| ここから本文エリア 安楽死の末に/下関市2010年08月21日 
 ◆下関市殺処分に吸入麻酔剤   「ニャ〜、ニャ〜」「ギャンッ、ギャンッ」   8月13日午後2時、下関市井田の動物愛護管理センターの「処分室」。無機質な機械音に交じって、猫の重苦しい声や犬の甲高い鳴き声が響いていた。   彼らは「シャトル」と呼ばれる金属製の頑丈な檻(おり)に1、2匹ずつ入れられていた。近くのホワイトボードには「麻酔予定 猫7匹 犬2頭 計(9)」との書き込みが。間もなく大型冷蔵庫ほどの大きさの処分機に檻ごと入れられ、最期を迎えるのだ。   センターによると、処分機内は人間の手術で使う医療用の麻酔ガスを高濃度の状態で充満させる。手術では濃度が数%程度だが、処分機内は数分間で14%まで上がる。   過剰な量の麻酔を吸わせることで、先に意識がなくなり、やがて徐々に身体機能がまひする――。これが安楽死の仕組みだ。ほとんどの地域で実施されている二酸化炭素での窒息死に比べ、「動物は苦痛を感じずに死ぬ」という。   「どうか成仏を」。藤永真善美センター長(57)は数珠を手に合掌すると、処分機を稼働させるために隣のコントロール室へ移動した。   室内の小型モニターには処分機内の犬猫の様子が映っていた。檻のなかで、もぞもぞと動いていた。   だが「麻酔薬注入」と書かれた赤いボタンを職員が押すと変わった。最初は体を横にして寝転がり、目を閉じて深い呼吸をしていた。人間で言う泥酔状態らしい。だが2分が過ぎるころには、呼吸が止まった。   「亡くなりました」。藤永センター長はそう告げると、再び合掌した。   モニターに映る彼らは、眠っているような穏やかな表情だった。遺体は処分機から出されて火葬となる。    ◇  ◇  ◇   同センターでは週2回、殺処分が行われる。   センターに引き取られても、人に慣れている犬や猫なら、「譲渡」の道がある。   だが、猫は狂犬病予防法で予防注射や登録が義務づけられている犬と違い、法的な縛りがあいまい。引き取った時は病気で体調が悪いケースも珍しくなく、譲渡されるのは一握りだ。   「せっかく譲渡が決まっても、懐かないとか病気を抱えていたとなれば、また捨てられてしまう」と藤永センター長はジレンマを語る。   譲渡の道がない猫は引き取りから4〜14日間を経た後に殺される。「最期の日」を迎えるまで、彼らは冷暖房つきの専用棟で過ごす。     ◇  ◇  ◇   保健所の業務を政令指定市や中核市などに移す地域保健法で、県内では下関市と県(それ以外の市町)の2団体が動物の殺処分を担う。   県の施設ではここ数年、犬猫の殺処分数は減少傾向にある。なかでも猫は2006年度は3540匹だったが、09年度は2394匹に減った。   減少の背景には、07年10月に導入した「猫・犬の引き取り有料化」がある。生後90日を超えた犬猫は一匹2千円(生後90日以内は400円)で引き取られている。   「終生飼育など飼い主らのモラル向上を促すために導入したが、一定の牽制(けんせい)効果をもたらした」と県の担当者は言う。環境省によると、無料化は全国で81の自治体が導入している(09年4月現在。犬猫どちらかの場合も含む)。 ◆猫1502匹絶命 件数増 ◆垣間見える身勝手さ   無責任な飼い主には放棄がどれほど罪深いことか知って欲しい――。藤永センター長は「引き取った動物のなかには、入院・介護などの生活事情でやむなく処分になった動物もいる。だが一方で人間の身勝手に振り回された動物もいる」と苦しい胸の内を明かす。 現状を少しでも改善しようと、センターは去勢・避妊手術で1件当たり4千円を助成している。月3回、譲渡会も開いている。詳しくは同センター(083・263・1125)へ。 
 マイタウン山口
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