きょうの社説 2010年8月24日

◎遅れる地域福祉計画 実践活動はもう待ったなし
 高齢者の社会的孤立を防ぐ取り組みなど地域の福祉施策、活動の指針となる市町村の「 地域福祉計画」の策定が政府の思うほど進まず、今年3月末で策定済み市町村は全体の48%強にとどまっている。北陸の策定率は福井が94%と高く、富山は67%、石川はまだ26%という状況である。地域福祉計画の策定が法律でうたわれたのは2000年に社会福祉法が改正されてからで、その歩みは遅いと言わざるを得ない。

 計画策定は市町村の努力義務であり、策定の遅れで自治体の福祉行政に直接支障が生じ ることはないとしても、一人暮らしの高齢者の孤立問題が深刻さを増す現状を考えれば、地域住民と行政、福祉事業者が一体となって地域福祉を推進するという法の趣旨は一段と重要性を増している。その理念に基づき、高齢者を支え合うネットワークづくりの推進など、地域福祉計画で想定される取り組みの実践は待ったなしである。

 今年の高齢社会白書によると、現在465万人と推計される65歳以上の一人暮らしは 増加の一途をたどり、20年後には717万人になると見込まれる。これまでの独居老人は女性が多かったが、今後は男性の一人暮らしも増える。しかも、女性より男性の方が近所付き合いが少ないなど、孤立化の傾向が強いという。

 白書は、こうした状況への対応策の一つとして、地域の元気なお年寄りが孤立高齢者の 「支え手」になることを提言している。その役割を担ってきた老人クラブの加入率は低下しているが、それに代わる新しい動きも見られる。

 例えば、高齢・独居化が進む金沢市の県営大桑団地では、65歳以上の女性が中心にな り、趣味や特技を披露し合って、高齢者の引きこもりの解消・防止をめざす会が作られた。70、80代の元気な女性がけん引するこの会は、高齢者の引きこもりを防ぐ上で重要な「つながり」と「居場所」を、お年寄り自らつくる試みである。

 高齢者のつながり、居場所づくりは、地域福祉計画の柱となる活動である。自治体は計 画策定が遅れても、推進すべき施策を先延ばしすることはできない。

◎民主党代表選 国民に向けた政策論争を
 民主党代表選は9月1日の告示へ向け、菅直人首相再選支持派と「反菅」勢力による多 数派工作が激しさを増してきた。政権交代から1年が経とうとする今、衆院選公約は修正を余儀なくされ、重要政策や政権運営の在り方をめぐっても党内は一枚岩には程遠い。代表選が近づき、亀裂はさらに広がったように見える。

 秋には本格的な「ねじれ国会」が始まる。党が安定しないと、ただでさえ困難な政権運 営は立ちゆかなくなるだろう。代表選がこの1年間の民主党政治を問い直し、党の基本政策を磨き上げる機会になるなら大きな意味がある。

 だが、前哨戦を見る限り、党内抗争はさらにエスカレートしかねない状況にある。反菅 勢力の間で小沢一郎前幹事長の出馬待望論が急速に高まる一方、菅首相は新人議員との対話集会を始めた。首相は小沢氏を含む挙党態勢の構築を強調し、「脱小沢」路線の転換も示唆したが、代表選が小沢か反小沢かを軸とする合従連衡に終わっていいはずがない。

 民主党代表選は今や首相を選ぶ場である。政権党にふさわしく、在るべき日本の国家像 や外交・安保問題などを真正面から論じる必要がある。減速感が鮮明になってきた景気へのテコ入れ策は急務である。内向きでなく、国民へ向けた政策論争が求められている。

 菅首相は就任時の自信や迫力が影を潜め、代表選しか眼中にないような余裕のなさは党 内基盤の弱さと合わせ、頼りなさを印象づけている。首相支持派の「1年で首相が3人も代わるのはおかしい」という消極的な続投理由では国民の支持も広がっていかないだろう。

 一方、小沢氏は鳩山グループの懇親会に姿を見せ、反菅陣営を勢いづかせた。鳩山由紀 夫、小沢両氏は政権運営行き詰まりの責任を取ってダブル辞任してから3カ月足らずである。「小鳩態勢」復権で党内の主導権を握るような動きには違和感もぬぐえない。

 小沢氏にしても検察審査会の議決を控えた身である。出馬するのであれば、政治資金問 題で自ら説明を尽くし、ケジメをつける覚悟が問われることになる。