【コラム】いつか北の住民に尋ねてみたいこと(下)

 北朝鮮の食糧難が最高潮に達した96年秋のことだ。普段、北朝鮮の国連代表部とひんぱんに接触していた人物から、北朝鮮大使館の職員らが、先を争うようにハリウッド映画のビデオテープ数十本を買い込んでいるという話を聞いた。その年の夏に封切りとなった映画『素顔のままで』をすぐに送れと言われたが、ビデオで販売されておらず、困り切っているというのだ。デミ・ムーアが半裸で出演したことで話題となったその映画を、金総書記が見たいと言ったわけだ。その人物は、「人々が食べるものもなくひもじい思いをしているのに、こんなことができるのか」と憤慨した。この話をした人物は、その後、韓国の保守陣営批判の先頭に立って有名になったが、北朝鮮の権力については口を閉ざしている。

 韓国社会には、このような人物が少なくない。これらの人々にとって、北朝鮮は触れてはならない、聖域のような存在だろう。野党も、李明博(イ・ミョンバク)政権の対北支援制限を批判はするものの、北朝鮮に対しては一言半句たりとも口を開いていない。北朝鮮の住民らは、こうした韓国の国民たちを、自分たちの側の人間だと思っているのか、あるいは、世の中の有り様を知らない人々だから、自分たちの暮らしだけが窮迫していると考えているのか。これもまたいつか尋ねてみたい。

 故・レーガン元米大統領は、米国現代史上、反共理念に最も忠実だった大統領だ。レーガン元大統領は、米ソ冷戦が最終段階に至った80年代初め、アフリカの共産主義独裁国家に食糧を支援する際、「飢えた子供は政治のことを知らない」と語った。米国は、人道的支援に制限を付けない姿勢を見せつつ、自らの原則も損なわない方法を、この外交的修辞に求めたわけだ。この発言はその後、米国が敵対国に人道的支援を行う際の常套句となった。これに比べ、李明博政権の対北政策は、行き詰まった南北関係と同じくらいもどかしい。北朝鮮では、毎年100万トン以上の食糧が不足している一方で、韓国は、140万トンを超えるコメの在庫を処理できず、途方に暮れている。北朝鮮の住民は、そんな韓国政府に対し何を思っているのか。最近の北朝鮮情勢を見ると、こうした質問を実際に問うことができるようになる日も、そう遠くはなさそうだ。

朴斗植(パク・ドゥシク)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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