【コラム】いつか北の住民に尋ねてみたいこと(上)
度重なる水害と飢えで、瀬戸際に立たされた北の住民たち
金総書記の操り人形となって北の体制擁護に熱を上げる韓国人を見て、何を思うのか
95年の洪水は、北朝鮮の国家機能を崩壊させた。被災者だけでも、北朝鮮の人口の4分の1に当たる520万人に上り、120億ドル(現在のレートで約1兆233億円、以下同)相当の財産被害(統一部の推算)をもたらした。120億ドルといえば、08年の北朝鮮の貿易総額69億ドル(約5884億円)=米国連邦議会調査局の推算=の2倍近い金額に相当する。90年代半ばの水害と、その後続いた疾病・飢餓により、100万人を超える北朝鮮住民が命を失った。大量脱北が始まったのも、このころからだ。
今年の夏も、例年と同じく、水害が北朝鮮を襲った。北朝鮮の国営メディアによると、開城で50年ぶりの豪雨が発生し、咸鏡南道興南・新興など各地が大水の被害に見舞われた。北朝鮮側は、被害の詳細は明らかにしなかったが、「2000年代に入って最大規模」と発表した。
90年代には、北朝鮮で水害が起こるたびに、国際社会が支援に乗り出した。韓国は95、96年の2年間で、政府・民間合わせて、コメ15万トンをはじめ、総額2000億ウォン(約144億7084万円)に上る対北支援を行った。しかし今年は、どこの誰も、対北支援の先頭に立とうとはしない。国家の基本的機能である治水もきちんと行わずに、金さえあれば核やミサイル開発につぎ込み、金正日(キム・ジョンイル)総書記やその周辺の権力者層向けのぜいたく品購入に大枚をはたいてきた北朝鮮を助けるのに、皆疲れてしまったのだ。金総書記のせいで、北朝鮮の住民が直面する苦痛ばかりが大きくなった。
韓相烈(ハン・サンリョル)牧師の訪朝は、時期的に見て、北朝鮮の水害と重なる。韓牧師が北朝鮮で何を見て、聞いて、誰と会ったのかは、北朝鮮の国営メディアによる報道以外に、知るすべはない。北朝鮮メディアが公開した写真の中で、韓牧師はいつも明るく笑っている。韓国国内の反政府・反米デモの現場で見た、刃物のような鋭い表情の韓牧師ではない。韓牧師は、「南の同胞は、金総書記の、年長者を敬愛する謙遜した姿勢、豊かなユーモア、知恵と決断、明るい笑顔などに深い感銘を受けた」と語った。自分たちが最も大変なときにやって来て、自らを金総書記の操り人形だと認めた韓牧師を見て、北朝鮮の住民は一体何を思っただろうか。いつか、北朝鮮の門戸が開かれたときには、是非とも尋ねてみたい。