菅政権は、韓国の統治権を日本に譲与するとした1910年の日韓併合条約締結に関し「当時の国際法に照らし、有効だった」とする従来の政府見解に言及せず封印する方針を固めた。政府関係者が21日、明らかにした。「強制的に結ばされた条約で無効だ」と主張する韓国への配慮が必要と判断したため。政府見解見直しについては「(65年の)国交正常化以来の日本の主張を覆すことになる」(外務省幹部)として応じない。条約調印から22日で100年。菅政権は未来志向の関係を強化する方針だが、見解をあいまいにする姿勢は議論を呼びそうだ。
政府関係者によると、菅直人首相と岡田克也外相は先の併合100年首相談話を検討する過程で、95年10月に村山富市首相(当時)が「当時の国際関係等の歴史的事情の中で法的に有効に締結され、実施されたと認識している」とした国会答弁を基本的立場として維持する方針を確認。ただ、韓国がこの答弁直後に猛反発した経緯を踏まえ、公言しないことにした。
韓国の批判を受けて村山首相も国会答弁から「条約は有効」との文言を外した経緯がある。しかし、小泉、安倍内閣は条約の有効性を認めた政府答弁書を閣議決定しており、自民、民主両党の保守系議員が反発する可能性もある。
政府見解を封印するのは、併合100年を迎えた韓国国内で、植民地支配への全面謝罪を求める世論が高まったためだ。岡田氏は20日の記者会見で、現在の日韓関係の土台になっている65年締結の日韓基本条約に「もはや無効」(第2条)との表現が盛りこまれている点に言及した上で「これに何か付け加えるべきものがあるとは考えていない」と指摘。併合条約の有効性を問う質問への直接的な回答を避けた。
「もはや無効」との表現は当時、双方が意見対立を残したまま「あいまい決着」させるために編み出したとされる。岡田氏の発言はこの経緯を念頭に置いたものだ。菅首相も今月10日の記者会見で、韓国へのおわびと反省を表明した首相談話について「日韓基本条約の考え方を踏襲した」と説明している。
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