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【道路を問う】

第5部 ゆがんだ政策<上> 自民がバラマキ圧力 選挙対策の4車線化

2009年10月11日

総事業費890億円の東海北陸自動車道4車線化工事区間の起点。白鳥ICの北側から2車線へ減少している=今年6月、岐阜県郡上市で

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 東京・永田町の自民党本部。七階の会議室に東日本、中日本など高速道路三社の役員らが続々と姿を見せた。党国土交通部会が開いた意見交換会。衆院選の半年余り前、今年二月の夕方のことだ。

 党側の出席者は、部会長で国交省OBの衆院議員福井照(55)や、元国交事務次官の参院議員佐藤信秋(61)ら五人。いずれも有力な建設族だ。会合は非公開で、国交省からも幹部数人が同席した。

 党側はあらかじめ三社に対し、「中小や地方の業者が工事を受注できるように、どのような取り組みをしているか」というテーマを出しており、役員らが対策を説明した。だが議員らは納得せず、次々と注文をつけた。

 会議室からかすかに漏れてくる発言は、入札や発注の見直しを迫るものが多かった。

 「地元業者に工事参入の機会がない」

 「安く契約するのは道路会社にはメリットだが、土木業界は悲惨な状況になる」

 終了後、廊下に出てきた福井は「百年に一度の経済危機に、道路会社で何ができるか考えてくれと言った」と説明した。「民営化した会社に対して問題はないのか」と聞くと、「政府がやれば問題かもしれないが、われわれは政党だ。会社は必ずしも言うことを聞く必要はない」。そう話すと、別室での懇親会へと向かった。後日、会合の内容を詳しく聞くため、福井に会った。

 「最大の論点は、工事の区割りを小さくしろということ。工区割りが大きいと、ゼネコンしか受注できない。地域の業者も受注できるようにしろ、という王政復古の大号令だ」

 福井はそう言って笑った。だが、工区を細かく分割して発注すれば、一括発注より経費がかかる。また、旧日本道路公団の橋梁(きょうりょう)談合事件では、元公団副総裁が業界の要請で工事の分割発注を指示。費用を増大させたとして背任罪で有罪判決を受けていた(上告中)。

 分割発注に慎重な道路会社に対し、会合では「談合問題を気にしすぎる」という意見まで出たほどだった。

 「道路会社は、民営化したから国とは関係ないという態度だ。だから国家としてグリップ(握る)させてもらう」。そう話す福井に「それは圧力では」とただすと、「そうみてもらっていい」とあっさり答えた。

 衆院選を控え、強まる一方だった与党の工事ばらまきの要求。それに国交省が応えた。

 四月下旬、一年四カ月ぶりに「国土開発幹線自動車道建設会議」を開催。わずか二時間の議論で十年ぶりに道路整備計画を見直し、東京外郭環状道路(外環道)など全国で新規四区間、四車線化六区間の着工を決定した。総事業費は一兆八千七百億円。大半を税金で賄う計画だった。

 四十兆円もの借金を抱えるに至った高速道路建設に歯止めをかけるため、小泉政権が当時の整備計画以外の着工を「白紙」としたのは三年前。その政権公約が、あっけなくほごにされたのだった。 =敬称略

    ◇

 補正予算の見直しで高速道路の四車線化工事が凍結された。麻生政権が景気対策の目玉とした大型事業は、どのように政策決定され、なぜいま凍結されたのか。その背景を検証し、あらためて道路のあり方を考える。

 <高速道路整備計画> 政府は1987年、高速道路などの高規格道路を全国に1万4000キロ建設する構想を決定。99年に9342キロを整備計画に格上げした。小泉政権は05年に道路関係四公団を民営化。整備計画のうち未開通だった1953キロについては、採算の見込める1131キロを道路会社が造り、不採算の822キロは国が税金で建設すると決めた。整備計画以外の建設は「白紙」としたため、新規の整備計画は事実上凍結されていた。

 

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