海自は事故約1年後に調査報告書や再発防止策をまとめたが、海自艦艇事故は後を絶たない。ソマリア沖の海賊対策など海外派遣は拡大し、安全航行の重要性は増す一方だ。自衛官2人の公判は海自にとって、幹部が「肝に銘じ気を引き締めて任務に当たる」と語る“あたごの教訓”を見つめ直す機会となる。
09年5月の防衛省報告書は、長岩被告の不適切な見張り指揮や艦橋と戦闘指揮所(CIC)の連携不足を直接的要因と指摘。防止策として、艦橋内や艦橋・CIC間のやりとりを航行中常に記録する装置を全艦艇に整備したほか、報告・通報を含む見張り能力の向上などを掲げた。
だがあたご以降も接触事故は続き、09年10月には護衛艦「くらま」と韓国船が関門海峡で衝突、くらま艦首が炎上した。
防衛相への報告が1時間以上短縮されるなど改善はみられたが、見張り態勢や回避行動が適切だったかなどは海保や運輸安全委員会が調査中。事故防止の“教訓”が生かされたと言えるか結論は出ていない。【樋岡徹也】
毎日新聞 2010年8月23日 11時50分(最終更新 8月23日 11時55分)