞳を輝かせながら、タケルの機動制御の仕方を香月博士に質問し、クリスカは悔しそうにタケルの機動を見つめる


「アンタ達もアイツから機動制御を学ばせる時があるから、それまで待ちなさい。」


「うぅ~…」

(かっ、可愛い…!!)


お預けを喰らったペットのように、拗ねるイーニァ
その姿を見て、楓や椿達が母性本能を動かす


「けど、あれで満足したらダメよ?
白銀の機動制御は、XM3が完成してからこそ発揮出来るの
つまり…『これ以上』の機動制御を持ってるのよ。」


「えっ…?」


全員が驚愕し、言葉を失う
イーニァは違う意味で驚愕し、キラキラと眼を輝かせながらモニターに夢中になる。


「博士…訓練が終わりました…」


「そう、それじゃこのデータの解析とバグの処理を後でするわよ、社」

「…ハイ」

香月博士の言葉に反応し、トレードマークのウサ耳の髪飾りをピョコピョコ動かす霞


「社…楽しみ?」


「……わかりません
けど、期待する自分があるのは確かです…」


「良い思い出が出来ると良いわね」


「ハイ…」


『思い出』という言葉に反応して、笑みを浮かべる霞

モニターに映るタケルを一旦見て、直ぐに香月博士の後ろについて行く



「ふぅ~…スッキリした~」


シミュレーター訓練を終えて、シャワーを浴びて汗を落とすタケル
着替えてシャワー室を出ると、クリスカが待っていた」


「あれ、キミはさっきの…」

「クリスカ・ビャーチェノワだ」

「ああ…俺は白銀武だ、宜しくな」


笑顔で握手を求めるタケル
戸惑いながらも、そっと握手に応えるクリスカ

「…タケルは私達の事を知ってるのだろう…?」

「ん?
もしかして『出身』の事か?」


コクリと頷くクリスカ
『なる程…』と思うタケルに更に質問が飛んでくる


「…怖くないのか、タケルは…?
考えを見透かされ、ヒトとは違う能力(チカラ)を持つ私達に…」

「ハァ…なんでそんな風に後ろ向きに考えるかな~…」

「なっ…にゃにふる!?」
溜め息を吐くタケル
後ろ向きなクリスカに、お仕置きの意味を込めて両側の頬を引っ張る


「ダメだなぁ~…クリスカ
そんな後ろ向きばかりになってはダメなのだよっ!!」


「は…離せっ!!」


引っ張ってた頬をさすりながらジト目で睨むクリスカ

「良いか、ESP発現体だろうと何だろうと、クリスカはクリスカだ
そして俺や先生と同じ『人間』だ
違うか?」


「えっ…?」


本心で語るタケルを見て戸惑うクリスカ

「俺にリーディングしたいなら、すればいい
ただ、他の奴には任務以外では滅多にやらないでくれ
俺は別にお前達を怖がる理由も無いし、そんな事する必要も無い
…まあ、先生みたく笑顔で黒いオーラを放つ事だけは止めてくれ…」

「そっ、そんな事するワケ無いだろう!!」


があっ!!と怒るクリスカを見てクスクス笑うタケル
そして、クリスカの頭に手を乗せて、優しく撫でる

「あっ…!!」


「だから仲良くしような、クリスカ」



優しく頭を撫でられて、頬を赤くするクリスカ
タケルをリーディングするが、『暖かい色』が見えた為、嘘偽りが無い事を知る


「わ…わかった…
宜しく…タケル…」


「宜しくな、クリスカ。」

素直な気持ちで返事を返すクリスカ
その返答に嬉しく思い、クリスカの頭を再び撫でるタケル

そして、香月博士達が居る研究室に入ると----



「随分と遅い御到着ね、白銀
…おやおやぁ…クリスカが随分と懐いてるわね…
流石は白銀、『恋愛原子核』も絶好調に発動してるって訳か…」


「な゛ぁっ!?」


入室して速攻にいじくられるタケル
香月博士の一言で、真耶・沙耶・霞の視線が『<◎><◎>』という風に睨みつけていた


「流石は白銀
女性を惹きつける事に関しては天下無双ね…
殿下には一刻も早く『一夫多妻制』を実現する事を強く言っておくわ
フフッ…ついでに『まりも』も嫁に嫁いでやってよ…アンタの下にね」


