2010年7月1日 9時36分 更新:7月1日 11時51分
サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の公式球「ジャブラニ」に対する不満の声が、依然として収まらない。決勝トーナメント1回戦までの試合でもGKがシュートの軌道を見誤ったり、フィールドプレーヤーでもパスのトラップミスやFKがゴールの枠をとらえきれない場面などが見受けられ、大会終盤になっても特徴をつかみきれていない選手が多いからだ。
「ジャブラニ」は、表面の皮革が前回の大会公式球よりも6枚少ない8枚になって「真球」に近くなる一方で、空気抵抗による軌道の変化がこれまでのボールより、はるかに予測しにくくなった。開催都市が高所と沿岸部の低地に分散していることで、競技会場ごとの気圧差がボールの空気抵抗に影響を与え、変化の度合いを把握しにくくしているようだ。
元日本代表GKで横浜マの松永成立GKコーチは、「(日本以外の試合で)守備のトラップミスで得点につながるケースが何度かあったが、それは明らかにボールのせい」と、選手たちの胸の内を推し量る。「ジャブラニ」は、70年メキシコ大会から公式球を提供しているアディダス社製。同社によると、今年3月の開幕からJリーグで使用している日本のほか、ポルトガル、アルゼンチンなどでも「ジャブラニ」の発表後、国内リーグの試合に使用していた。
しかし、強豪国の主力選手が多く所属する欧州のイングランド・プレミアリーグ、イタリア・セリエA、リーガ・エスパニョーラ(スペイン)は今季、ナイキ社のボールを使用。「ジャブラニ」にほとんどなじみがなく、今大会で初めて試合で使う選手も多かったようだ。また、ドイツ、オランダの国内リーグでは、ホームチームの契約するスポンサーによって使用するボールが異なる。オランダのロッベン、ドイツのクローゼらが所属するバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、日本の長谷部が所属するウォルフスブルク(同)などは「ジャブラニ使用派」だという。
アディダス社の広報担当者は「欧州で活躍する選手は、クラブの活動が優先で代表で活動する時間は限られる。クラブではそのリーグのボールで練習をするので、ジャブラニを使って別メニューで練習するのは現実的に難しいのでは」と話す。
日本代表は1次リーグ第3戦のデンマーク戦で本田(CSKAモスクワ)、遠藤(ガ大阪)が鋭い変化のFKを得点に結びつけ、GK川島(川崎)も好セーブを連発するなど、比較的「ジャブラニ」対応が進んでいたように見える。松永コーチは、自らが練習などで使用した経験に基づき「練習でボールに回転をつけようとしてけっても、いきなりストンと無回転で落ちたり、曲がったりする。日本の選手は、どのくらい不規則になるのかを予備知識として分かっていただけでも(他の国と)違ったのではないか」と分析している。【中村有花】