asahi.com「問われる真偽 ホメオパシー療法」 |
■先制攻撃は朝日、ホメオパシーが反撃
発端となったのは、本紙でも紹介した<ホメオパシー?で乳児死亡、母親が助産師を提訴(山口地裁)>の一件。これ以降、朝日新聞は、担当記者のブログも含めて以下の記事を配信しています。
・記者ブログ 第4弾 「赤ちゃんは治療法を選べない」(岡崎明子)(2010/8/12)
・代替療法ホメオパシー利用者、複数死亡例 通常医療拒む(2010/8/11)
・記者ブログ 第3弾 続々「ホメオパシー療法 信じる前に疑いを」(長野剛)(2010/8/8)
・ビタミンK2投与を 周産期・新生児医学会が緊急声明(2010/8/6)
・記者ブログ 第2弾 続「ホメオパシー療法 信じる前に疑いを」(長野剛)(2010/8/5)
・「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が実態調査(2010/8/5)
・5600万円の賠償求める 山口地裁 ホメオパシー絡みトラブル(2010/8/5)
・記者ブログ 「ホメオパシー療法 信じる前に疑いを」(長野剛)(2010/8/3)
・問われる真偽 ホメオパシー療法(2010/8/3)
記事の本数も多いですが、個々の記事も、かなりの分量を割いています。両論併記の姿勢もバランスがよく、それでいてホメオパシーの問題点をしっかり押さえています。国内の複数の死亡例について言及しており、情報面でも参考になります。
この朝日新聞の記事に対して、日本ホメオパシー医学協会(由井寅子会長)が、ウェブサイト上で執拗に反論と朝日新聞批判を行っています。
・8/5付 朝日新聞 「ホメオパシートラブルも 日本助産師会が実態調査」記事への見解
・7/31付 朝日新聞 Be report 「問われるホメオパシーの真偽」における取材と報道姿勢の問題
・8/11付 朝日新聞の誤解を招く報道に対しての見解
「朝日新聞 vs 日本ホメオパシー医学協会」の戦いの様相も呈していて、見ごたえがあります。
■朝日新聞の過去
朝日新聞は日本ホメオパシー医学協会を目の敵にしているわけではなく、ホメオパシーという似非医療手法そのものを検証しています。非常にまっとうな報道です。
しかし、朝日新聞がなぜいまになってホメオパシー叩きに熱心になったのかがいまいち理解できなかったので、朝日新聞の過去のホメオパシー記事を探してみました。すると……
【朝日新聞 2003年04月12日夕刊】健康マニア サンプラザ中野さん(科学してますか?)サンプラザ中野氏は、06年に一時的に「サンプラザ・ホメオパス・中野」と改名したほどで、ホメオパシー業界の事実上の広告塔です。
(ミュージシャン)
「健康のためなら死ねる」とギャグをとばし、125歳まで生きると公言する過激な「健康マニア」。ついには、ここ5年間ほどの研究成果をもとに、「痩(や)せ方上手」(講談社)という本まで出してしまった。
「ダイエット本じゃないんですよ。知らない間に中年太りしてしまった人に、痩せて健康を取り戻してもらいたくて書いたんです」
10年ほど前のバブリーな時代に、イタリアン・カジュアルがかっこよく着られる身体をつくろうと、ジムに通い、プロテイン剤を大量に摂取した。ところが、スキーでけがをしてトレーニングを中断したとたん、みるみる体重は82キロに。眠れなくなり、短気になった。そのうち父親がガンで亡くなり、自分の健康状態に疑問を持つようになって、健康本を読みあさるようになった。
「太ることで軽いうつ状態になっていたらしいんです。『少食が健康の原点』という本に出合って、半年で20キロ以上体重を落として、気持ちも明るくなりました」
