【コラム】北朝鮮の最近の事情(上)

 北朝鮮のエリート幹部たちの間では、新たな認識が形成されつつある。それは「今、(北)朝鮮は歴史的な転換期に置かれている」というものだ。これはすなわち、体制の変化が目前に迫っているという危機を誰もが肌で感じているということだ。このような変化を前にしても、金正日(キム・ジョンイル)総書記は、「自らの権力を維持する道は、血統主義に基づいた世襲にしかない」と信じている。しかし、党幹部の誰もが同じような考えを持っているかどうかは疑わしい。

 これまで後継体制を支えてきた李済剛(イ・ジェガン)党組織指導部第1副部長が交通事故で謎の死を遂げ、パク・ジェギョン人民軍総政治局宣伝担当副局長も人民武力部対外担当部署へと人事異動させられるなど、注目すべき出来事が、最近相次いで起こった。その内幕は分からないが、何かが動き出しているのは間違いない。これらは3代世襲を取り巻く体制と政権の危機を肌で感じる幹部集団と、金総書記の側近との間で溝が生じていることを示す兆候の可能性もある。

 現在、北朝鮮の権力は呉克烈(オ・グクリョル)氏と張成沢(チャン・ソンテク)氏の二人に集中している。二人とも、金総書記にとって側近中の側近だが、力関係は呉氏の方に傾きつつある。呉氏はこれまで長い間、金総書記の絶対的な信任を受け、党の作戦部を指揮し、軍内部にも確固たる人脈と権力を築き上げ、今や金総書記さえ勝手に排除できないほどの存在ともいわれている。一方の張氏は、軍部にいた二人の兄が心臓まひで死亡し、周囲からの相次ぐけん制もあって、側近はほとんど残っていない。権力のバランスが崩壊しつつあるのだ。

 これまで北朝鮮では、政治面での混乱はほとんど存在しなかった。たとえ困難な状況にあっても、金総書記の側近たちが団結し、一つの船に乗らざるを得ない運命にあったからだ。ただし今後は、側近たちの間でも「このままではルーマニアの二の舞になる」「中国方式を採用すべきではないか」といった考えが広まりつつある。金総書記の生物学的な寿命がそれほど長くないと推定される中、側近たちは文字通り、「選択の岐路」に立たされているというわけだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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