(2009年10月23日 FT.com)
本紙(英フィナンシャル・タイムズ、FT)の米国マネジングエディター、クリスティア・フリーランドがファンドマネジャーのジョージ・ソロス氏にインタビューし、世界経済の状態や米中関係、自身の投資パフォーマンス、金融機関の報酬制限などについて聞いた。以下はインタビュー全文。
FT ソロスさん、インタビューに応じてくださり、ありがとうございます。
ソロス どういたしまして。
FT 世界経済の状態をどう評価していますか。世界は2007~08年の危機から回復したのでしょうか。
ソロス 確かに金融市場は落ち着きを取り戻し、再び機能し始めています。また、世界経済もショックを乗り切りました。一時はすべてが動きを止めましたが、今では物事が動き始めていますから。
世界が危機の現実を消化するには長い時間
なので、確かに回復は見られますが、私としては、世界が危機の現実を完全に消化するまでにはかなり時間がかかると思っています。問題の主たる原因は、米国にある。米国は、25年にわたって消費者が稼ぐ以上に消費した国であり、ピーク時にGDP(国内総生産)比6.5%に達する経常赤字を積み上げた国だからです。
実際、赤字拡大はもっと続いた可能性がある。絶えず黒字を出して、我々米国の赤字を喜んで埋めてくれる国――特に中国とアジアの虎と呼ばれる国々――があったからです。つまり、経常赤字の拡大は続くこともできた。けれど、家計は過大な債務を背負い込みました。そして消費が米国経済の70%を占め、支出を抑制しなければならないのがその消費者である以上、かなり時間がかかる。
また、基本的に破産状態だった銀行システムがあります。銀行は今どん底にあり、利益を上げてこの穴から抜け出さないといけない。ただ、それはかなり速いペースで実現しつつあります。銀行はゼロ金利でお金を借り、利回りが3.5%の10年物米国債を買っているからです。リスクがゼロにしては、かなり手っ取り早い儲けですよね。なので、銀行は利益を上げて穴から抜け出すでしょうが、これにもやはり時間がかかる。
また、商業用不動産市場という、まだ損失が実現損になっていない分野があります。つまり、世界の弱さの源は主に米国の消費支出と、そうですね、銀行セクターの衰退にあると言っていいでしょう。
FT そうした米国の弱さは、今の景気回復がW字型になる、つまり、今後二番底があり得るほど深刻なものでしょうか。
ソロス 確かに、株式市場では再び下落局面があり得るでしょうね。というのは今、我々は信頼乗数(confidence multiplier)を謳歌しているところで、今回の危機は過去の危機と同じで、我々は何とかV字回復を遂げるという期待のようなものがあるからです。ですから、その期待がかなわないと・・・
FT かなわないと考えているわけですね?
ソロス かなうとは思えませんね。私は間違っているかもしれない。過去にも間違えたことがありますし。しかし、米国経済の成長が一体どこから来るのか、私には全く見えませんね。
ドルだけではなく、通貨からの資金逃避
FT 米国経済が引き続き弱いとあって、人々がドルを心配し始めていますが、それは正しい考え方ですか。
ソロス もちろん、そうですし、ドルはほかのすべての通貨を除き、非常に弱い通貨だとも言えます。つまり、通貨に対する全般的な信頼の欠如があり、通貨から現物資産への資金の逃避が起きている。中国は引き続き多額の貿易黒字を出し、まだ資産を積み上げていて、人民元はドルに連動しているために永続的に過小評価されているわけです。
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