朝は野菜ジュース、昼は軽く、夜は好きなものをきちんと食べるダイエット法だ。冷え性を治した温冷浴や、便秘の克服に役に立った縄跳びなど、自分の体験をもとにした健康法がいくつも紹介されている。
最近興味を持ったのは、ホメオパシー。病気の原因になるのと同じ物を投与し、逆に身体の治癒力を高めて治療する古くからある自然療法だ。
「おかげで花粉症が治りました。科学的じゃないと受け入れられない人もいるだろうけど、恋心だって科学じゃ分析できないでしょう」
(文・服部桂 写真・水村孝)
【朝日新聞 2004年04月30日】多国籍の花粉症(特派員メモ ロンドン)記者が、ホメオパシーが花粉症に効いたとか書いています。
鼻がムズムズ、目がかゆく、涙が止まらない。ヘイフィーバー(枯れ草熱)が再発したようだ。日本で言うところの花粉症である。
東京にいた5年前に花粉症になったが、英国に来て1年半ほどは症状が出なかった。以前にもましてひどいアレルギーに悩まされるようになったのは昨年の今ごろである。
木々が芽吹くころに悪化するのは東西共通だ。ただ、スギやヒノキの花粉が大問題の日本と異なり、英国の主犯はイネ科の植物らしい。最も身近にあるのが芝である。
春が訪れたロンドンの町を歩いていると、緑豊かな公園に寄り道したくなるのだが、芝アレルギーの自覚があるなら要注意だ。広大な緑地を脱出するまでに、鼻水を垂れ流し、目を腫れ上がらせる悲劇を招きかねない。
英国では6人に1人がヘイフィーバーで苦しんでいるという。知人からよく飲まれているという薬をもらった。天然成分が売りもので、最近注目のホメオパシー(同類療法)を応用しているという。幸いにもよく効いた。
芝アレルギーの我が身が、再びスギやヒノキの花粉が乱れ飛ぶ日本に戻った時のことを考えると、ちょっと不安になる。多国籍化した花粉症の症状はどんなものだろうか。
(福田伸生)
朝日新聞社の子会社である「朝日カルチャーセンター」ではホメオパシー講座が開催されており、朝日新聞紙面でも紹介されています。
【朝日新聞 2005年11月02日】朝日カルチャーセンター マリオン日本ホメオパシー医学協会の由井寅子会長が、朝日カルチャーセンターの特別講座で講演したこともあります。
●東京(03-3344-1941)
秋川リサの花のブローチ 女優の秋川リサ氏。華やかさを演出。12月7日[水][前]10時半。3670円、教材費2620円。
英語で学ぶテーブルマナー 中里クララ氏ら。12月2日から3回、[金][後]1時半。最終回はホテルオークラで。1万9740円(食事代含む)。
ホメオパシー 板村論子氏。ホリスティック医学を分かりやすく紹介。12月7日、21日[水][後]6時半。6510円。
(略)
日本ホメオパシー医学協会「2008/6/1 由井会長 朝日カルチャーセンター千葉で講演」 |
【朝日新聞 2009年01月28日】朝日カルチャーセンター 1-3月期おすすめ講座 【大阪】朝日カルチャーセンター横浜では、今年2月にもホメオパシー講座をやってます。3月には同湘南教室で「他力と自力の統合 特に気功とホメオパシーについて」という講座が行われ、これも紙面で紹介されていました。
(略)
■ホメオパシー入門 欧州では広く知られている代替医療のホメオパシー。効能や対応法などを分かりやすく解説する。片桐航ら(2月17日[火]13時半、2835)
(略)
朝日新聞は、ホメオパシーの信憑性を疑う論文が発表されたというニュース報道や、『代替医療のトリック』という書籍の書評なども掲載してきました。ですから、ことさらにホメオパシー称賛に偏向していたわけではありません。しかし自らの取材によってホメオパシーの問題を検証する記事を掲載したのは、冒頭に紹介した一連のキャンペーンが初めてのようです。
■「マッチポンプ」って知ってますか?
