2010年6月29日 11時52分 更新:6月29日 13時12分
政府の「新年金制度に関する検討会」(議長・菅直人首相)は29日午前、全国民が同じ制度に加入する「年金一元化」の実現や、最低限度額の保障など七つの基本原則を盛り込んだ「新たな年金制度の基本的考え方」をまとめた。しかし、「超党派で国民的な議論を行っていくべきものだ」との理由で個別の具体策には踏み込まず、財源として消費税を増税するのかや、基礎年金を全額税でまかなうのか、それとも現行制度同様、保険料も充てるのかといった制度設計には触れていない。民主党が昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げた内容より後退している。【坂口裕彦】
首相は会議の冒頭、「年金は国民にとって身近で大切な制度だから、党派を超えた国民的な議論に基づき改革を進めることが望ましい」と呼び掛け、自民党などとの協議に期待感を示した。首相には、超党派による年金改革議論を通じ、安定財源として消費税の増税が必要との認識を共有した上で、野党を税制改革議論に引き込む狙いがある。そこで最低保障年金を全額税でまかなう案など民主党が主張してきた構想は封印し、野党が乗りやすい案を提示する「抱きつき戦術」に出た。
「基本的考え方」では▽職業ごとに制度が分立し、格差が発生▽非正規労働者の増加や年金不信で空洞化が進む国民年金--など今の制度の問題点を指摘。「現行制度の存続は困難。簡素で公平な新たな制度が必要だ」と結論づけ、一元化などの他にも「持続可能」「消えない年金」「未納・未加入ゼロ」などの7原則を掲げた。また国民一人一人を対象にした社会保障や税に関する番号制度の導入が不可欠とした。
だが、財源については「保険料と税財源を充てる部分の役割を明確に」「安定的財源を確保」などの表現にとどめた。民主党は税を財源とする月額7万円の「最低保障年金」を提唱しているが、政府方針として具体額を示せば財源に要する消費税などの増税幅を問われかねないため、給付水準を明記することは避けたとみられる。
◆新年金制度の基本原則◆
(1)年金一元化の原則(全国民が同じ一つの制度に加入)
(2)最低保障の原則(最低限の年金額の保障)
(3)負担と給付の明確化の原則(負担と給付の関係が明確な仕組み)
(4)持続可能の原則(将来にわたって誰もが負担でき、安定的財源を確保)
(5)「消えない年金」の原則(年金記録の確実な管理と加入者本人によるチェックができる体制)
(6)未納・未加入ゼロの原則(年金保険料の確実な徴収により無年金者をなくす)
(7)国民的議論の原則(国民的な議論の下に制度設計を行う)