週刊大阪日日新聞

2010/3/20

真西の夕日に彼岸の心 
総本山 四天王寺 日想観(じっそうかん)


▲「日想観の夕日は今も感動をさせられる」と話す森田俊朗執事長

 先祖を供養する春の彼岸会が18日、四天王寺(大阪市天王寺区、593年創建)で始まった。彼岸の中日となる春分・秋分の日には、同寺「石の鳥居」の中を落ちていく夕日を拝む「日想観法要」が執り行われる。日想観は弘法大師・空海が同寺で真西に沈む夕日を見て、西方に極楽浄土を見いだす修行を始めたことに由来する。同寺の森田俊朗執事長に日想観と彼岸に込められた思いを聞いた。

先祖を思い、家族をつなぐ

−彼岸のルーツは四天王寺

 彼岸というのはもともと悟りの境地を意味する言葉です。四天王寺は創建当時、門前までが海でその中に沈んでいく夕日を見ることができました。今でもドラマチックな景色を見せてくれるのだから当時はさぞかしきれいだったと思います。それを見た弘法大師が、ご先祖がいかれる極楽浄土は日の沈んだ向こう側、つまり現世のこちらの岸に対する彼(か)の岸「彼岸」にあると説かれたわけです。そこから春分・秋分の日の前後3日間を加えた7日間がご先祖をまつる行事「彼岸」となったわけです。

−先祖を思うことにどんな意味が

 彼岸は、盆に比べると少し印象が薄いかもしれません。しかし今だからこそ重要視される行事なのです。単なるお墓参りの機会と思われるかもし れませんが、先祖を思う心は、家族を大切に思う心と同じです。現在世代関係の希薄さや親子間のトラブルも多く聞かれます。先祖へ手を合わせる姿を子や孫に見せれば、意味は分からなくても伝わるものは多い。ぼたもちを食べたり、四天王寺の「お大師さん」と呼ばれる縁日に行ったりということを楽しみに来るなどきっかけは何でも結構だと思います。ぜひ小さなうちからお彼岸に触れさせてほしいと思います。

−家族を思えばこそ彼岸会へということですか

 私はよく「極楽浄土というのは黙っていても行けるところではない。精一杯生きてこそ行くことができる」とお話します。仕事や家庭など自分に与えられたことを一生懸命やることが大事なのです。家族のために頑張るんだということをもう一度確認させてくれるのが彼岸であり、その象徴的な瞬間が「日想観」であると思います。


春分・秋分の日に四天王寺の鳥居の中へ沈んでいく夕日


【メモ】
 和宗総本山 四天王寺 ※宗派は問わない
 〈春季彼岸会〉3月18日〜24日
 大阪市天王寺区四天王寺1−11−18 電話:06(6771)0066

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