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2010年8月23日 (月曜日)

SPYSEEは違法サイト

SPYSEEというサイトがある。

 SPYSEE
 http://spysee.jp/

勝手に他人の肖像写真を掲載しまくっているサイトだ。つまり,デフォルトで著作権侵害,肖像権侵害,パブリシティ権侵害を基礎とする根っからの違法サイトだ。

しかも,ある特定の個人と関係があるとして誰か別の特定の個人とのリンクのようなものを表示する機能もあるが,無関係な人までリンクを形成することは事案によっては重大な名誉毀損行為となる。

もちろん,私の写真も掲載されているが,それは別サイトに限定して掲載することを条件として提供した私の著作物なので,明らかに複製権及び公衆送信権の侵害になる。さきほど,警告のメッセージを送信し,サービスの提供を停止するように勧告した上で,適切に対応しない場合には著作権法違反の罪で告訴することを通知した。以前,別の人を通じてやんわりと警告したのに改善が見られなかったことからこのようにした。損害賠償請求をするかどうかはまだ検討していない。

また,特に親しいわけでもない人,交際があるわけでもない人,私にとっては決して賛同することができない思想の持ち主,全く知らない人等との直接のリンクが形成されており,そのこと自体で名誉毀損が成立することは疑うべき余地がない。勝手にリンクされた人にとっても非常に迷惑なことがあるだろう。その場合,それらの人々についても名誉毀損が発生する。私と親しいということだけで不利な扱いを受けることになるかもしれない人だって広い世間にはきっとあるはずだ。そのような場合,とんでもない被害が発生することになる。

私自身との関係に限定して例をあげると,このサイトでリンクが形成されている人の中には面識が全くなく,著作も知らず,名前さえ知らなかった人が含まれている。関連項目の中には「まりこ」というパチンコ関連のことが含まれているけれども私は賭け事を一切しないしパチンコにも興味はない。このことは,サイトの信頼性がゼロであることを示しているというだけではなく,他人の社会的評価について誤った印象を提供するという意味で明らかに名誉毀損を構成するのだ。[本日午前10時時点で確認]

もしこのサイトが警告に従ってサービス提供を停止しないときは,著作権侵害の罪と併せて名誉毀損の罪でも告訴することになるだろう。事業者は東京都文京区に主たる事務所を置く株式会社オーマ(代表者石田啓介)という会社なのだが,セマンティックウェブなどまやかし以外のなにものでもないということを知らないことに最大の誤りがある。意味論は,そんじょそこらの人に扱えるような簡単なものじゃない。意味論に関する理論研究はあまたあるけれどもどれも完全ではない。しかも,特定の理論に基づいてセマンティックウェブを実装したサービスを提供した場合,とてつもなく大きな社会的弊害が発生することをまともな法律家であれば誰でも正確に理解している。だから,まともな顧問弁護士等がいる企業等では迂闊にこの分野に手を出すことがないのだ。

なお,代表者の「石田啓介」という人は,自分の写真を外に晒していない。SPYSEEで検索しても具体的内容な何も表示されない。このサイトで表示されるとどのような社会的な不利益があるかをちゃんと認識しているのだ。主催者の側では自分がやっていることの社会的有害性を十分に承知しておりながら,このサイトに勝手に形成された人々の被害については全く知らぬフリをしているという点で,非常に悪質であり違法性が極めて高い事例の一つということができるだろう。

本来,こういうことは警察や消費者庁などが適宜巡回して,どんどん摘発しなければならないのだが,やるべきことをせず,社会問題化してから重い腰を上げるのが行政庁の通弊なので役にたたない。

サイトの運営者は納得できないかもしれないが,逮捕され拘置所の中で過ごすようになれば,その間に少しは頭が冷え,まともなことを考えることができるようになるだろう。ベストの解は,逮捕されないようにサービスを全面終了することだ。

さて,同種のサイトはいくらでもある。違法・有害サイトとして取締りを強化し,徹底してサービス停止に追い込まなければならない。

[追記:2010年8月23日]

以前,情報倫理の大家と自他共に認める某教授が根本的に間違った説明をしていたことを思い出したので追記というかたちで付記する。

その某教授は,もちろん法学を専攻した人ではなく,要するに素人なので責める気はないが,間違いは間違いだ。

すなわち,彼の説によると,「名誉毀損や著作権侵害については,告訴があるまでは違法とならず,適法行為だ」というのだ。

まともな法律家であれば,この説が根本から間違っていることはすぐに理解できるだろうから説明を要しないと思われる。ただ,このブログの読者の中には法律家でない人も多数含まれるので,あえて説明しておくと,次のようになる。