「ちょっ…先生…いきなり何を……!!」


「「「白銀(さん)…ちょっと…別の部屋て『お話』しようか(しましょう)…?」」」

「ちょっ…待って下さいっ!!」


タケルの両腕を抱きかかえて拘束する真耶と沙耶
霞も背中から抱きかかえるように拘束し、連行する


「た…た~す~け~てぇ~………!!」


そのまま三人に連行されて、隣の部屋でタケルをボコボコにフルボッコする


「……コワイヨ…コワイヨ…」


その様子を騒音で理解し、トラウマが蘇ってブルブルと部屋の隅で震えている父・影行
震えている影行を「だいじょうぶ?」と頭を撫でてるイーニァを見て、恥ずかしくも悲しくもある楓


「やっぱり白銀が居ると飽きないわねぇ~♪」


タケルをいじくって楽しんでいた香月博士だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第七話③
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/23 16:27
「タケル…だいじょうぶ?」


「だいじょばない…」

ボロボロのタケルを心配するイーニァ
クリスカも心配してるのだが、また火の粉が降りかかりそう(主にタケルが)なので、近寄れなかった


「アンタ達、ヤキモチするのは良いけど、まだ白銀には用事があるんだから手加減しなさい。」


「むっ…」

「ヤ、ヤキモチ等では…」

「…スミマセン。」

イタズラの根源である香月博士に注意を受ける三人
素直にはなれない真耶と沙耶だが、霞1人だけは素直に謝る。


「まぁ…白銀はそのまま話を聞いてなさい
さて、白銀がボコボコにされて気を失ってる最中に、リーディングとプロジェクションで『白銀の記憶』を見た訳だけど…どうかしら?」


「……………」


香月博士から問われるが、想像を絶する事に言葉が出てこないでいた。

二度のループを繰り返し、様々な試練に巻き込まれたタケルに、慰めの言葉すらかける事が出来なかった。


並列世界を移動し地獄のような結末を迎えた一度目の世界
ループし、10月22日に戻る事が出来、歴史を変更するものの、タケルの大切な人達を失う結果になった二度目の世界

そして、元々住んでた世界で波瀾万丈な生活を楽しんでた、元の世界



その3つの世界の記憶を知り、白銀夫妻や椿達は香月博士の言う事が真実である事が証明され
真耶はタケルの言ってた事が真実と証明されたのだった



「今回白銀の記憶を見せたのは特別よ
今後誰にも見せるつもりは無いわ…例え殿下でもね
それぐらい白銀の存在は重要機密の塊とも言えるの
人類の未来が『希望と地獄』の2つに選択されるぐらいにね…」


ゴクリと息を呑む一同
タケルの重要性を今初めて理解する。


「並列処理装置の根本理論…『奇跡のOS』と呼ばれるXM3…『歴史』という情報…
後は異性だろうが同性だろうが、惹きつけまくる白銀の人徳
最初と最後のヤツは置いといても、これだけの機密を白銀は握ってるのよ?
白銀の重要性がわかったでしょう?」


コクリと無言で頷く一同…
すると、イーニァが挙手する


「ユーコ、さいしょとさいごのは、なんでなの?」


「最初の並列処理装置の根本理論は、今回は私が覚えてるから『元の世界』に取りに行く必要が無くなったからよ
白銀の人徳に関しては、結構莫迦には出来ないモノよ
現に政威大将軍・煌武院悠陽殿下を始め、五摂家の斉御司家と九條家
斯衛軍大将の紅蓮大将に神野大将
そして五摂家に近い武家の月詠家
今現在だけでもこれだけの日本の重要人物達と親しくしてるのよ?
この後には将軍家縁の御剣冥夜を始めに…
内閣総理大臣の娘の榊千鶴
帝国陸軍中将の娘の彩峰慧
国連事務次官の娘の珠瀬壬姫
帝国情報省外務二課課長の娘の鎧衣美琴
これらの豪華メンバーに出逢うのよ?
此処まで来たら、白銀の人徳も莫迦には出来ないわ。」


