福岡市の旅行業者が組織した観光ツアーの客8人と業者1人の日本人計9人が23日、ロシアの査証(ビザ)を取得して北方四島の国後島を訪問したことが分かった。日本人グループがロシアのビザを取って北方四島への観光ツアーを行ったのは初めてとみられる。
外務省ロシア課は「事実なら閣議了解に反し、極めて遺憾」とし、調査に乗り出すとしている。
日本政府は日本人がロシアのビザで北方四島を訪れることはロシアの実効支配を認めることにつながりかねないとして、89年の閣議了解に基づき、自粛を要請してきた。しかし今回の旅行業者は無視していた。
四島では7月にも北海道のメーカー技術者など2人が択捉島に渡るなど、日本人の渡航が続いている。今回、観光ツアーが表面化したことで、自粛要請のなし崩しが進む恐れが強まった。
国後島の古釜布(ロシア名ユジノクリーリスク)に入った旅行業者は共同通信の電話取材に対し、政府の自粛要請は知っていることを認めた上で「お客さんは皆70歳以上。世界各国を回られていて、行くところがなく、生きているうちには返還にはならないだろうということで、自分の目で日本領土だったところを見てみたい、というのが目的」と説明した。
ツアー客は東京都と大阪府のほか千葉、神奈川、富山、兵庫の4県から来た72歳から84歳の男女計8人という。いずれも北方四島の元島民ではない。ツアーは客の要望を受けて企画したが、公に募集はしなかった。
02年には非政府組織(NGO)の「ピースボート」の約530人が国後島を訪れ、外務省がロシア側の入国手続きに従ったとして批判したが、ビザは取っていなかった。
一行は23日にロシア極東サハリン州ユジノサハリンスクから空路で入域。国後島で観光名所を回り、択捉島も訪れる予定という。(共同)
毎日新聞 2010年8月23日 21時46分