社長の仕事術
2010年 8月 21日

なぜ「飛び降りろ」と叱咤できたのか:ワタミ会長 渡邉美樹

解決!「きつく言えない、嫌われる、反発される」悩み

<最新9/13号からチョイ読み>たとえばビルの8階とか9階で会議をしているとき、「いますぐ、ここから飛び降りろ!」と平気で言います。

<strong>ワタミ会長 渡邉美樹</strong>●1959年、神奈川県生まれ。県立希望ヶ丘高校、明治大学商学部卒業。84年に有限会社渡美商事、86年にワタミを設立。野村克也・楽天名誉監督との共著『これだけで「組織」は強くなる』が好評発売中。
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ワタミ会長 渡邉美樹●1959年、神奈川県生まれ。県立希望ヶ丘高校、明治大学商学部卒業。84年に有限会社渡美商事、86年にワタミを設立。野村克也・楽天名誉監督との共著『これだけで「組織」は強くなる』が好評発売中。

あえていいます。人は叱るのでなく、褒めて育てるべきです。褒めることで、自発的に仕事をするように仕向けるのです。ただ、どこかで叱るという行為を差し挟まないと、方向性を定めることができません。叱ることで、あんたの範囲はここからここまでだよ、ということをわからせるのです。

「叱る」という行為は、最も難しいコミュニケーションの一つです。核家族化が進み、子供の数が減り、社会に揉まれていない人が増えています。家族が少ないのでお爺ちゃんやお婆ちゃん、お兄さん、お姉さんとのコミュニケーションが取れていない。そのせいか、うちの若い子(従業員)を見ていても、部下を叱るのが下手ですね。

ぴしりと叱る前に「こんな叱り方をしたらリーダーとして嫌われてしまうんじゃないか」と不安になる。それを含めて、叱る前にいろいろと考えすぎてしまうのではないかと思います。

一方で、いまの子は叱られることにも慣れていません。「ごめんなさい」と言えない子が多いんです。謝るところから次の自分のステップが始まるのに、ごめんなさいを言わずに自分を守ろうとするから、次のステップに移れない。その意味で、彼らは損をしていると思いますよ。会社にとっても大きなマイナスです。

サービス業は「人材教育がすべて」といわれる。渡邉美樹氏は徒手空拳から居酒屋経営を始め、従業員4000人のワタミグループを築き上げた。最も重要な「叱る」局面では、どのような極意を発揮したのか。

僕は叱ることについて2つの原則を持っています。一つは「心のままに」。その場できちんと、思ったことを表現するということです。

もう一つは「冷静に」。感情で怒ることはありません。「この人、感情で言っているだけじゃん」と思えば、相手は心の扉を閉ざしてしまいます。だから叱る理由をきちんと伝えるのです。

これらは矛盾しているようですが、この2つを同時に満たさなければ、叱ることはできないと思います。

好きでなければ叱る資格なし

たとえばビルの8階とか9階で会議をしているとき、「いますぐ、ここから飛び降りろ!」と平気で言います。本当に飛び降りたやつがいなくてよかったなと思いますけれど(笑)、これはその場で、心のままに叱るからです。

それと同時に、叱る理由をきちんと言葉にしなければいけません。たとえば「お客様のクレームから逃げた」「徹底して原因追求をしていない」とか。これを僕は許しません。

最近もこんなことがありました。ワタミグループはつねに、地域の方々に必要とされる店をつくりたいと考えています。にもかかわらず、地域の方からのクレームが増えているのです。

我々はチェーン店なので店長が交代します。そのときに、商店会の取り決めだとかお祭りへの協賛といったことを、新しい店長がきちんと引き継いでいないというのです。

「店長交代のときに商店会長のところへ挨拶に行っているか? そのときに話を聞いていればクレームなんかこないぞ。最近は自分の店を守ればいいと考えているやつが多い。でも商店会の方々との付き合いも、広い意味では店を守ることだ。仕事の範囲が、サラリーマン化しているんじゃないのか!」

僕は先日の経営会議で、こんなふうに雷を落としてきました。

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