「タケル…お前…」

「ハハハ…今考えてみると…凄いメンバーと出逢ってるんだな…オレ。」
「凄過ぎるわよ…」


香月博士の話を聞いて驚愕すら通り越して、呆れてしまう白銀夫妻
タケル自身も『オレ…そんな人達に馴れ馴れしく接してるんだな…』と再確認する


「あとね、白銀の人徳に惹かれた人物がこの白陵基地に居るわ」


「へっ?」


「以前、アンタが月詠中尉と対決した時のデータと前回の帝都でのXM3のテストデータを見せたの…
そしたら、ソイツ興奮しちゃってさ~、仕舞いには『日本に帰化しても良い』なんて事まで言ったのよ~♪」


「だ…誰ですか…その人」


タケルに惹かれて白陵基地にやってきた人物が凄く気になるタケル…



「---米国の戦術機開発メーカー『ノースロック社』の技術開発者の『エルヴィン・ロックウェル』
あの『世界一高価な鉄屑』と呼ばれた戦術機・YF-23ブラックウィドウⅡを開発した技術開発者の一人よ」


「「「---ッ!!!」」」


噂に名高いYF-23の名前を聞いて驚愕する椿達と白銀夫妻


「白銀の変態機動見たら興奮しちゃってさ~
急にブツブツ言い出して『彼の機動特性を生かせる機体を創ってみせる!!』って言って、今現在ハンガーでブツブツ言いながら開発に取りかかってるわ」


「開発って…何を…?」

恐る恐る質問するタケル…
すると、香月博士は良いカンジに笑みを浮かべて答える。



「不知火の改良型を今開発してるのよ。
帝国軍の改良とは違うけど…此方の不知火は、アンタの機動特性やXM3を重視した機体に取りかかってるのよ。
後々A-01の主力機として目指しているわ。
そして、その機体のテストパイロットにアンタを予定してるわ。」


「ええぇぇぇぇっ!!?」




突然の爆弾発言に驚愕するタケル。
他の者達すら言葉が出て来ない状態だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第八話①
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/23 19:04
「よっこいしょ…」


ベッドに腰を降ろすタケル。
香月博士から今後の日程を聞いた事を思い出す。

白陵基地での日程は2日間、
明後日の午後には帝都に帰る予定になってるので、それまでにはXM3をある程度進め、今後タケルの所属する中隊での開発を進める為に、現在香月博士と霞が急ピッチでバグの撤去や修正を急いでる。


「オヤジ達は隊に戻ったし…
ハンガーにでも寄ってみるか…?」


やる事を決めて立ち上がるタケル。
真耶の居る部屋に訪ねに向かう。


「月詠中尉、居ますか?」

「ああ、入って構わんぞ。」

「失礼します。」

ノックをしてから声をかけ、確認をするタケル。
真耶の許可を貰い、中に入る。


「どうした?」

「いや…ちょっとハンガーに寄ってみようかと思って。」

「例の…エルヴィン・ロックウェル…とやらか?」

「ハイ。」

コクリと頷くタケル。
真耶も『フム…そうだな…』と興味を示す。

「わかった、一緒に行こう。
椿様達にも伝えた方が良いだろう。」

「ありがとうございます。」

予定が決まり、部屋を出て椿達の部屋に行き、一緒にハンガーへと向かう。


「エルヴィン・ロックウェルか…どの様な者なのだろうな…」

「先生みたいなマッドな人だったりして…」

「…止めてくれ、白銀…
足が止まってしまうではないか…。」


沙耶がエルヴィン・ロックウェルの人物像を想像してると、タケルの一言で足が止まり、拒否反応を見せる真耶


ハンガーに着き、近くにいた整備兵に、エルヴィン・ロックウェルの居場所を聞きだす。

「其処の整備兵の兄さん、作業中済まないけど、エルヴィン・ロックウェルさんが何処に居るか知らないかな?」


「あ…ハッ、ハイ中尉殿。
エルヴィンさんは奥の設計室で唸ってます。」


「唸ってる?」

「なんでも、不知火の改良型を製作するとかで…
色々考え込んでるみたいですよ?」


「そっか、作業中ありがとう」


タケル達に敬礼して見送る整備兵。

「…なんか、ああも『下から目線』でかしこまれると、ムズムズするな…。」

「何、直ぐに慣れるさ。
白銀とて、いずれは昇進して自分の部下を持つようになるんだ。
その時は貴様が指示を出さねばならんのだ。」

「『形だけ』の小隊長しかやった事が無いから緊張するなぁ~…。」


いずれ上に立つ身になる自分が想像出来ない為か、戸惑うタケル。
真耶や椿達がタケルに色々とアドバイスを教えると、設計室に辿り着く。

「失礼します、エルヴィンさん居ますか?」


「………(ブツブツ)」
設計室に入ると、金髪の中年男性が、ブツブツと椅子に座りながら、考え込んでる。


「…エルヴィンさん…?」

「…うん?
誰だね、君は?
何の用かは知らないが、今私は忙しいのだ。」


「お忙しい所スミマセンでした。
俺は、帝国斯衛軍第17大隊第1中隊の白銀武中尉です。
香月博士からエルヴィンさんの事を聞き、訪ねて来ました。」

「シロガネ…タケル…
おお…オオォォォッ!!
君がっ!!君がシロガネ・タケルかっ!!」


ガバッと立ち上がり、タケルの手を握り締め、握手するエルヴィン


「君がミスター・シロガネか…。
思った以上に若いね。」

「み、みすたぁ~!?
そ、そんな…『白銀』で良いですよ、エルヴィンさん」


「ハッハッハッ!!
謙虚とは、なかなかの好青年ですな、シロガネ中尉」

タケルに出逢い、一気にテンションが上がるエルヴィン。
その後、真耶や椿達の自己紹介をすると、先程の態度を詫びるエルヴィンに驚く真耶達


「いやぁ~、スミマセンでした。
考え事が行き詰まっていて、少し機嫌が悪くなってました。
先程の暴挙をお許し下さい。」

「い、いえ…構いませんわ。
私達がタイミングの悪い時に来ただけですから。」


少し戸惑う椿
先程の機嫌の悪いエルヴィンが一気に良くなっていた。

「それでエルヴィンさん、何に行き詰まっていたのですか…?」

「フム…丁度良いかも知れないですね…。
実は、機体の機動スピードの事で色々悩んでたのですが…
シロガネ中尉に質問ですが…時速800キロを超えるスピードでの、あの機動は可能でしょうか…?」

エルヴィンの問いに対し、タケルは少し考えて答える


「可能…ですね。
但し、勿論訓練しないと駄目ですし、関節部の強化もしないといけないですね。
勿論関節部に蓄積ダメージを溜めないように、俺自身の実力を上げないと駄目ですし、一番の問題として、やはりXM3を完成しない事には駄目ですね。」


「フム…問題は山積みか…」


溜め息をしながら、考え込むエルヴィン。


「今現在、タイプ94には『肩部スラスターユニット』と『ジネラルエレトロニクス・YFE120-GE-100』を装備する予定なのだが…
私としては、君の機動を生かす為にもう一工夫が欲しいのだ。」


「背中に…ダメか。
背中にスラスターユニットを付けたら担架等が装備出来なくなる。」


『一工夫』が出て来なくて悩むエルヴィン


すると、タケルが---

「…脚部に付けたらマズいッスかね~?」


「「「はっ?」」」


「脚…部…?」

タケルの一言に全員が注目し、唖然とする

「脚部の外側の方に小さな噴射口を付けたら…ダメ?」


「無理だろ…
それこそ脚部にダメージが…」

「可能だ…」


「「「はっ?」」」


今度はエルヴィンの一言に唖然とする椿達



「別に今ある脚部を改造して、取り付けなくてもいい…。
付属パーツとして、取り外し可能にすれば、強度の問題の心配は無い…。
小型の噴射口を付ければ推進材も少なくて済むし、無くなれば軽量化の為、取り外して捨ててもいい…。」


再びブツブツと考えこむエルヴィン。


「そうだ…どうせ付けるのならば、プロテクターの役割としても作ればいい。
軽量に作れば、多少の防御力アップにも繋がるし…
膝まで作れば…推進材の燃料タンクも…フフフ…」

