株・マネー

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

高速無料化:社会実験1カ月 連休に変化、交通量2倍 観光地歓迎、渋滞も

 <分析>

 全国の高速道路の一部区間を無料化する社会実験が始まって28日で1カ月が経過した。7月の3連休の交通量は全国平均で実験開始前の2倍となり、地域経済の活性化を期待する沿線の観光地からは歓迎の声が上がっているが、その一方で、多くの区間で渋滞が発生。利用客を奪われる鉄道やフェリーなど他の公共交通機関への影響も深刻だ。実験は来春まで続くが、成果と課題の双方が早くも浮き彫りとなっている。【寺田剛、新宮達】

 ◇「2度目のGW」

 舞鶴若狭道(小浜西-吉川ジャンクション=JCT・112キロ)が無料化された福井県小浜市では、17~19日の3連休中、神戸や姫路ナンバーの車が列をなした。若狭湾の遊覧船が発着する「若狭フィッシャーマンズ・ワーフ」では臨時便を増発したが、それでも積み残しが出た。「2度目のゴールデンウイークが来たようだった」と地元観光関係者は喜ぶ。

 無料化実験は、民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げる「高速道路の原則無料化」の実現に向け、経済波及効果や他の交通機関への影響などを調べるのが目的。対象区間は全国の37路線50区間で、全高速道路の約2割に当たる計1652キロ。来年3月まで実施する。3連休の交通量を開始前の週末と比べると、全区間平均で1日当たり2・08倍の2万2500台に増えた。

 並行する一般道の渋滞解消も狙いの一つだった。新潟県の日本海東北道(荒川胎内-新潟中央JCT・47キロ)では、交通量が2・5倍前後になる一方、並行する国道7号は1~2割減少した。国土交通省は「成果が裏付けられた例」と指摘する。

 楽天トラベルが今月上旬に1000人を対象に実施した無料化に関する意識調査によると、日帰り旅行で選ぶ移動手段は「自家用車」(71・9%)が「鉄道」(20・3%)を引き離した。

 ◇来年度も継続

 前原誠司国交相は27日の会見で「予想以上にご利用いただいている。おおむね好評だと認識している」と評価し、来年度も一部区間の無料化実験を継続する意向を示した。

 問題点もある。無料化区間での渋滞の発生は実験直前の週末で1区間だけだったが、7月の3連休では延べ48区間に達した。

 平日の渋滞発生例もある。京都府の京都丹波道では、沓掛インターチェンジ(京都市西京区)の出口付近で平日朝夕、1~2キロの渋滞が慢性的に発生。西日本高速道路によると、無料化実験前はほとんど見られなかった現象という。

 東日本高速道路の佐藤龍雄会長は「高速道の価値が低下することは利用者のためになるのか」と、渋滞多発に不満げだ。今回は渋滞が発生しにくい区間を選定しただけに、国交省幹部も「渋滞の弊害は深刻だ」と認めている。

 ◇運送業界「遅れ心配」

 国交省は高速無料化で物流コストの低減効果も見込むが、運送業界の反応は冷ややかだ。業界団体である全日本トラック協会には無料化を歓迎する声より配送の遅れを懸念する声の方が多く寄せられているといい、協会幹部は「時間で商売する業界なので渋滞で配送が遅れれば荷主から賠償を請求されかねない」と漏らす。

 三重県鳥羽市と愛知県田原市を結ぶ伊勢湾フェリーでは、3連休の利用が前年比3割増加した。無料化された伊勢道が渋滞し「代替需要が膨らんだ」(同フェリー)という。ただ、渋滞がない限りは利用者増は見込めないともいえ、日本旅客船協会は「高速の値下げ政策で既に4社5航路が閉鎖に追い込まれた。対象区間の拡大には反対だ」と話す。

 高速無料化を商機ととらえるのがレンタカー業界で、大手の半額程度で借りられる格安レンタカーのバリューレンタカー(横浜市)は「高速無料化は追い風になる」と話し、全国75の店舗を今年度中に100店舗まで拡大させるという。

 ◇拡大に財源の壁

 今回の社会実験に充てる事業費は1000億円。当初は6000億円を予定していたが、財政難から規模が縮小された経緯がある。国交省は来年度以降の実験について、今回の実験の渋滞状況や経済波及効果、他の交通機関への影響などを検証したうえで対象区間の選定を進める予定だが、厳しい財政状況との兼ね合いから対象区間をどこまで拡大できるかは不透明だ。

 ◇CO2低減困難

 温暖化対策との整合性も問われる。政府は温室効果ガスを20年までに90年比25%削減する目標を掲げているほか、環境負荷の少ない交通体系の構築に向けた交通基本法の策定も目指している。

 国交省は「車が排出するCO2(二酸化炭素)は低速走行時が最も多く、高速化すれば減る」というが、社会実験の結果、高速道路では渋滞がかえって多発しており、CO2の低減は期待できそうにない。

毎日新聞 2010年7月29日 東京朝刊

PR情報

 

株・マネー 最新記事

株・マネー アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド