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「ケータイメディアマトリックス」で革命を
―女性携帯サイト「girls walker」の挑戦―

株式会社ゼイヴェル

占い、芸能情報、携帯掲示板、懸賞付きグリーティング、携帯ショッピングなど、ちょっとした暇つぶしに楽しめるコンテンツ満載で、若い女性にターゲットを絞った携帯サイト「girls walker」が話題である。月間3.5億PVを誇る日本最大級の女性サイト。多くの女性のハートを捉える「girls walker」の魅力とは? 運営している株式会社ゼイヴェル(本社:東京都港区、代表取締役社長:大浜史太郎)を訪ねた。

トップクリエーター集結!


代表取締役副社長・梶田直孝氏
六本木ヒルズの近く、コンクリート張りのスタイリッシュなビル3階から6階が同社のオフィスになっている。従業員100名(契約社員を含む)、平均年齢は約23才と若い。
同社の設立は1999年11月。某スポーツ選手の結婚式をプロデュースするために、トップクリエーターが集結したのをきっかけに、新しい会社を立ち上げることになった。放送作家の大浜社長、ブライダル業界の梶田直孝氏(代表取締役副社長)をはじめ、出版、音楽業界、デザイナーなど各業界から多彩な人材が集まってきた。

まさに、ネットバブルと言われていた時代。だれもが「何か変わろう!」と模索していた。「既存の事業は先が見えている。先の見えないことには不安もあるし、新しいことを広げていった方がいいと思った」と梶田氏。
新しい媒体を作る必要があると感じ、まずはインターネットに目をつけサイトを作ったが、「インターネットには限界がある」ということに気付いたという。さまざまな試みをしたのち、携帯電話のビジネスに方向転換した。

IT、ITと皆が騒いでいたが、「市場のないところに求めても仕方がない。媒体を立ち上げるとき、一番重要なことは、『人が見てくれる』こと」と梶田氏は強調する。自分たちのブレーンや力を使って、一番効果を発揮でき、しかもユーザーのレスポンスの速い部分は何か…と考えた時たどり着いたのが携帯だった。

女性をターゲットに占いから物販まで

携帯で一番最初に立ち上げたのは「悪女占い」。なぜ、占いサイトだったのか。

「ターゲットとして狙っていたのは女性。占いは絶対クチコミで広がるでしょ」と梶田氏。なるほど、店情報などはいいものであればあるほど人には秘密にしたい傾向があるが、占いの場合、人を占ってみたくなるので、それがクチコミになるのだ。案の定、1人から10人へと友達から友達へと伝わり、どんどん広がった。携帯ではPCより10倍の速さで広がったという。
かなりのアクセスがあったので、勝手サイトから公式サイト化し課金モデルにしていこうという動きになり、公式サイトにした後、「girls walker」という媒体を作った。立ち上げるコンテンツは着実にアクセスを増やし、ブレイクしていった。

「girls walker」は、F1世代(20〜30代前半女性:マーケットで最も購買決定権を握ると言われる層)を対象としている。もちろん、携帯のユーザとして一番浸透しやすいのがF1世代ということもあるが、同社が女性をターゲットとした理由はそれだけではない。「媒体を一番活用しているのは女性。女性をユーザとして獲得できれば男性は簡単に獲得できる。女性の集まっているところには男性が来やすいという特徴があるから」と梶田氏。女性を獲得することによって、物販や広告にまで導引でき、ビジネスになりやすいのだ。

今、「girls walker」で人気No.1のコーナーは、「girls shopping」というショッピングサイト。香水、ファッション、アクセサリー、コスメなど、女性が気になる限定ファッションアイテムを中心に、気軽にオーダができる仕組みになっている。メーカー約300社以上と契約している。

「根本的に大事なのは、見て楽しいとか使いたいっていう気持ち。そういう気持ちが起きないで、そのサイトを使う理由はないですよ」と梶田氏が言うように、ショッピングサイトは、いかにユーザにインプレッションを与えられるか、興味をひかせることができるかを主眼に作っている。

画像が重いからと文章だけ載せるのでは興味はわかない。写真も前後から見られるようにし、説明文も詳しく載せ、見ているだけでも楽しいサイト作りを工夫している。「これ単体で『生きて』ないと、携帯ショッピングなんてするわけないじゃないですか。PCの方がずっと使いやすいはず」。こういった考え方は会社のコンセプトそのものにもつながる。「やっていることが面白いから集まろうよ。そのために、持っている能力を出し合おうよ」という気持ちが、そもそもの同社設立のきっかけだったのだ。

タイミングをはずしてはダメ

「携帯のことを、すごいすごいと言いつつも理解している人は少なかった。こんなに可能性があるのに、みんながビジネスとして取りに行かないなら、自分たちが取りに行こうか」といち早く取り組んだことが、同社を勝ち組みに導いたのではないだろうか。
また、仕組みやビジネスをどうしようかということにスポットを当てないで、「ユーザにどのようなものを仕掛けるか、どうすればリピーターになってもらえるか」に特化したことが結果的にビジネスとしても成功することになった。

ユーザのニーズが何かを知るため、ユーザから生の声を聞くこともあるが、「ユーザは自分の欲しいものがわかっていないから、聞き過ぎないで、こちらでクリエイティブしてあげないとダメ」と言う。「こういうものが売れるだろう」と仮説を立てて、テストをし、ユーザの反応を見てみる。そうすれば必要なものかどうかがわかる。ゼイヴェルでは、そのようなマーケティングをしている。
同社では、サイトを一気に立ち上げず、1個ずつコンテンツを投げかけていくので、人が人を呼び、ユーザーが集まってくる。
サイトのアニメーションや色など、同社が蓄積したノウハウが、どんどんスタンダードとして認められるようになってきた。

新しいビジネスを立ち上げるのはタイミングが重要だが、あまり先走っても失敗する。「いきなり難易度の高いものを与えられても誰も使わない。江戸時代に現代のものを持って行ったってダメ。どんなに正しいことやっても、先を見たものであっても、タイミングが合わないものは認められないんですよ」。梶田氏は厳しく指摘する。
ほんの数年前までは、携帯電話が必要と思っている人は少なかった。ところが、携帯が普及し電話として使われ、今はメールをするツールになった。次はコンテンツで、その次に来るものは「物販」と睨んでいる。

「今は『当たり前』ではなくても、数年後には『当たり前』になってくるんですよ。必然性があるから」。さらに、「ITっていうのは、ハードやシステムではなくて、『人』がいなければ機能しないんですよ。人がきちんと理解して使うことが重要」と付け足した。

メディアマトリックス手法

ゼイヴェルでは、従来の「メディアミックス」手法ではなく、「ケータイメディアマトリックス」手法を掲げている。
テレビや雑誌など既存メディアは一方的に情報を流し、先入観として入ってくるが、携帯は、その先入観を後押しすることができる。例えば、テレビの番組を見て気になっているとき、「あの番組で取り上げられた○○は…」と携帯で流すと納得し、相乗効果が得られやすい。

全ての媒体にネットワーク化できるのは、いつでもどこでも持てる携帯。携帯電話を中心に、各メディアへ企画(コンテンツ)連動させ、ユーザーに常に接触し、新たな可能性を創り出すことをゼイヴェルは目指している。
「話題の中心は、今までのテレビや雑誌から携帯に変わってくるだろう」と梶田氏。今後は、「よりきれいに見せることによって媒体価値を上げたい。また、媒体表示をコラボレーションで作り、横の展開を図っていきたい」と抱負を語っていた。

(文・写真 岡 千奈美/2003年12月)

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