突然嗤いだすエルヴィンにビクッと怖がるタケル達…そして…。


「『脚部スラスターユニット』を創ってみよう。
まずは実験して試してから実用出来るかを判断すれば良い。
フフフ…流石はシロガネ中尉だ…
予想だにしない発想をするとは、流石は『天才衛士』だ!!」


『ハッハッハッ!!』と絶頂に気分が良いエルヴィン
タケルとしても、『元の世界』のロボットゲームを思い出して発言しただけであって、少し複雑な気分になる


そして、エルヴィンは『これから脚部スラスターユニットの設計図を作るので…』と言い、作業に取りかかった為、退室するタケル達…


「…違う意味で、先生と同じだったよ…」

「そうか…」


先程の予想とは違う意味で当たった事を思い出すタケルと真耶だった…



[20989] MUV-LUV ALTERNATIVE~三度目のループ第八話②
Name: 騎士王◆cd16c2d4 E-MAIL ID:a7bee6ac
Date: 2010/08/25 00:49
ハンガーから出て、部屋へ戻る最中、廊下の窓ガラスから夕陽の光が照らされる

「むっ…もうこんな時間か…」


真那がチラッと腕時計を見ると、既に午後4時を過ぎていた


「おや、まだ訓練してる部隊が居ますね…」

「どうやら訓練兵のようですね。」


「えっ---」


すると、椿と沙耶がグランドで訓練で、ランニングしている訓練部隊がいたのを見つける。
それを聞いた途端、タケルの身体が自然と走りだし、グランドが良く見える窓から覗きだす。


「どうしたのだ、白銀…突然走り…白銀…?」


真耶が見たモノは---
タケルの目尻から『涙』が流れていた。


「どうしたの…白銀中尉…?」


「へへっ…情けねぇや…
このぐらいで…泣くようじゃ…まだまだ若造だな。」



タケルの見つめる先には---

恩師である『神宮司まりも軍曹』
尊敬すべき先任だった『速瀬水月』と『涼宮遙』の訓練兵時代の頃の姿だった…。


「あれは…確か『記憶』にあった…。」


「ハイ…俺をここまで育てて下さった恩師の神宮司まりも軍曹と『伊隅ヴァルキリーズ』の先任だった速瀬中尉と涼宮中尉です…。
そっかぁ…この時代の頃は訓練兵だったのか…。」


