新垣結衣の強運　Ｔシャツ短パン姿が運命変えた

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映画「ハナミズキ」主演の新垣結衣

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　流れる時の中で、意志を持って生きる。「芯の強さは持っていたいと思っています。でも、行動力は自分にはない気がしますね。まだ」。ハイトーンの柔らかい声で、最後の一言に力を込めた。高い志と向上心。それが、彼女の強さだ。

　主演映画「ハナミズキ−君と好きな人が百年続きますように−」で演じたヒロインは恋に悩みながらも、夢に向かう気持ちはブレない。「彼女くらいの気持ちなら、私もやはり前に進む」。そう言いながら笑顔で付け足した。「恋が力となって、自分のやりたいことや、やるべきことにいい影響があれば、もっといい。それでより頑張れる方がすてきだと思う」

　今作は、挑戦だった。女性の１０年間の成長を演じたこと。海外を含む４都市でのロケ。英語でのセリフやスピーチ。絵本「３匹の子ぶた」の挿絵描き…。すべてが初体験だった。

　特に、英語と絵本は腐心した。「知識はほぼゼロ。英語を口から発することから始めた」。北海道での撮影中も地元の英会話教室でレッスン、自主練習も連日行った。「（英語を）ＢＧＭ代わりに繰り返し聞いていました。イントネーションは、メロディーと近いものがあるかも」。歌手でもあるだけに“音”には敏感。周囲から覚えが早いといわれたという。

　逆に、絵は自身のＣＤジャケットも手掛けるほど得意だが、決まったキャラクターを繰り返し描く経験はなかった。「私の絵は落書き。想像して描いているだけで、ありものを書くのは苦手なんです」

　とはいえ、映画と連動して絵本の出版が決まっていた。「新垣結衣という名前で出すわけだから、落書きといえど個性が出ないと。３匹の表情に気を使いました。あんなに考えて絵を描いたのは初めて」

　沖縄県生まれ。「できれば、ずっといたかった」ほど故郷を愛する。その気持ちが、ゆったり穏やかな雰囲気を醸し出すのだろう。幼いころは花店店員、漫画家、保母、ＳＰＥＥＤにあこがれた。「アクターズスクールに入りたいと思ってた。当時の沖縄の女の子は、みんなそうでしたよ」

　中学１年生のとき、姉の薦めで、ティーン雑誌の読者モデルに応募。スタイルが良く見えるようにと着せられた、Ｔシャツに短パン姿の写真が運命を変えた。

　運はいい。そう何度も口にした。モデルから女優、歌手と活動の場を広げられたのも、周囲に背を押されたから。「絶対にできないと思っても、乗り越えられたのはスタッフさんたちのおかげ。人に恵まれていると思います。くじは当たらないし、卒業アルバムも写真があまり載らないタイプなんですけどね」

　ハナミズキの花言葉は、「返礼」。故郷や周囲の人々に感謝しながら、作品を残す彼女そのものだ。百年続きますように−。（文・橋本奈実、写真・浜坂達朗）