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きょうの社説 2010年8月23日
◎ふるさと応援団 拡大へ市町も積極的に動こう
たとえ居住人口が1万、2万人であっても、出身者を合わせれば、相当な人口規模にな
る。旧盆の帰省者でにぎわった県内各地の、より大きな「ふるさとのかたち」をみれば、出身者による「ふるさと応援団」の組織化と、それをうまく生かすことが自治体を支える大きな力になりうることが分かる。人口減に歯止めがかからぬ過疎地域にとっては、出身者を取り込んだ自治体経営の発想はとりわけ大事である。都内で開催される「いしかわ県人祭in東京」は今年10月で3回目を迎える。千人規 模のふるさとパワーの結集は圧巻であり、観光誘客や人材誘致、企業誘致などでも力になりうる頼もしい存在である。こうした県人ネットワークも、市町単位の人脈の基盤があってこそ、より強固なものになろう。 地域の特産品にしても、出身者のネットワークが全国に広がっていれば、それだけで安 定した販路となる。出身者にしてみれば、ふるさとの味を通して、つながりも実感できる。そうした取り組みは年々広がりをみせているが、自治体間で温度差がみられ、出身者の把握が十分にできていない地域もある。まずは出身者の所在や最新の動向が分かるデータベースを構築することから始めてはどうか。 ふるさと応援団を拡大するうえで大事なのは、自治体が積極的に動き、汗をかくことで ある。旧盆などで帰省する出身者をただ見ているだけでは物足りない。同窓会など、あらゆる機会を利用し、ふるさと応援団への加入を呼びかける熱意があっていい。旧盆は家族や親類、知人とのきずなを深めるだけでなく、同郷の縁をヨコに広げていく好機である。在住者と帰省者が一体感を共有できるようなイベントを企画するのも有効だろう。 出身者のふるさとへ寄せる思いはいつの時代も変わらない。地元に何らかの形で力にな りたいと思う人は少なくないはずである。県外の出身者組織にしても、親睦団体にとどまらず、郷里との関係をより重視した支援組織に変われば、ますます心強い存在となる。このような潜在的な力を掘り起こし、活性化させていくことも自治体の重要な役割である。
◎コメ備蓄見直し 消費者も納得する制度に
農林水産省が、コメの備蓄制度を見直す方針を示した。来年度から年間20万トンずつ
買い取り、一定期間後に飼料用として売却する案を固めたという。主食用価格で買い入れた備蓄米を主食用に売る「回転備蓄」から、主食用とはしない「棚上げ備蓄」に転換するものである。主食用米の価格と需給関係に影響を及ぼさないようにする狙いといい、その点では備蓄 制度本来の趣旨にかなっているといえるが、備蓄方式の変更で財政負担が重くならないか。補助金を出して飼料用米の生産拡大を図る政策と整合性がとれるか、などについてコメ生産者だけでなく消費者も納得できる説明をしてもらいたい。 現行制度では、10年に1度の不作でも国産米で対応できるよう100万トン程度を備 蓄することになっている。ただ、備蓄米の放出が米価の下落につながるため、コメ余りの時は売却を抑制したり、余剰米を緊急に買い入れることもあった。このため新旧の備蓄米の入れ替えが計画通り進まず、コメの需給調整のための備蓄制度であるような印象も与えてきた。 新しい備蓄制度案は、主食用米市場と切り離し、買い入れも売却も年間20万トンに保 ち、余剰米の緊急買い入れもやめる。備蓄制度を米価維持対策として利用しないというわけであるが、飼料用米として売却することで主食用米の価格を下支えする側面もある。 主食用米を飼料用米として売れば、当然大きな売買差損が出る。これまで回転備蓄制度 を取ってきたのは、棚上げ備蓄より財政負担が軽いからである。農水省の試算では、新方式の財政負担は年間約520億円で、現行制度の510億円とほぼ同じというが、さらに丁寧な説明が必要である。 また、政府は中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)とでコメを備蓄し、食料 不足の国を支援する制度の創設で基本合意している。日本にとってコメは国際貢献の戦略物資といってよい。食料支援という国際貢献を効果的に行うためには、備蓄制度はどうあるべきか、その見直しは総合的、戦略的に行う必要がある。
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