2010年6月28日 16時13分 更新:6月29日 1時0分
大相撲の賭博問題で日本相撲協会は28日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、外部有識者による特別調査委員会(座長・伊藤滋早稲田大特命教授)の処分勧告を受け入れ、7月11日初日の名古屋場所(愛知県体育館)の開催を決めた。文部科学省幹部は「勧告に沿って協会がきちんとやっていけるか注視していきたい。名古屋場所開催に反対の人の理解も得られるよう協会は気を引き締めてやってほしい」と述べた。
延期された番付発表は5日。また調査委は大関・琴光喜関の懲戒勧告の内容を「解雇以上」と明らかにした。すでに解雇以上を勧告された大嶽親方(元関脇・貴闘力)とともに4日の協会理事会・評議員会で処分が決まれば、協会規定では「除名または解雇」処分で、角界追放となる。除名になれば現行の賞罰規定で初。大嶽親方は28日付で協会に退職願を出したが認められなかった。
調査委はもう一人懲戒勧告した主任職の時津風親方(元前頭・時津海)を、降格以上の懲戒としたことを明らかにした。
野球賭博に関与した力士らと、監督責任がある武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)ら幹部5人を含む親方の氏名も、調査委勧告に基づき公表した。これらの協会員は名古屋場所中謹慎。ただ勧告にあった幕内・嘉風関は常習性がないため、師匠の尾車親方(元大関・琴風)とともに処分保留。部屋全員を謹慎とした阿武松部屋は、野球賭博に関与していない力士について2日の調査委で再検討する。
武蔵川理事長の代行を置く勧告についてもその調査委で推薦。4日の臨時理事会で武蔵川理事長が指名する。協会外部理事の村山弘義・元東京高検検事長を推す動きが強い。
臨時理事会後、全親方と力士・行司の代表から成る評議員会を開き、経緯説明とともに、調査委による全協会員を対象にした賭博の実態調査書類が配られた。2日を期限に回収する。武蔵川理事長は「世間を騒がせ、ご迷惑をかけた。しっかり(勧告を)受け止めて、解決に向けて全力を尽くす」と話した。【本橋和夫、飯山太郎】
【ことば】解雇と除名
日本相撲協会が定める懲戒処分。解雇は理事会で決定できる五つの処分(けん責、減俸、出場停止、番付降下、解雇)の中で最も重い。除名は理事会の決定に加え、全親方や力士代表らで組織する評議員会の、4分の3以上の特別決議が必要。これまで除名の例はなく、退職金は支給されない。解雇の場合も、昨年から理事会が退職金支給の可否を判断できるようになった。ともに処分を受けた者は協会に復帰できない。
◆調査委勧告への日本相撲協会の対応◆
■28日・理事会の決定事項
※勧告を受け入れ名古屋場所を開催
※大嶽親方、時津風親方、大関・琴光喜の懲戒手続き開始。大嶽親方の退職届は不受理
※謹慎力士らの公表(豊ノ島、雅山、豊響、豪栄道、隠岐の海、若荒雄=幕内▽千代白鵬、大道、春日錦、清瀬海、普天王=十両▽古市、光法=幕下▽床池=床山)
※武蔵川、出羽海、九重、陸奥の各理事と執行部の八角親方と、謹慎力士が所属する部屋の親方(佐渡ケ嶽、境川、春日野、木瀬=北の湖部屋所属、宮城野、阿武松)は、名古屋場所最終日まで謹慎
※理事長代行を置く
※全協会員を対象に減俸処分
■7月2日・調査委の検討事項
※幕内・嘉風は「常習性が認められない」として謹慎すべきか再検討。師匠の尾車親方も
■7月4日・理事会の議題
※理事長代行の選出
※実態調査に基づく全力士の名古屋場所出場の可否
◇処分勧告対象者◇
【懲戒処分】
大嶽親方(元関脇・貴闘力)
時津風親方(元前頭・時津海)
琴光喜(大関=佐渡ケ嶽部屋)
※大嶽親方、琴光喜は解雇以上の処分を勧告
【謹慎】
武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)
出羽海理事(元関脇・鷲羽山)
九重理事(元横綱・千代の富士)
陸奥理事(元大関・霧島)
八角親方(元横綱・北勝海)
佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)
境川親方(元小結・両国)
春日野親方(元関脇・栃乃和歌)
木瀬親方(元前頭・肥後ノ海)
宮城野親方(元十両・金親)
阿武松親方(元関脇・益荒雄)
豊ノ島(前頭=時津風部屋)
雅 山(前頭=武蔵川部屋)
豊 響(前頭=境川部屋)
豪栄道(前頭=境川部屋)
隠岐の海(前頭=八角部屋)
若荒雄(前頭=阿武松部屋)
千代白鵬(十両=九重部屋)
大 道(十両=阿武松部屋)
春日錦(十両=春日野部屋)
清瀬海(十両=木瀬部屋)
普天王(十両=出羽海部屋)
古 市(幕下=阿武松部屋)
光 法(幕下=宮城野部屋)
床 池(床山=阿武松部屋)
※地位と所属は夏場所の番付による。清瀬海は現在、北の湖部屋所属