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2004年5月30日
民主・鳩山元代表を直撃

<<ズバリ核心>>  民主党・鳩山由紀夫元代表を直撃    小林吉弥(政治評論家)

岡田代表 誠実さで勝負
菅体制の“縛り”外れる


 今国会の会期末が迫り、参院選が近づく中で、岡田新体制となった民主党の鳩山由紀夫元代表=写真=に「党再生の鍵」を聞いた。鳩山氏は党内最大グループを率いる一方、新体制の中では常任幹事会のメンバーにはとどまったが、小沢一郎、菅直人、羽田孜のほかの最高幹部クラスと同様、役員ポストには就かず、「若葉マーク」の岡田克也代表を裏方として支える立場に回っている。

 先日、鳩山氏は衆院本会議で「小泉訪朝」に対する代表質問に立った。問題点を多々残したとも言われる訪朝だったが、報道各社の世論調査結果はおおむね65%前後が「拉致問題前進」の評価を打ち出している。「小泉パフォーマンス」の前に、民主党新体制の出はなをくじかれた感もある。民主党は参院選の争点に、「年金抜本改革」に次いで、「拉致問題」を掲げている。鳩山氏にとって、一番の問題点は何か。氏は党の拉致問題対策本部長でもある。「最も看過できないのは5人の拉致家族の帰国、10人のほかの安否再調査だけに限定、100人以上とされるほかの行方不明者の問題を捨てての“幕引き”がうかがえるということだ。拉致問題の全面解決を捨てての小泉総理の功名心、参院選対策が見え隠れしている。人の命の重さの問題に、あまりに浅薄な対応だ。“深さ”がないのは小泉政治全般に言えるが、こんなパフォーマンスでいいのか、参院選ではなお愚直に訴えていくつもりだ」

 さて、岡田新体制。こちらの世論調査結果も、「期待する」より「期待しない」が上回っている。参院選は厳しそうだが。「小沢VS小泉の“大人と子ども”の対決がベストだったが、やむを得ない結果になった。しかし、岡田代表―藤井(裕久)幹事長の対照の妙は、なかなか魅力的と見ている。岡田さんは“原理主義者”などと言われるが、菅体制ではほとんど一人で実務的なことをやってきた。筋道を通す、論理的思考に加えて、党内のまとめ役もやってきたということだ。一部、人気はイマイチだが、堅実なリーダーシップは期待できる。信用できる。酸いも甘いも心得た藤井さんとは、ある意味、絶妙なコンビだろう。参院選は、小泉総理にない岡田代表の誠実さで勝負ということになる。自民党支持層を崩して、いい戦いができると見ている」

 しかし、参院選での勝利を足掛かりに政権交代をと言っても、いまだ安保・外交の基本政策を一本化できない政党に、果たして国民は政権を委ねるものか。

 「もっともなことだ。菅前代表のもとでは選挙で旧社会党系の世話になった部分が大きかったが、岡田代表にはそうした“縛り”がない。党の方向性も、国際貢献の方へ行かざるを得なくなってきている。早晩、一本化は実現する」

 人事では「小沢色」、旧自由党色が強い。党運営いかんでは、若手、党内左派グループの反発も懸念される。党分裂の火種にはならないか。

 「分裂の心配はない。“低落”社民党を見れば、そう簡単に行動は起こせないだろう。むしろ、可能性としては党内融和色が強まった場合のほうが危うい。今は、いいバランスにある」

 最終盤国会。岡田新体制の“腕の見せどころ”だが、「徹底抗戦」に腰砕けの懸念はないか。また、逆に小泉内閣を追い込み過ぎると、「変人首相」は衆参同日選に打って出ないとも限らない。こうなれば、準備のできていない民主党には痛打ではないか。

 「これまでが、腰砕け気味だったのだ。新体制はこれを立て直すところから出発しているから、それはない。同日選で来るなら、われわれはむしろチャンスだと受け止めている。半年前の衆院選の選挙態勢も、まだ維持できている」

 まずは強気の岡田新体制の船出のようだが、最後に鳩山氏の「農政」をただしてみた。折から、自民、民主とも参院選の公約、基本指針として農家所得補償の「直接払い」を打ち出してきている。民主は「年1兆円」、対象農家を大きく広げているのに対し、自民は農家の経営改善への意欲、能力を重視、予算額は明らかにしていない。

 「所得補償はこれまでのいびつな農政を払拭(ふっしょく)、海外からの批判、圧力に耐えられる農業再生の早道となる。欧米では、すでに農業政策の柱になっている。補償対象として意欲、能力のある農家を重視するのは当然だが、民主党はできるだけ対象を広げたいということだ。いずれにしても、農水省の力量の問われるところでもある」

 農水省のケツをたたき、実行に移すには、政権奪還しかない。


―「日本農業新聞」掲載
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