1)刑事において,告訴がなくても名誉毀損行為や著作権侵害行為が違法行為であることには何らの変わりもない。告訴があった時点で遡って当該行為が違法となるわけではない。告訴がなければ,犯罪として捜査し起訴し,有罪の判決をすることができないだけのことだ。

2)民事において,告訴制度がそもそも存在しない。被害者は,加害者に対し,刑事事件としての告訴の有無とは完全に無関係に,著作権侵害や名誉毀損行為について,いつでも損害賠償請求訴訟や差止請求訴訟を提起することができる。

[追記:2010年8月24日]

このサイトは,個人情報取扱事業者としても問題があると解する。顔の写真だけでも個人情報であり,その数は優に1万以上であると推定できるが,その取扱いが適正でないのだ。このことは,個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者の義務違反があることを意味する。

しかし,主務大臣はいずれも個人情報保護の専門家ではない単なる政治家なので,個人情報保護法は正常に機能しない。

この事例は,個人情報保護法が徹頭徹尾駄目法律であることを証明するためにも貴重な素材の一つであると言える。

私のような一介の大学教授にこのようなことを書かれて悔しと感ずるのであれば,主務大臣としての職務を適正かつ厳格に遂行することによって,ちゃんと能力があるということを証明してみせてほしいものだ。そのような証明があれば,私も納得することができるだろう。逆に悔しいとも何とも感じないのであれば,不感症であり,部下に指示するだけの執務能力にも欠くところのある主務大臣であると判定することにする。

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コメント

anonymousさん こんにちは。

匿名での質問には回答しないことにしていますが,この記事に対するアクセス数が多いことに鑑み,回答することにします。

著作権法の改正により,検索を業とする企業がその業務の遂行のためにロボットを用いて自動収集する場合には,著作権者の許諾なしにサムネイル等の画像を複製及び自動公衆送信することができることになりました(著作権法47条の6)。

gooが検索を主たる目的として設立された会社であるとすれば,著作権法47条の6の適用があります。

しかし,それは著作権者からの許諾がなくても自動収集した画像の複製や自動公衆送信等ができるというだけのことで,当該画像に関する著作権者の著作権が消滅しているわけではありません。したがって,著作権者から当該画像について利用停止の請求があれば,複製したデータを消去し公衆送信をやめなければならないことになると解されます。そして,そのような請求があったのに,利用を停止せず,その画像の複製や自動公衆送信等を継続した場合には,明らかに違法行為となると解されます。

また,問題となる企業が検索を主たる業務とする会社でない場合には,上記の著作権法の規定の適用はありませんので,違法行為となります。

加えて,自動的なデータの収集だけではなく,誰かが手作業で画像等を添付してサイトが構築されるような仕組みになっている場合にも上記の著作権法の規定の適用がありませんので,違法行為になります。複合的なものでも同じです。

そして,著作権法は著作権だけに関するものですので,当該画像が肖像権やパブリシティ権と関係するものである場合,著作権法によっては肖像権やパブリシティ権の侵害を阻止することができません。

gooのサイトにおいて表示されている画像の中で著作権だけが問題となるものであれば上記の著作権法の規定の有無によって解決することになりますが,著作権以外の権利も問題となる場合には,問題を解決する方法は個別かつ事前に許諾をとる以外にありません。

そして,画像が肖像権やパブリシティ権のような著作権以外の権利を含まない場合であっても,全体として当該個人について誤った印象を与えるようなものとなっている場合には名誉毀損となることがあります。上記の著作権法の規定は,そのような意味での名誉毀損の発生を阻止することができません。

以上のような観点からすると,gooの場合でも違法である部分を多々含んでいると解されます。肖像画像のように著作権以外の権利が問題となり得る画像についてはそれを自動的に検出して自動的に消去し,自動公衆送信されないように自動的に前処理してしまうような仕組みを導入しない限り,違法性が否定されることはないでしょう。

なお,私が問題としているSPYSEEのサイトは,主に肖像を示す画像によって構成されています。そして,自動収集だけではなく,個別のマニュアル操作によって画像の添付や削除,リンクの生成などが形成されるようになっています。しかも,生成された結果は,本人が驚くようなでたらめのものですので名誉毀損を構成しないはずがありません。SPYSEEは単なるプロバイダではなくSPYSEEのサービス提供が業務内容となっているので,プロバイダ責任制限法の適用もありません。加えて,SPYSEEを経営する会社は検索を主たる業とする会社ではありません。ビジネスモデルそれ自体が完全に違法だと考えるべきことになるでしょう。

投稿: 夏井高人 | 2010年8月24日 (火曜日) 07時50分

このサイトも違法でしょうか?
http://goo.gl/mPLt

投稿: anonymous | 2010年8月24日 (火曜日) 02時42分

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