流出した朝鮮古美術、買い戻し続けた男
日本による韓国併合から今月で100年になるのを機に、韓国では植民地時代に日本に流出した文化財の返還に関心が集まっていますが、実は70年も前に私財を投げ打ち、日本から文化財を買い戻し続けた人物がいました。
「(文化財を渡し)韓国国民の希望に応えることにした」(菅直人首相)
談話に盛り込まれた文化財の引き渡し。生きていれば、誰よりも喜んだであろう人物がいます。
「父も感無量の思いがあったと思います。父が生きていた時代には考えられなかった」(澗松の長男 チョン・ソンウさん)
澗松(カンソン)。本名、チョン・ピョンピル氏。植民地下のソウルで、日本に流出した朝鮮の古美術品を次々と買い戻した伝説の男です。
その品々が展示される美術館は、5月と10月の年2回だけ公開されます。敷地内には、日本から買い戻した石塔が数多くあります。書画から陶芸、そして石塔。国宝も14点含まれます。
1906年、ソウルの素封家に生まれた澗松は、早大卒業後、独立運動家で書画収集家だったオ・セチャン氏に師事。朝鮮美術のとりことなります。そして25歳のとき、オ・セチャン氏にこういいました。
「日本人が持っていく朝鮮の書画典籍をこの地に残したいのです。父から受け継いだ田畑を売ってでも」(澗松)
澗松はその後、56年の生涯をかけて私財をはたき、日本に流出した文化財を買い戻すことになります。感銘を受け、彼を支えた日本人も少なくなかったといいます。
1936年、30歳そこそこで日本の著名な骨董商「山中商会」と朝鮮白磁の瓶をめぐって渡り合い、競り落としたことで、澗松はその名を知らしめました。
「山中さんが手を挙げた時(競りを降りた時)、その場にいた韓国人は『万歳』と言った」(澗松の長男 チョン・ソンウさん)
落札価格は当時、新築の家が15軒買える値段でした。
併合100年を機に、日本に流出した文化財に関心が集まる韓国。しかし、そこに生涯と財産をかけた澗松の存在は、意外に知られていません。(21日17:16)
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