東京で広がる火葬だけの「直葬」
経済的理由も背景に
簡易宿泊所が集まる東京都の山谷地区で8月、81歳の男性が亡くなった。遺族以外による10分にも満たないお別れの会の後、火葬された。都内では、こうしたほぼ火葬だけの「直葬」が増えてきており、葬儀全体の3割を占めるといわれる。
社会のきずなが失われてきたことが背景にあるが、経済的な理由などで直葬を選ぶ遺族もいるという。
「弟さんがいたんですか…」。山谷で簡易宿泊所を営む女性(67)は、亡くなった上田貴司さん(仮名)に親族がいたことを伝えられると驚いた。上田さんは、この宿で約14年間を過ごしたが、家族や仕事など過去に触れることはなかったという。
今年4月、認知症が進み、NPO法人が営む近くの宿泊所に転居。7月に入院、8月に息を引き取った。
斎場には宿泊所のスタッフが3人。生活困窮者の葬儀を支援する「葬送支援ネットワーク」の僧侶2人が読経し、約5分のお別れの後、火葬で送った。
「上田さんは幸せな方です」。僧侶中下大樹さん(35)は話した。身寄りがない人の直葬は通常、葬儀社が斎場に遺体を運ぶ。直ちに火葬され、共同墓地に埋葬される。
中下さんは「家族や近所、会社とのきずなが失われれば、誰も葬儀に来ない。直葬は増えていくと思う」と話した。(共同通信)
【 2010年08月22日 17時30分 】