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2005.05.09

フィナンシャル ジャパン] 携帯サイトのゼイヴェル 「女心はリードしてつかめ」

大浜史太郎ゼイヴェル社長インタビュー  FJ5月号

女性向け携帯コマースNo.1の秘密は、“楽しませて、ちょっとだけ売る”

 「女心と秋の空」と言うように、コロコロと変わりやすい女性の心。それを見事に携帯サイトでとらえたのが、ゼイヴェルの「girlswalker.com」だ。1日平均5000万ページビュー、メルマガ登録読者数は900万人以上(2月現在)。
ファッション、ビューティ、雑貨の通販は年商8 0億円にも達する。ファッション市場を大きく揺さぶるゼイヴェルの、「集客力」の秘密に迫る。

なぜ女性を狙わないのか不思議です:秘密1


 月間のアクセス数は、多いときで30億ページビュー、女性総読者数は2600万人、通信販売はゼイヴェル単体で年商80億円、グループ全体で100億円の規模。今どきの女の子なら「ありえな~い」と目を丸くするほど、ゼイヴェル提供の女性サイトは、ケータイ通販としては抜群の数字を誇る。
 2002年から本格的にケータイ通販に取り組んできた大浜史太郎社長は、女性市場にこだわる。それも、ファッション市場に重点を置いている。


大浜 「なぜ、女性市場でビジネスしているんですか?」とよく質問されますが、僕に言わせると「なぜあなたは女性市場にアプローチしないのですか?」と逆に尋ねたくなるほど、このマーケットはビジネスの魅力にあふれています。

 よく一般消費者市場の八割近くは女性が握っていると言われるように、消費活動では男性より女性のほうが圧倒的に力をもっています。これは、デパートの大半が女性向けのフロアで占められていることからもわかります。
 特にファッションやビューティの分野は、他に比べて、不況に左右されにくい安定的なマーケットなんです。それだけ巨大で安定したマーケットがあるのに、それを狙わないというのは、むしろ不思議ですね。

 僕は以前テレビの放送作家をしていましたから、いわゆるF1(女性20~34歳)やF2(女性35~49歳)と呼ばれる女性視聴者をメインターゲットに番組をつくっていたんですよ。特にF1層は可処分所得の流動性が高く、ブランドスイッチの激しい消費者たちです。つまり、新規参入企業でもF1層に向けて広告を打てば、他の層よりは購買につながりやすい。
 このことはテレビ業界では基本中の基本ですが、ネットの世界でそこを本格的に掘り下げているところは見当たらなかったですね。


面白がってもらえば広まります:秘密2


 ゼイヴェルは初め、PC版のファッションサイトを仕掛けた。裏原宿ファッションの通販サイト「裏情報ドットコム」は、アクセス数に対して物販の売り上げが伸び悩んだ。そこで大浜氏はケータイに着目。2000年6月に「girlswalker.com」をスタートさせた。日本初の女性向けケータイサイトは、フタを開けてみると予想以上のアクセス数を獲得し、メールマガジンの登録者も急速に増え、ビジネス面でも結果を残していった。


大浜 ケータイのほうが動き始めたので、パソコンのほうはさっさと切り捨てました。まだケータイの画面が小さくて白黒の時代ですから、周囲からは「ゼイヴェルはアホだ」と言われましたよ。

 でも僕には、いずれ今日のような状況を迎えるという確信があった。ランチェスター理論にもあるように、敵のいないところで戦いを始めるほうが得策です。〝いま手をつけないといずれ負ける?ということはわかっていましたから。

 女性市場では、パソコンよりケータイのほうが、メディアとしての力が格段に強いんですよ。ほぼ24時間ユーザーのそばにあって、メールを配信すれば新聞の折り込み広告よりも確実に、しかも低コストで消費者の手元に届くんですから。ケータイそのもの、つまりハードのほうは確実に進歩するから、いずれ先行メリットを活かせることは確実に期待できました。

 その前提で、サイトづくりの考え方としては、最初から女性たちの可処分所得を取りにいくのではなくて、まずは〝可処分時間?を取りにいく戦略を立てました。
 つまり、彼女たちが遊べるサイトを用意することです。本当に面白がってもらえるコンテンツを用意することなんです。それは、占い、ファッション、コスメ、雑貨などです。

 いいコンテンツがあれば、女性市場では確実に口コミで広がります。男性なら、たとえば面白い占いを見つけても自分がやって終わりですが、女性は「このサイト、面白いよ」と友達に教えるんですね。すぐにメールで友達にURLを転送する。この口コミで、「girlswalker.com」は女性市場に広がっていきました。
 当時はまだ、迷惑メールが問題視される前だったのも大きかったですね。ほとんどの人が電話番号をそのままメールアドレスに使っている時代でしたから。このタイミングのよさも、読者数を一気に伸ばすうえでは幸いしました。女性は、だいたい一人当たり平均4~5人に転送するんですよ。


秘密3:ファッション誌の読者をきっちり押さえます


現在、勝手サイト(ケータイの「メニュー」に登録されていないサイト)を含めて、500以上の女性向けケータイサイトがあるなかで「girlswalker.com」は、アクセス数、読者数、売上高のいずれもナンバーワン。女性市場の特色を経営者が熟知しているからこそ、圧倒的に市場を席巻できるのだ。
 大浜社長が最初に女性市場へ目を向けたのは、南カリフォルニア大学に留学している最中。ロサンゼルスで日本向けラジオ番組の制作に参加したとき、先輩プロデューサーやディレクターから、「女性ファッション誌を徹底的に研究しろ」と叩き込まれた。
 ゼイヴェルのビジネスには、ファッション誌の研究から学び取ったノウハウが随所に反映されている。


大浜 女性ファッション誌が100冊以上も発行されているのは日本ぐらいです。それだけ日本の若い女性は、モノへのこだわりや趣味嗜好が多様なんですね。
 なかでも、売り上げから見ると、「Can Cam」(小学館)、「JJ」(光文社)、「ViVi」(講談社)、「Ray」(主婦の友社)が四大誌と位置づけられるでしょう。
 これらの雑誌の読者こそが、女性ファッション市場の〝マス?と言える部分ですから、ここをきっちり押さえることが大事です。
 売れているファンション誌を見ていれば、読者が好むブランドがわかりますよね。それに倣って、ケータイサイトでも同じようなブランドを揃える必要があるんです。

 今でこそ「girlswalker.com」は、女性サイトのトップという座を活用できる状態ですが、初めのうちは当然、無名でした。サイトに掲載して販売するために、各ブランドに一軒ずつ営業して回りました。
 化粧品会社に代表されるように、ブランド各社はとにかく自社のブランドイメージを大切にするんです。それはつまり、掲載されるメディア自体のブランドも、同じように強く意識するということです。

(追伸)「週刊!木村剛」は、総合ビジネス月刊誌「フィナンシャルジャパン」(年間購読はココ)および「フジサンケイビジネスアイ」(購読希望はココ)とメディア・コラボレーションしています。




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