図書館蔵書検索サイト「カーリル」を運営する米Notaは21日、岡崎市立中央図書館事件について詳しく報じた朝日新聞の記事を受けて、コメントを発表した。「図書館システムの問題を発端として逮捕者が出るに至ったことは大変遺憾」と述べている。
この事件は、愛知県の男性が自作プログラムを使って同図書館の新着図書の情報を収集していたところ、サイバー攻撃を仕掛けたとして5月に逮捕され、起訴猶予処分となったというもの。しかし、「asahi.com」の8月21日付記事によると、朝日新聞が依頼した専門家の解析により、図書館側のソフトに不具合があり、大量アクセスによる攻撃を受けたように見えていたことが判明したという。
一方、カーリルは、全国5200以上の図書館の蔵書を検索できるサービスを提供するが、「全国の図書館システムに対して機械的にアクセスを行うことにより実現しており、今回逮捕された方が使った技術と基本は同じ」とコメント。サービス開始直後は、いくつかの図書館システムで速度低下などの影響があったが、その都度図書館との調整を図ってきたという。
また、「日本の図書館システムが遅くて使いにくい」という点については、多くの人が同意しているところだとも説明。こうした状況において、多くの図書館やシステムベンダーにも協力してもらい、現状の改善と、よりオープンで使いやすい図書館のシステム構築に向けて調整を進めているとした。
「そのような取り組みを進める中で、本事件により図書館システムの問題を発端として逮捕者が出るに至ったことは大変遺憾です。」(Nota)
図書館の蔵書情報は「誰でも自由にアクセスできるべき」であり、図書館のシステムも「よりオープンになるべき」と指摘。既に多くの市民プログラマーが図書館を便利にするソフトウェアやウェブサービスの開発に取り組んでいるが、このような公共システムへの市民参加を歓迎すべきで、決して萎縮させたり責任を転嫁してはいけないと主張している。
「カーリルでは今回の事件を教訓として、図書館やシステムベンダーと共に今後絶対に逮捕者を出すことなく広く活用されるシステムについて議論し合意形成を進めます。」