2010年6月30日 11時8分
【ワシントン古本陽荘】米上院軍事委員会は29日、文民批判で解任されたアフガニスタン駐留米軍のマクリスタル前司令官の後任に指名されたペトレアス中東軍司令官の公聴会を開いた。委員会は全会一致で就任を承認したが、オバマ大統領が「11年7月」と決めた撤退開始の解釈など出口戦略をめぐり与野党が激論。治安改善が進まないアフガン戦争が国論を二分している状況が改めて浮き彫りになった。
ペトレアス氏は、アフガンの戦況について「厳しい戦いが続く。これから数カ月はもっと激しくなるだろう」と語り、当面は楽観できないとの認識を示した。
もともと公聴会は、就任に必要な上院の承認のためのものだが、アフガンも管轄する中東軍の司令官で、ワシントン政界に顔が広いペトレアス氏の就任に異論は出なかった。
むしろ、議論は出口戦略に集中。民主党のレビン委員長は「アフガン指導部に自らの国家の治安に責任を持つよう促すために、期限を示すことは必要だ」と強調。これに対し、共和党のマケイン上院議員は「撤退日程の設定は有害だ。出ていくと分かっていてアフガン市民がどうして協力してくれるのか」と真っ向から反論した。
その背景には、政権内でさえ出口の見通しについて足並みがそろっていない現状がある。バイデン副大統領は最近出版された本で「11年7月になれば大勢(アフガンから米兵が)出て行く。きっとそうなる」と明言。一方で、オバマ大統領は「電灯を消し、ドアを閉め、いなくなるなどとは言っていない。移行局面が始まると言っただけだ」(24日の記者会見)と主張した。
大統領と副大統領の発言の矛盾について質問されたペトレアス氏は「大統領が言った通り7月は急に兵を撤収する日程ではない」と応じる一方、「副大統領は『100%今の戦略を支持する』と私の腕をつかんで語った」と述べ、政権内に意見の相違はないとの考えを強調した。
また、ペトレアス氏は、民間人死者を出さないため米軍の武器使用を厳しく制限した現在の交戦規定(ROE)に批判が上がっていることに関し「厳しい状況にある兵士には必要な支援がなければならない」と語り、見直しの可能性を示唆した。