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猛暑:下痢止め剤に保温肌着も売り上げ増

氷の出荷作業をする「冨士氷室」の従業員=東京都渋谷区で2010年8月21日、久保玲撮影
氷の出荷作業をする「冨士氷室」の従業員=東京都渋谷区で2010年8月21日、久保玲撮影

 記録的な猛暑が、日本列島にさまざまな「特需」をもたらしている。氷など涼しさを感じさせるものだけでなく、利きすぎた冷房から体を守る保温肌着などにも効果は波及。一方、野菜価格の上昇などマイナスの影響も広がっている。

 飲食店に氷を卸している氷加工・販売業「冨士氷室」(東京都渋谷区)は、氷の塊を砕いて袋詰めする作業に追われている。「今夏の売り上げは、去年に比べ2割増」(植松寛社長)。人気は高さ約50センチ、幅25センチほどの氷柱で、暑さを和らげようと室内に置く企業が多いという。涼感を得られる日用品も売れ、白元の保冷枕「アイスノンシリーズ」の売上高は昨夏の倍で、8月の生産は計画比46%増に達した。

 出前も伸びている。ピザやすしなどを宅配する全国約9800店のデータをまとめたインターネットサイト「出前館」によると、東京都心などで35度を超えた8月16~18日、出前件数は前年同期比1~3割増えた。担当者は「火を使った調理や外出をしたくないという人からの注文が増えたのでは」と指摘する。

 また、ビックカメラによると、2万円以上する女性用脱毛専用器の売れ行きが2割増。髪に潤いを与えるとされるパナソニックの「ナノイーイオンドライヤー」も2割増。「プールや海に行く機会が増え、紫外線対策をとっている」(有楽町店)ためとみられる。

 猛暑で売れた意外な商品が下痢止め剤。ここ数年横ばいだったライオンの「ストッパ」の売上高は7月に2割増で8月も順調。「冷たいものを食べ過ぎた影響かもしれない」(同社)とみる。また、ユニクロは16日、保温機能付き肌着「ヒートテック」の新商品の販売を始めた。昨年も同時期に新シリーズを投入しているが「冷房の利きすぎで、暖かい肌着がほしいという女性客の要望が強く、夏でも売れるようになった」(同社)ことに対応した。

 気象庁によると、30度を超える日は北海道を除く広い範囲で8月下旬も続く見通し。9月に入ってからの暑さも厳しいとみられ、猛暑商戦は延長戦に入りそうだ。【井出晋平、浜中慎哉】

 ◇豊作スイカも高値

 特需の陰でダメージも広がっている。

 暑さによる葉の傷みなどで出荷が減っている野菜は、幅広い品目で値上がり。農林水産省が9~13日に全国470店を調べたところ、1キロ当たりの小売価格はレタスとジャガイモが平年比23%、キャベツが16%、トマトが14%高かった。7~13日の卸売価格も主要14品目の平均で平年を17%上回った。特にニンジンは60%、ホウレンソウは42%、トマトは38%と急騰している。

 豊作のスイカも需要増を背景に高値となっている。同省によると、8月上旬に全国の主要卸売市場で取引されたスイカは、前年同期比15%増の1万4206トンだったが、価格も1キロ当たり168円と42%上昇。「豊作=安値」の常識を覆している。東京・大田市場では20日、山形産の大玉スイカ(13キロ)に4200円の値がついた。市場の担当者は「暑さで消費が伸びていることが背景。今後は産地が北に移り、入荷量が減るのでさらに上がるかもしれない」と話す。

 ◇牛乳生産減、品薄の可能性

 また、酪農関係の団体で構成する中央酪農会議によると、7月の生乳生産量は全国で63万4071トンと前年同月を1,3%下回った。猛暑が本格化した8月上旬は5~6%程度落ち込んだ地域もある模様。北海道では乳牛が熱中症で死ぬケースも相次いでおり、このまま暑さの影響が続けば、学校給食の始まる9月には品薄になる可能性もあるという。

 こうした事態を受けて農水省は11日、都道府県に農家への技術指導を徹底するよう通知した。野菜や果樹の農家には、農業用水の確保とともに、畑に張るビニールフィルムで乾燥を防ぐよう呼びかけた。畜産農家にも、畜舎内の散水や換気で家畜の体温上昇を抑えるよう求めている。【行友弥】

毎日新聞 2010年8月22日 9時49分(最終更新 8月22日 12時19分)

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