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第3回 株式会社ゼイヴェル |
2004.8.9 |
<株式会社ゼイヴェル> http://www.xavel.com/ ■ iモード携帯サイトでNO.1にランクされる「girls shopping」
「girlswalker.com」は、月間4億ページビュー(2003年末時点)を誇る日本最大級の女性向けケータイサイトだ。 ティーンからF1世代(20〜34歳)の女性向けに、芸能情報、有力勝手サイト(非公式サイト)のランキングの他、有名人の楽屋裏に入れる権利などが当たる懸賞や、3分で自分の占いサイトが作れる「3分クッキング」など、ユニークなコンテンツを揃え、メールマガジンの登録者数が約750万人に達する。 この巨大なサイト「girlswalker.com」の姉妹サイトとして「girls shopping」がある。iモード公式サイト、カテゴリ「ファッション/コスメ」で1位にランクされている、人気ケータイショッピングサイトである。 また、2004年5月には、ケータイサイトと連動させたリアルショップを東京・代官山にオープンした。 ケータイサイトでの情報提供から携帯ショッピング、そしてリアル店舗に進出した意図、若い女性層の圧倒的人気を得る秘訣などを、メディアディレクターの細野博昭氏に伺った。 ■ ゼイヴェルの歴史 現在ゼイヴェルのスタッフは約120名、平均年齢約25歳、女性が7割以上を占める。 1999年にスタートした同社は、昨年2003年度に初の黒字化を果たし、今期売り上げは50億円に達する見込みだ。売り上げの大半、98%以上が、物販いわゆるモバイルコマースでの売り上げである。 代表取締役社長の大浜史太郎氏は、学生時代よりテレビやラジオ番組の放送作家として活躍し、イベント企画も得意とする。1999年に設立したゼイヴェルも企画運営会社としてスタートした。2000年には、大浜氏自身が手がけた「悪女占い」を掲載する「ウラジョーホー.com」をパソコン版ウェブでスタート。3ケ月で月間25万ページビュー、7万人近くの登録会員数を記録したが、その後会員獲得で伸び悩んだ。物販も行ったが、ほとんど売れなかった。 この頃大浜氏自身は、パソコンのように電源オンから利用までの立ち上げに時間がかからない、「ファースト・タッチ・ツール」である携帯電話に魅力を感じていた。パソコンインターネットの世界では既にYahoo!や楽天市場などの大手が市場を獲得していた。大浜氏は、後発で追いつく努力をするより、まだほとんど手のつけられていない携帯サイトへ転向することを決断した。パソコン版サイトを立ち上げてからわずか3ケ月後という早業であった。こうして2000年11月、「girlswalker.com」の携帯サイトを、非公式サイトで立ち上げた。
■ 口コミの威力 携帯サイト「girlswalker.com」を立ち上げても、人の気配がないサイトは活気がなく感じられ、人が寄り付かない。そこで立ち上げ時には、人が寄り付きやすくなる工夫をした。その効果があり、自然と外部から人が入ってくるようになった。 それからはあっという間に10万人近くの登録会員を集めることに成功し、当時のケータイサイトの中では最大の会員数となった。まだ迷惑メールの数が少なく、友人からメールをもらうのがうれしいという状況の人が多かったことも幸運だった。 同じ頃、角川書店が行なっていた人気占いサイトのランキングで、2000年No.1に「girlswalker.com」内で提供していた「悪女占い」が選ばれた。この事も手伝って、口コミが次々に広まったのではないか、とゼイヴェルでは推察している。「悪女占い」の会員数とコンテンツの人気がNTTドコモに認められ、占いサイトでは初めて、非公式サイトから公式サイトに認定されることに成功した。 ■ モバイルコマースへ事業を拡大 2001年6月、「girlswalker.com」内で試験的に香水を販売したところ、3時間で1500件ものオーダが入った。これを機にゼイヴェルでは、モバイルコマース事業に本格的に力を入れ始める。 現在、ゼイヴェルのモバイルコマースができるケータイサイトには、「girlswalker.com」内のコーナー「shopping walker」の他、「girls shopping」、男性向けの「boys shopping」がある。 2001年1月に非公式サイトで書籍販売からスタートした「girls shopping」は、2001年9月にサイトリニューアルをして、ファッションやコスメに販売ジャンルを増やし、本格的にスタート。2003年9月には、i-modeとEZ-webの「ファッション・コスメ」のカテゴリで公式サイトに登録された。初登場で1位を獲得する快挙をあげ、その後も現在まで独走状態が続いている。 ケータイサイトでは、パソコンのようにウインドーをいくつも開く事ができないため、一行でも上部にあるものが売れる特性がある。携帯電話の小さな画面という制約の中で、パソコンのコンテンツとは異なった工夫が随所に施されている。 「girls shopping」では、ジャンルごとに「ファッションwalker」、「アクセ&ジュエリーwalker」、「香水walker」のコーナーを設け、それぞれに商品情報だけでなく、ファッションレポート、カラー診断、トップネイリストによるコラムなど、無料で見ることができるコンテンツを豊富に提供しており、ジャンル毎に別サイトのような構成になっている点が特徴的だ。 「girls shopping」
(c)xavel, inc.
