日本は中国の軍事的脅威に対抗できるのか
2010年08月23日13時06分 / 提供:Business Media 誠
民主党代表選をめぐって、対立が激しくなりつつあるように見える。積極的であれ消極的であれ菅代表の続投を望む一派と、小沢前幹事長の出馬を期待する一派が角をつき合わせている。この動きを意識してか、菅総理の発言は参院選以降ずっと低姿勢のままだ。しかし低姿勢でいればいるほど、今の日本はどんどん深みにはまってしまう。
そのいい例はもちろん経済である。日本政府の動きが鈍いことを見越して、ドルやユーロを売って円を買う動きがある。日本がこれだけデフレに苦しみ、この20年間というものほぼゼロ成長に近いというのに円が買われる。もちろん経済が強いのなら通貨が高くなるのはまあ理解できるし、通貨が高くなれば輸出産業もより高度化あるいは高付加価値化するように努力するから産業構造も変わっていく。結果的に経済はさらに強くなるという好循環になるから円高も悪くはない。
しかし今の円高は違う。ドル安、ユーロ安の裏返しとしての円高。それも政府や日銀による為替介入もないことを見越しての円買いである。もちろんギリシア風に日本の国債の返済不能が取りざたされることは、ここ当分はないと踏んでの円買いだ(だから国債はまだまだ発行できると主張する元大蔵官僚もいるが、その説には納得できない)。
●中国海軍の動きが活発化
経済でも外国の諸勢力にいいようにやられているようだが、経済だけではない。鳩山前首相が「ぶっ壊して」しまった沖縄の普天間基地移設問題。沖縄の基地をめぐって日米の根深い対立があることを利用して中国海軍の動きが活発化している。中でも米国やアジア諸国が気にしているのが中国海軍が建造中の空母だ。空母の就役に向けて航空機の着艦訓練を行う基地も建設するなど着々と準備が進んでいる。
そして沖縄周辺でも活発に活動をしている。グーグルの地図を見ると、中国が太平洋に進出しようとすると、沖縄はまさにフタをするような形で存在している。その意味では、沖縄の米軍基地がどうなるかは、中国にとって極めて重要な問題だ。それに中国は、近い海域で米軍空母機動部隊が演習を行うことに非常に神経質だ。先日も米韓軍事演習が黄海で行われることに強い不快感を示した。
そこにまた気になるニュースがあった。日本の防衛省が新たに策定した沖縄・南西諸島防衛警備計画に基づいて、米軍と共同で陸海空自衛隊による初の「離島奪還訓練」が行われるというのである。かつてある自衛隊OBから聞いたことがある。「自衛隊は本土を守ることはできても、離島を占領されたら奪回することはほとんど不可能だ」
離島を占拠した敵を攻撃する能力の問題だという。最終的には陸上部隊が上陸しなければならないが、その前に敵を叩いておくことが必要である。しかし現在の海上自衛隊や航空自衛隊は地上を攻撃することがきわめて限定的にしか想定されていない。自国を防衛するためには、空から侵入する敵と海から侵入する敵を早い段階で叩くことが前提となっているからである。
●自衛隊だけで離島は奪還できない
この離島を占拠する「仮想敵国」は中国だ。読売新聞によれば、防衛省幹部は「中国に対し、日本は南西諸島を守りきる意思と能力があることを示す」と語っている。
しかし明白なのは、自衛隊だけで離島を奪還するのは限りなく不可能に近いということだ。だからこそ米軍との共同訓練ということになるが、そこに影を落としているのが普天間基地移設問題であるということだ。
最近、しきりに米国側から流される懸念は、「日本と米国が普天間問題にとらわれ、現実的な問題について議論する時間がなくなっている」ということだ。そしてこの間隙を縫うように中国海軍が活発な動きを示している。
この普天間問題をぶっ壊してしまったのは、鳩山前首相である。これが外交上、安全保障上にどれだけの損失を与えてしまったのか、鳩山前首相や菅現首相はお分かりになっているのだろうか。そう思ってしまうのは、政界を引退すると言っていた鳩山さんがこのところ何かと発言していることや、菅総理は普天間問題を安全保証の観点から国民や沖縄県民を説得しようとするスタンスが感じられないからである。
政治とは政敵や国民を説得することだと思うが、この観点からすると安倍さん以降の総理はいずれも落第点しか与えられない。果たして菅総理はどうなのだろうか。もし力強いメッセージを発信することがあるとしても、代表選以降。世界経済も中国海軍も、それまで待ってくれるのだろうか。【藤田正美,Business Media 誠】
■関連記事
官僚の手で、産業構造を変えることができるのか
政治や行政の失敗責任は誰がとるのか?
