「オシリス神をかたどった王の巨像頭部」(事故の前)=トリノ・エジプト博物館所蔵
静岡県立美術館で22日まで展示されていた石像「オシリス神をかたどった王の巨像頭部」(イタリアのトリノ・エジプト博物館所蔵)が、撤収作業中に破損した。作業を担当した日本通運と主催者の朝日新聞社、東映が24日、発表した。
事故が起きたのは23日正午ごろ。同美術館で22日まで開催されていた「トリノ・エジプト展――イタリアが愛した美の遺産」の撤収作業中、同像を昇降装置に載せて床に降ろす際、昇降装置がバランスを崩して転倒。像が床にぶつかって破損した。
像はもともと6〜7個の部分を修復し、つなぎ合わせた状態だった。このうち、王の顔面部分は無事だったが、頭部の冠にあたる部分が修復を施した部分で割れ、新たな破損も生じたという。
像は高さ149センチ、幅48センチ、奥行き60センチの砂岩製。エジプト新王国時代第18王朝のトトメス1世の治世期(紀元前1504〜同1492年ごろ)に、作られたとされる。
「トリノ・エジプト展」は、同博物館所蔵の約120点を紹介。2009年8月、東京で開幕し、仙台、福岡、神戸の各市を巡回、静岡が国内最後の展示会場だった。
同博物館のエレーニ・バシリカ館長は「全国5会場の巡回を通じての、日本の主催者による作品の取り扱いは、きわめて質の高いものでした。今回の事故によって、トリノ・エジプト博物館と日本の主催者の関係に変化が生じることはありません。イタリアが誇る一流の修復技術者の手に委ね、丹念に時間をかけて復元したいと思います」とのコメントを出した。
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主催者の朝日新聞社と東映の話 22日に閉幕した「トリノ・エジプト展」の撤収作業中に貴重な文化財を損傷したことは誠に遺憾で、事態を大変重く受け止めております。収蔵品をお貸しいただいたトリノ・エジプト博物館に、主催者としておわびするとともに、修復に向けて全面的に協力させていただきます。