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冷凍精液がオオサンショウウオを救う?

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト8月23日(月) 18時14分配信 / 海外 - 海外総合
北米最大のサンショウウオ「ヘルベンダー」(資料写真)。成体の体長は約70センチになる。
(Photograph by Joel Sartore National Geographic)
 絶滅が危ぶまれる北米最大のサンショウウオ「ヘルベンダー」の精液が冷凍保存された。繁殖が成功するか見通しは不透明だが、絶滅から救う最後のチャンスとなるかもしれない。

 ヘルベンダーは70センチ前後まで成長し、地元では“横柄なカワウソ(snot otter)”、“悪魔の犬(devil dog)”とも呼ばれている。かつてはニューヨーク州からアーカンソー州北東部にかけての河川に生息していたが、最近は数が減少している。

 テネシー州のナッシュビル動物園で爬虫類を担当するデイル・マクギニティ氏によると、ヘルベンダーが昔から命を繋いできたほとんどの流域で、生息数がこの数十年来80〜90%も減少しており、現在はアパラチア地方南部の周囲から隔絶した地域で姿を見せるだけだという。

「ヘルベンダーは現在、分布するすべての州で“特別懸念”に指定されており、米国魚類野生生物局でも連邦の絶滅危惧種リストに追加すべきかどうか検討している最中だ。減少の理由は不明だが、皮膚の透過性が高いことから、農薬など環境汚染物質の影響を受けている可能性が高い」と同氏は指摘する。

「さらに困ったことに、自然繁殖している様子がまったくない。合成ホルモンなど人工の汚染物質による生殖器官へのダメージが心配だ。実際の所、若く活発なヘルベンダーの姿は見あたらず、老齢の個体しか生息していないようだ。ちなみにこの種の寿命は30〜80年と非常に長い」。

 2009年9月、ヘルベンダーの個体数減少を懸念した国際的な研究者チームが、飼育されている数匹の個体から精液を採取し冷凍保存した。動物の精液を細胞膜を破壊せず冷凍保存する処置は、ヘルベンダーに限らず動物園では一般的に行われている。

「ヘルベンダーの飼育下繁殖はこれまでにも数カ所の動物園が積極的に取り組んだが、顕著な成功例はない」と、前出のマクギニティ氏は話す。不首尾に終わる理由は不明だが、生まれた河川の水温を正確に再現できないことが原因との見方もある。

「生きたサンショウウオから精液を採取し、冷凍保存を経て解凍するという一連の処理は今回が初だ」と語る同氏は、ベルギーのアントワープ動物園やアメリカのミシガン州立大学から参加した研究者とともにこの精液保存プロジェクトに取り組んでいる。

 チームのメンバーでミシガン州立大学の生殖病理学者ダレン・アグニュー氏は、「絶滅を防ぐ一種の保険のようなもので、冷凍精液があれば専門家がいずれヘルベンダーの繁殖を管理することもできる」と説明する。

 例えば、冷凍精液を使って交配を行い、野生のヘルベンダーの遺伝的多様性を保つこともできる。近親交配で生まれた個体は体が弱く、病気に感染しやすくなるため、種の存続という観点で遺伝的多様性は欠かせない要素だ。

「この大きな軟らかい体の生物は、ニックネームから連想される凶暴性はなく、むしろ穏やかな性格と言っていい」とアグニュー氏は言う。「ヘルベンダーの精液は前肢と尾の間あたりをこすって絞り出すが、おとなしいから作業に手間取ることもない」と、ナッシュビル動物園のマクギニティ氏も話す。

 しかも繁殖時期であれば、そのような誘導行為さえ必要ない。アグニュー氏によれば、「体を持ち上げるだけで精液が溢れ出てくる」という。採取の準備が整うまで、むやみに持ち上げない方がいいらしい。

 同氏は、ヘルベンダーの精子も他の両生類と同様、リボン状の組織が尾を取り巻いていることを発見した。顕微鏡で40倍に拡大すると、ワインのコルク栓抜きが回転しているように見えるという。このリボン状の組織は精子の推進力の一端を担っている可能性がある。

 アグニュー氏らのチームは、特殊な“レシピ”の保存料で活性を維持したまま6カ月間の保存に成功している。条件さえ合えば数百年の保存も可能だという。

 ナッシュビル動物園のマクギニティ氏はこう話す。「ヘルベンダーは恐竜の時代から姿形がほとんど変わっていない特異な種であり、近縁種と言えば中国に生息するチュウゴクオオサンショウウオと日本のオオサンショウウオの2種しかいない。もし彼らを失えば進化の歴史に大きな穴が開く。かけがえのない生き物なんだ」。

Christine Dell'Amore for National Geographic News

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  • 最終更新:8月23日(月) 18時14分
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