「ニホンが世界の中心」という考え方の功罪
【中国】に関連する最新記事
【政府】に関連する最新記事
そのいい例はもちろん経済である。日本政府の動きが鈍いことを見越して、ドルやユーロを売って円を買う動きがある。日本がこれだけデフレに苦しみ、この20年間というものほぼゼロ成長に近いというのに円が買われる。もちろん経済が強いのなら通貨が高くなるのはまあ理解できるし、通貨が高くなれば輸出産業もより高度化あるいは高付加価値化するように努力するから産業構造も変わっていく。結果的に経済はさらに強くなるという好循環になるから円高も悪くはない。
しかし今の円高は違う。ドル安、ユーロ安の裏返しとしての円高。それも政府や日銀による為替介入もないことを見越しての円買いである。もちろんギリシア風に日本の国債の返済不能が取りざたされることは、ここ当分はないと踏んでの円買いだ(だから国債はまだまだ発行できると主張する元大蔵官僚もいるが、その説には納得できない)。
●中国海軍の動きが活発化
経済でも外国の諸勢力にいいようにやられているようだが、経済だけではない。鳩山前首相が「ぶっ壊して」しまった沖縄の普天間基地移設問題。沖縄の基地をめぐって日米の根深い対立があることを利用して中国海軍の動きが活発化している。中でも米国やアジア諸国が気にしているのが中国海軍が建造中の空母だ。空母の就役に向けて航空機の着艦訓練を行う基地も建設するなど着々と準備が進んでいる。
そして沖縄周辺でも活発に活動をしている。グーグルの地図を見ると、中国が太平洋に進出しようとすると、沖縄はまさにフタをするような形で存在している。その意味では、沖縄の米軍基地がどうなるかは、中国にとって極めて重要な問題だ。それに中国は、近い海域で米軍空母機動部隊が演習を行うことに非常に神経質だ。先日も米韓軍事演習が黄海で行われることに強い不快感を示した。
そこにまた気になるニュースがあった。日本の防衛省が新たに策定した沖縄・南西諸島防衛警備計画に基づいて、米軍と共同で陸海空自衛隊による初の「離島奪還訓練」が行われるというのである。かつてある自衛隊OBから聞いたことがある。「自衛隊は本土を守ることはできても、離島を占領されたら奪回することはほとんど不可能だ」
離島を占拠した敵を攻撃する能力の問題だという。最終的には陸上部隊が上陸しなければならないが、その前に敵を叩いておくことが必要である。しかし現在の海上自衛隊や航空自衛隊は地上を攻撃することがきわめて限定的にしか想定されていない。自国を防衛するためには、空から侵入する敵と海から侵入する敵を早い段階で叩くことが前提となっているからである。
●自衛隊だけで離島は奪還できない
この離島を占拠する「仮想敵国」は中国だ。読売新聞によれば、防衛省幹部は「中国に対し、日本は南西諸島を守りきる意思と能力があることを示す」と語っている。
しかし明白なのは、自衛隊だけで離島を奪還するのは限りなく不可能に近いということだ。だからこそ米軍との共同訓練ということになるが、そこに影を落としているのが普天間基地移設問題であるということだ。
最近、しきりに米国側から流される懸念は、「日本と米国が普天間問題にとらわれ、現実的な問題について議論する時間がなくなっている」ということだ。そしてこの間隙を縫うように中国海軍が活発な動きを示している。
この普天間問題をぶっ壊してしまったのは、鳩山前首相である。これが外交上、安全保障上にどれだけの損失を与えてしまったのか、鳩山前首相や菅現首相はお分かりになっているのだろうか。そう思ってしまうのは、政界を引退すると言っていた鳩山さんがこのところ何かと発言していることや、菅総理は普天間問題を安全保証の観点から国民や沖縄県民を説得しようとするスタンスが感じられないからである。
政治とは政敵や国民を説得することだと思うが、この観点からすると安倍さん以降の総理はいずれも落第点しか与えられない。果たして菅総理はどうなのだろうか。もし力強いメッセージを発信することがあるとしても、代表選以降。世界経済も中国海軍も、それまで待ってくれるのだろうか。【藤田正美,Business Media 誠】
■関連記事
官僚の手で、産業構造を変えることができるのか
政治や行政の失敗責任は誰がとるのか?
「ニホンが世界の中心」という考え方の功罪
【中国】に関連する最新記事
【政府】に関連する最新記事
Ads by Google
コメントするにはログインが必要です
関連ニュース:中国
- トウモロコシ枯渇のうわさ、国家備蓄100万トンを放出―中国
Record China 08月24日08時06分
- 白頭山へ向かうバスが転覆、韓国人10人死傷朝鮮日報 08月24日07時24分
- <中華経済>政府系ファンドの匯金公司が巨額起債、1875億元を調達―中国Record China 08月24日07時13分
- バス乗っ取りの人質死者8人に共同通信 08月24日06時24分
- 小倉会長が示唆 28日までに決まる?スポニチ 08月24日06時01分
政治アクセスランキング
- <大阪市>職員を9000人以上削減へ 23年度末までに毎日新聞 23日21時22分
- なぜだ 美人すぎる秘書が鳩山邦事務所を辞めちゃったゲンダイネット 23日10時00分(11)
- 何にしても小沢氏は決起する早川忠孝の一念発起・日々新たなり 23日09時55分
- 民主代表選、戦闘モード突入“反菅”小沢に出馬要請へ
ZAKZAK(夕刊フジ) 23日17時00分
- 三原じゅん子 小沢一郎氏の民主代表選出馬報道に疑問
アメーバニュース 23日10時22分(13)
- みんなの党の誤ったアジェンダアゴラ(池田信夫) - 言論プラットフォーム 23日14時04分(27)
- 日本は中国の軍事的脅威に対抗できるのかBusiness Media 誠 23日13時06分(23)
- 民主党の党内政局の?山内康一の「蟷螂(とうろう)の斧」 23日08時09分
- 専決処分は「市民のため」
共同通信 23日18時22分(9)
- 猛暑で急増! 盗撮マニア 卑劣ハイテク手口ゲンダイネット 23日10時00分
注目の情報
LUMIXの新キャラクター綾瀬はるかが突然小さくなってしまった!?
タッチして大きくしてあげて!!「はるかにタッチゲーム」
タッチしてくれた人の中からその場で3000名にプレゼントが当たる♪
9月20日まで!今すぐタッチ♪≫