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2010年8月23日 (月)

「読売 大相撲」56年の歴史に幕

1954年(昭和29年)以来56「間、唯一の角界のオピニオン雑誌と呼ばれてきた「大相撲」(読売新聞社)が8月24日発売の9月号(最終号)で休刊となります。

 スポーツの多様化、相撲人気の衰退を受けての部数低迷が原因で、休刊とはいえ、復活の見通しはなく、事実上の廃刊と言わなければなりません。

 野球賭博問題など一連の角界不祥事は本来なら同誌が斬り込むべき話題だけに、角界再生を望む好角家からの惜しむ声が挙がっています。

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 昭和29年の創刊号と、今年8月の最終号を持つ長山さん。1987年間から23年間、この雑誌の編集に携わりました。相撲の手さばきや歴史に関しては私の師匠です。

  最終号を校了した後の「大相撲」編集担当の机上には休刊を惜しむ読者からの手紙が積まれていました。「問題山積の今こそ『大相撲』が報じるべきことがあるのではないのか」「復刊はいつですか?」「本当に相撲を理解している書き手が減ってきたのではないか」などの声が寄せられました。多くは60代以上の男性相撲ファン。中には40年以上休まず購読し続けているという人もいたそうです。

 昨年6月に相撲専門誌初の女性編集長となった安倍七重編集長(44)は「最後になっていろんな事件が噴出して、これからの相撲界が追い掛けられないことがとても残念です」とおっしゃっていました。その思いを込めて最終号で組んだ特集は「相撲界 再生への提言」でした。中島隆信慶大商学部教授、漫画家のやくみつるさんなど相撲界のご意見番からの提言を25ページにわたって掲載しています。

 「大相撲」は1954年4月に月刊誌「読売スポーツ」の臨時増刊号として創刊。栃錦、初代・若乃花が活躍した「栃若時代」の幕開けとほぼ同時の創刊で、柏戸、大鵬の「柏鵬時代」の1960年代(昭和30年代後半)に最盛期を迎え、10数万部を発行する月刊誌でした。平成に入ってからのピークは「若・貴ブーム」でにぎわった1990年代初め。まだ平幕だった貴花田が初優勝した1992年初場所決算号は5万部が即日完売したそうです。

 しかし2003年初場所で横綱・貴乃花が引退した後は、相撲人気と連動するように低迷。平成の大横綱からバトンタッチするように横綱に昇進したのは朝青龍でしたが、アンチヒーロー的な要素が強く、部数アップには結びつきませんでした。昨年の7月号で隔月刊化してからは毎号約2万4000部を発行していたが、復活は見込めず、今年5月25日付の読売新聞朝刊の社告で休刊を発表しました。

 ベースボールマガジン社が出す月刊「相撲」で20年以上編集長を務め、現在は同誌顧問の下家義久氏(65)もライバル誌が去ることに寂しそうでした。「昭和40年代から夢中になって読んでいた。褒めて育てる姿勢の『相撲』と、野にいるからこそ自由に言える『大相撲』とは昔からファン層のすみ分けがあったと思う。読者からすれば、自由な発想で面白いことをやって欲しい、という期待は最後まであったのではないか」と話しました。

 スキャンダルを報じる週刊誌とは違い、角界の発展を願うがゆえの愛情と厳しさのさじ加減は、究極的な問題だった。1987年から23年間、同誌の編集に携わってきた長山聡さん(54)が考えたのは、貴乃花親方に焦点を当てていくことでした。2007年頃から同親方のインタビュー記事を増やし始めた。長山さんは「一番深刻なのは魂がこもっているとは感じられない相撲が増えたことです。自分が取材して来た中で、ナンバーワンの力士だった貴乃花親方に話して頂くのが一番だと考えたからです」。編集方針に共感した貴乃花親方が最も取材に協力する媒体の一つでもありました。

 相撲記者クラブ内でも「生き字引」と呼ばれ、横綱・白鵬からも「一番相撲を分かっている人」と太鼓判を押されていた長山さんも、最終号をもって「引退」。関連会社へ出向となります。「スポーツと伝統文化が融合した世界に類例がないのが相撲です。正しい形で後世に伝わって欲しいというのが最後の願いです」と強調していらしたのが印象に残りました。

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甲斐毅彦

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