(c)xavel, inc.
「ファッションwalker」には、女子大生によるファッションレポート、カラー診断などがあり、「香水walker」には、「香水適性診断」、「香水豆知識」、「芸能香水情報局」、「クチコミ掲示板♪」など様々なコンテンツがある。そして「ネイルwalker」では、著名ネイルアーティスト松下美智子氏と全面提携し、コラムやネイルレッスンを掲載している。ターゲット層に人気の高いカリスマアーティストが薦めるものを前面に出し、ユーザーの購買を促している。 さらに、もう一つの特徴として、他ケータイサイトに比べ、絵文字やビジュアルを多用している点が挙げられる。若い女性が楽しめるムード作りが重視されているのだ。 ■ 購買層は20代女性が最も多く、携帯でのショッピングはベットの中で 同社調査によると、モバイルコマースサイト(「shopping walker」「girls shopping」「boys shopping」)での購入者層は、年代別では、20代が約半数を占め、30代は2割強、10代は2割弱という構成だ。男女比は8割近くを女性が占める。 商品ジャンルによって購入者層が異なる。コスメ、ファッションブランド商品は比較的年齢層が高く、20代後半〜30代前半が中心だ。香水は、ブランド品だが単価が低いため、他の商品群に比べ若年層が多く10代の購入者も多い。 サイト全体の品揃えは、主に20代から30代前半をターゲットにしているせいもあり、10代の購入率は高くはない。ティーンエイジャーのファッションは移り変わりが激しく、この世代にしか売れないため、メインターゲットにしていない。また、ティーンエイジャーは「girlswalker.com」にアクセスするパケット代を支払うだけで商品購入まで至らないのではないか、とゼイヴェルでは見ている。事実、月末はアクセス数が激減するという。これは会員が月末になると携帯電話会社に支払う通話料金やパケット料金の調整をはかり、サイトへのアクセスを控えるからと推測される。 モバイルコマースサイトの購入者属性
購入者のリピート率は高く、購入している人の中には、年間の購入額が100万円を超える人もいる。 会員は携帯電話でのショッピングを、いつどのように行っているのだろうか? ゼイヴェルでは、夜10時から明け方の4時を「ゴールデン6」と呼んでいる。この時間帯が一番アクセス数が増える時間帯だからだ。会員は自宅のベットなどの上で寝転がりながら携帯でウインドーショッピングを楽しんでいるのではないか。同社のサイトで販売するとリアル店舗の売り上げが落ちるのではないかと心配する事業者もあるようだが、実際はその反対で、店舗の営業時間は店頭で、閉店後は自宅からケータイでショッピングすることが多いので、ほとんどの事業者が「girlswalker」に出店すると店舗の売り上げも伸びることが多いという。 ■ リアル店舗との連動 ケータイサイトの中では圧倒的な支持を得ているが、ゼイヴェルではモバイルコマースはまだまだ黎明期と見ている。「girlswalker.com」の会員は750万人を超えたが、同社のモバイルコマースサイトでの購入者数は会員数の0.4%にとどまっている。せっかく獲得した会員を購入まで誘導できていないのだ。 平均購入単価が約1万円とすると、全会員が年1回購入すれば、年間750億円になるわけで、将来的にはその程度のマーケットサイズが見込めるはずだ。細野氏は、2006年頃を目途に現在の会員購入率0.4%を1%に引き上げたいという。そのための試みのひとつとして、テナント店の出店が行われた。 2004年5月22日に東急東横線代官山駅ビルに、サイト連動型ショップ4店舗をオープンした。