つまり朝日新聞はこれまで、ホメオパシーの問題点について自ら検証することはせず、主に朝日カルチャーセンターの宣伝の形でホメオパシーの普及に一役買ってきました。それがいまになってホメオパシー叩きです。
ホメオパシー批判キャンペーンの皮切りとなった今年7月31日の紙面で、朝日新聞はこう書いています。
【朝日新聞 2010年07月31日】(be report)問われる真偽、ホメオパシー療法 自然派ママの心つかむ「自然派ママ」のホメオパシー人気を焚きつけているのは沢尻エリカや雑誌だ、と言わんばかりの書き方です。しかし実際は、朝日新聞と朝日カルチャーセンターも、「自然派ママ」のホメオパシー人気を焚きつける側でした。それがいまになってホメオパシー叩きです。
(略)
「本当にいいものだから、みんなに知って欲しいんですよ。(中略)病名のつかない症状やメンタルな問題まで対応できる自然療法なんです」
女優の沢尻エリカさんはホメオパシーについて、講談社のファッション誌「グラマラス」5月号のインタビューでそう語った。作家の落合恵子さん経営のクレヨンハウスが出す育児誌「クーヨン」も2007年以降、ホメオパシー関連の記事を掲載している。
クーヨン編集長の吉原美穂さんは「自然な子育てに関心が集まり、化学物質が入った医師の薬に不安を持つ人が多い」と、育児の最中の母親らがひかれる理由を説明する。
国内の代表的なホメオパシー業界団体のひとつ、日本ホメオパシー医学協会(東京)によると、ホメオパシーは今年だけで20回近く雑誌などで紹介され、利用者は国内に数十万人はいるとみられるという。
(略)
【朝日新聞 2010年08月05日】ホメオパシー実態調査、助産師会乗り出す 限りなく薄めた毒を飲み「治癒力高める」そんな「ファッショナブルな自然志向」の装いでホメオパシーの宣伝に協力してきたのが、朝日新聞と朝日カルチャーセンターでした。それがいまになってホメオパシー叩きです。
「ホメオパシー」=キーワード=と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。自然なお産ブームと呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠ははっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。 (福井悠介、岡崎明子)
(略)
「科学と神秘のあいだ」などの著書がある大阪大の菊池誠教授(物理学)の話
原子や分子の存在が分かった今では、「元の物質の分子が残らないほどに希釈した水を含む砂糖玉が体に作用を及ぼす」との考えが科学的におかしいのは明らか。科学的なものは不自然で体に優しくないという信念など、「ファッショナブルな自然志向」の存在が、ホメオパシーをはやらせる背景にあるのではないか。ホメオパシーに頼り、医療を拒否する危険性を理解する必要がある。
こういうのを業界用語(?)でマッチポンプといいます。
これまで放火を手伝ってくれていた朝日新聞が突然バケツリレーを始めたわけですから、日本ホメオパシー医学協会が怒るのも当然です。
■それでも頑張れ、朝日新聞
もっとも、メディアの中で朝日新聞だけがことさらにホメオパシーを称賛してきたわけではなく、たいがいの新聞・雑誌は同じようなものだろうと思います。たまたま朝日新聞がホメオパシー叩きに情熱を注ぎ始めたために、これまでとの矛盾が際立ってしまうだけでしょう。
冒頭に書いたとおり、朝日新聞の一連のホメオパシー批判記事自体は、非常にまっとうで有意義な内容です。また、朝日新聞社や朝日カルチャーセンターの姿勢について、ホメオパシー問題を担当する記者個人に責任はありません。担当記者には、会社の過去とのつじつまなどお構いなしに、これからもホメオパシー問題に対するいまの報道姿勢を貫いてほしいと思います。
本来なら、似非科学や民間療法の普及におけるメディアの責任も追及してほしいし、その場合は朝日新聞自らの過去も振り返ってほしいところですが、朝日新聞にそこまで望むのは無謀でしょう。とりあえず、ホメオパシーそのものの問題を世に伝えるという点において、朝日新聞の今後の報道に期待しましょうか。
8 コメント:
サンプラザ中野くんさんは、ユニークな人ですね。
なまじ早稲田に在学していたもんだから、何をやっても
適当に説得力をもってしまうというか。
ていうかこの記事、朝日を褒めてるんだか貶してるんだか・・・???
新聞記事が、真実か考えながら読む人は、少なくとも週刊誌記事を読む人よりは少ないと
思うので、現時点の真実を知れる事は良い方向だと思います。
今後、問題もあるが広い認識もある療法などと、再び軌道修正しなければ良いですが。
いつも素晴らしい記事をありがとうございます。ホメオパシーを本気でメディアが検証しようとするのは、いい傾向だと思います。
マッチポンプというよりは記事の執筆者が違うだけなのではないでしょうか。朝日新聞という一個の人格は存在せず、記者それぞれが勝手なことをやってるだけなのかもしれません。
山本化学の水着騒動というのがかつてありました。マスコミは「なぜ山本化学の水着を使わない?」と騒ぎ立てました。ところがその水着は大学や研究機関によって調査されておらず高速で泳げるという根拠は立証されていません。また山本化学工業の商品が癌に効果があることもマスコミに繰り返し報道されました。
そしてしばらくしてニュースになったのが、「山本化学工業関連会社、販売会社、薬事法違反で逮捕」の記事でした。どちらの記事を書いた記者も自分なりのルールで書いただけでしょう。バラバラなのだと考えると矛盾はないです。
> マッチポンプというよりは記事の執筆者が違うだけなのではないでしょうか。
> 朝日新聞という一個の人格は存在せず、記者それぞれが勝手なことをやってる
> だけなのかもしれません。
記者ごとの違いはあると思いますが、いわゆる「組織ジャーナリズム」媒体である朝日新聞は、記者それぞれが勝手なことをできるほど無軌道ではないし、メディアとしての責任やモラルを総合的に評価されるのは当然のことです。
> そしてしばらくしてニュースになったのが、「山本化学工業関連会社、販売会社、
> 薬事法違反で逮捕」の記事でした。どちらの記事を書いた記者も自分なりのルール
> で書いただけでしょう。バラバラなのだと考えると矛盾はないです。
ホメオパシー問題も同じなんですが、矛盾しているかどうかより、過去にそういったものをヨイショしてきた事実が問題なんです。過去がおかしいわけだから、いまそれと矛盾することをやるのは、むしろいいことでしょう。だからぼくは、いまの朝日新聞の記事を褒めているんです。
記者ごとに方向性や問題意識が違うのは健全なことですが、インチキなものをヨイショすることは「記者ごとの違い」で許されるレベルではありません。そういうものの宣伝に荷担しておいて、問題が起こると素知らぬ顔で「問題視」して叩く。反省はしない。反省しないから、やがてまた同じように別のものの宣伝に荷担する。
もしこれを「記者ごとに違うだけでしょ」で済ませてしまうなら、これから先も永遠に繰り返されます。メディアが社会問題を誘発し、被害が出てからメディアが問題視するというマッチポンプ・ジャーナリズムが、常に有害なブームと被害者を再生産していくんです。
ぼくはこれを「記者ごとに違うだけでしょ」で済ませる気はないので、今回の記事を書きました。
藤倉さん。
霊友会が記事にならないのは何ででしょうか?
霊友会はたちあがれ日本の支持団体なので
ネトウヨを恐れているのかな?
その団体と社会問題的な側面にかかわるニュースがあれば、何でも書きます。霊友会に限らず、特定の団体について扱わないと決めているわけではありません。
先週の週刊朝日も帯津先生を登場させてるしな.
朝日カルチャーセンターですが、帯津良一がいまだに講座をもっているので、ホメオパシーと縁が切れたわけでないでしょう。
http://www.asahiculture-shinjuku.com/LES/detail.asp?CNO=75965&userflg=0
コメントを投稿