涙を拭い、再び尊敬すべし人達を見つめるタケル。


「今度こそ--
必ず守らなきゃなっ!!」

決意を改めて決めるタケル。
オリジナルハイヴの攻略は当たり前。
それ以上にすべき事は『大切な人達を守る事』
それこそが三度目のループの目標なのだ。


「……スミマセンでした…部屋に戻りましょう。」


「…良いの…?
会って話ぐらいは構わないのよ…?」


一方的ではあるが、再び再会した事に感涙するタケルを気を使い、『会ってみないか?』と声をかける椿


「…大丈夫です、九條少佐。
今は…我慢します
でないと…今逢ったら、大泣きしますから。」


「…そうか…では行こう。」


再会を我慢するタケル。
そんな姿を見た真耶は、タケルを気使い、部屋に戻る事にした…。





「あれ、斯衛の人達帰って行くわ…」


「ハァ…ハァ…本当だねぇ…」

ランニングを終えた速瀬と涼宮
休憩しながら、タケルの去る姿を目撃する


「なんかあの男の人、泣いてたような…」

「うん…なんかあったのかな…?」


ちゃっかりと、タケルが涙を流した所を目撃していた二人


「小隊集合っ!!」


「やべっ!!
神宮司軍曹が呼んでる!!」

「急ごう、水月」


召集をかける神宮司軍曹の下に、集まる速瀬達…
その頃にはタケルの姿はもう消えていた…。





「ん…何だ?」


部屋に戻る為、エレベーターに乗る際、周囲に騒ぎが有った



「あら白銀、今まで何処に居たのよ?」


「いや、ハンガーに行って、エルヴィンさんに逢ってました。」


「エルヴィンに?
そう、まあ手間が省けたわ。」


「それよりどうしたんですか、この騒ぎ?」


「ついさっきね、この基地内に侵入してた『スパイ』を捕まえた所なのよ。
社達にリーディングして貰った結果、米軍のスパイだった事が判明したわ。」


「ええっ!?」


基地内に米軍のスパイが侵入してた事に驚くタケル達


「侵入した人数は捕まえた奴一人のみ
ただ、今回は九條少佐達が来日してるだけあって、重要な場所は警備を強めてるの。」


「なる程…そうでしたか…」


事の事態を察し、理解する椿。
すると、香月博士の表情が『でびるふぇいす』に変わっていた…。



「…先生…この期に及んで、何を企んでます?」

「べっつに~☆
ただ、今回の件もあって、白銀や九條少佐達には『安全』を持って、部屋を『移動』して貰っただけよ~?」



「…ま…ま さ か …」


嫌な予感がバリバリしているタケル
香月博士の話を冷静に、推理した結果-----




「も…もしかして…
『大部屋』に移動…したんですか…?」

「「「はっ!?」」」


「大正解~♪
流石は白銀、良く解ったわね~。」


香月博士の呑気な言葉と同時に、石化になるタケル達
『大部屋』に引っ越されてしまう。



「ああああ…アンタはアホか----!!
こんな時にこんなイタズラしよって!!」


「あのねぇ…表向きはアンタは、九條家の護衛として来てるのよ?
護衛が護衛対象と同じ部屋で何が都合悪いのよ?
お互いに同じ部屋で、寝泊まりしながら護衛すれば、一石二鳥じゃない?」


「いや、だからって…」

香月博士の暴走を止めようと、懸命に対抗するタケル
しかし、タケルの奮闘も虚しく、撃墜されるタケルだった。



「「「「…………」」」」


仕方無しに大部屋に入るタケル達…。
其処には、セミダブルのベッドが『3つ』横に重なるようにくっつけ、番線でぐるぐるに結束し、ベッドのそばにある棚の上にテッシュの箱を設置していた…。


その光景を見たタケルは、口から魂が抜け。
真耶は『またか……』と床にⅢorz…と落ち込み。
椿と沙耶は顔を真っ赤にしてアワアワしていた…。



そして、その夜---


「す~…す~…」


「ウン……」


「………(眠れね--!!)」



結局は四人共、ベッドに寝る事になった。
最初はタケルは『床に寝てます』とか『護衛しながら起きてます』とか言ってたが、『お前も護衛対象だから駄目だ』と却下される。


現在、ベッドの上には真耶・タケル・沙耶・椿の順に寝ている
椿を壁側に寝かせ、タケルを真耶・沙耶の間に寝かせていた



勿論タケルは反論して、『俺が端っこに寝ます』と言うが、
椿が『沙耶の隣に寝る時は気をつけてね、たまに沙耶はそばにあるモノを抱いて寝るから』と発言してしまい、真耶が『私の隣に寝るがいい』と発言する。
勿論沙耶も対抗して『私の隣は…嫌か…?』と発言。
結果、タケルには逃げ場が無くなり、真耶と沙耶の間に寝る事になった。

(フフフ…面白い事になったわ…)


悶えてるタケルを見て、こっそりと笑う椿。
案の定、沙耶はタケルを抱きながら熟睡。
真耶もタケルの頭を抱えながら眠りについていた…


(まさか真耶さんも白銀中尉の事を気になっていたとは…フフフ…
同棲してた効果かしら?)


三人の寝てる姿を見て、笑いながら眠りにつく椿…




そして夜が明け、朝を迎えると----


「……………えっ?」


一番早くに目を覚ます椿。
三人の寝相を見て硬直する。
真耶と沙耶の間に寝ているタケルに異常事態が発生していたのだ。


真耶のシャツが少し脱げ、豊満な胸に顔半分が埋まってる状態になり、そして、沙耶を抱えながら胸を鷲掴み状態のポーズになっていた…


「こ…これは…放置するしかないわねっ!!」

タケルを見捨てる選択をする椿。
今助けては、自分のイタズラと思われてもおかしくはない。
最良の案として、タケル一人が犠牲になるしかないと判断する椿。


「ご、ゴメンね…白銀中尉…」


助けない事に一応謝罪する椿。
勿論後に二人に怒られるタケルは、正座させられながら説教を喰らっていた…


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