同社にとって初のリアルのテナントショップだ。 リアル店舗の出店理由のひとつには、顧客からの声に応えることがあげられる。コールセンターに多く寄せられる質問のひとつは、「サイトで扱っている商品は実際にはどこで見ることができ、購入できるのですか?」だ。この質問に対しショップリストをサイトに掲載するなどの対応を取ってきたが、さらに顧客満足度をあげるため、テナントショップを出店することにしたわけである。 ショップのコンセプト・キーワードは「ビューティ・クルーズ」。女性の美に関する消費が活発なことに着目し、世界各地から集めた「ビューティ」を代官山で探検して欲しいというコンセプトで、物販、飲食、サロン、ギャラリーの4店舗を展開。店内の商品全てを、ケータイサイトからも商品購入できる。商品には最大5ケタのコードが付けられており、店舗と連動しているケータイサイト「Cosme Kitchen」の商品検索窓にこのコードを入力すると、商品の詳細情報を見ることができ、注文もできるようになっている。 店舗オープンから数週間後にお話を伺ったが、細野氏は「代官山駅は乗降客が1日25,000人以上に達する好立地なので、失敗する要因はない」と言う。「girlswalker.com」を知らない来店者が多いため、同サイトの認知度を上げることも期待できる。さらにリアル店舗と連動することでケータイサイトの購買率アップも狙う。 ■ ファッションショーを開催 「girlswalker.com」に商品を提供している事業者によると、最近では「girlswalker.com」自体がブランドになりつつある。「girlswalker.comで売れている」と雑誌に書いたり、店頭に掲げれば、物が売れるようになってきている。 ゼイヴェルではさらに「girlswalker.com」をひとつのブランドとして浸透させるべく、ファッション情報誌とタイアップしたり、一般消費者参加型のファッションショーを企画・運営している。 ファッションショーは、神戸などで年2回、「毎日放送」と、雑誌の「JJ」や「ViVi」と共同で行っている。ショーの情報は、サイトで会員に告知。2004年2月に神戸で行われたショーの来場者は、一日8,000人に及んだ。そしてショーでモデルが着用したファッションアイテムを、「gilrs shopping」のサイトで当日に同時購入ができるようにした。このようにリアルのイベントからもサイトへの誘導を図っている。 ■ 時代を迎え撃つ体制 ゼイヴェルは、サイトのコンテンツの最終形は必ず「無料」に向かうと考えている。地上波のテレビ放送が無料であるのと同じだ。無料でかつ魅力あるコンテンツを提供して多くの人々を集め、サイト内で楽しんで満足し、リピートしてもらうことに全力を注いでいる。 また、サイトをディズニーランドのようにしたいともいう。無料コンテンツで楽しんでもらった後、ディズニーランドから帰る前にお土産を購入するように、ケータイでのショッピングを楽しんでもらいたいというのだ。 細野氏は、モバイルショッピングの市場はまだまだ立ち上がっていないという。現状では、パケット代金が高いうえ、回線容量も小さいため画面表示に時間がかかる。モバイルショッピングを楽しんでもらうには、パケット代の定額制が一般的になり、FOMAなどのブロードバンド端末が1千万台以上普及する必要がある。 そして、端末とインフラが整ったとき、初めて「girls shopping」をはじめとするモバイルコマースのサイトが真価を発揮する。その時が来るまでは、「girlswalker.com」のブランド力を高め、より魅力のあるコンテンツを模索し続けるという。 ゼイヴェルは既に時を迎え撃つ体制に入っている。 |